第50話 俺、異世界でフライを唱える
これでシャドーウルフがどこにいるか調べることはできた。あとは新たな移動方法・・・フライを試してみることにした。
自分自身にフライを発動すること自体は問題ないはず・・・なので最初は他者つまりエリンに対して発動ができるのか調べることにした。俺はエリンを手招きをすると近づいてきた彼女の手を掴みフライと唱えた。だが、浮く様子もなくただただ俺の行動を不思議がっていた・・・。
手元にあったカードは無くなっているがエリンは飛んでいないし、俺も飛ぶ気配がない・・・フライが不発したのかとガッカリしていたとき俺の目線がいつもより高いことに気が付いた。
「アスティナあなた浮いてる!風船みたいフワフワと浮いてるわよ!!」
「おぉ!これがフライか・・・だけどただ浮くだけ・・・なのか?」
「もしかしたら・・・・・・試してみるか!エリンちょっと手を離す」
「アスティナ・・・大丈夫なの?」
「あぁ、俺思っている通りなら問題ないはずだ!!」
そして俺はエリンから離れるとフワフワと宙に浮いていった。サーチを発動したときもそうだが想像力・・・イメージによって魔法の効果に違いがあるのではないだろうかと思った。師匠もイメージが大事だといっていたし・・・たぶんそういうことなんだろう。
そこで俺はまずドローンを想像してみることにした・・・。テレビやネットで見たことがあるホバー移動や上昇下降を思い出しながら飛行に挑戦すること・・・5分。やっとなんとなくではあるがフライの使い方が分かってきた。
次はもっと速く移動できるモノ・・・今度は戦闘機を想像して試すことにした。エンジンを暖め・・・一気に加速するイメージで飛行しようとした瞬間・・・。
急に自分の周りの風景がすごい勢いで切り替わっている気がした・・・。俺はこのままではやばいと思い速度を落とすためにブレーキをかけるイメージをした・・・。
イメージが成功したのかやっと周りを見る余裕ができるほどに速度が落ちてきたところで俺は今の状況を確認した。まずサーチが示している矢印が移動する前とは逆方向を示していた・・・。つまりあの一瞬で歩いて最低1時間はかかるであろう目的地をあっさりと通り越してしまったようだ・・・。
それにも驚いたがそんなバカみたいな速度を生身で体験しているのにもかかわらず全然その圧を感じなかった。自分ひとりで飛んで行くのならこれでも問題ないかもしれない、まぁもっともコントロールに難ありではあるが・・・。
ただエリンも一緒に移動するとなると話は変わってくる。この飛行時の身体にかかる負担がないのは術者・・・俺だけにしか効果が適用されないだろう。
生身であんな速度で移動すればほぼ間違いなく・・・天国に召される気がする・・・。
そんなことを考えながら俺はさっきまでエリンといたところを飛行の練習を続けながら帰るのであった。帰る途中にシャドーウルフらしき魔物も上から見えたのだがまずは帰ることを優先のため大体の位置を把握するだけでやめておいた。
帰りながらの練習が功を奏したのか、エリンの元に帰るころには自分でもビックリするほどにフライでの飛行が上手くなっていた。
「アスティナやっと戻ってきわね!すごい速さでどっか行くから焦ったじゃない!!」
「あー、俺もあれほど速度が出るなんて思ってもいなかったからさ・・・」
「だけど、そのおかげでもうフライでの飛行は完璧だ・・・」
俺はエリンの近くで降下するとロープのような身体を固定できるモノはないか聞いた。すると彼女は腰に掛けてあるポーチから麻ロープを取り出すとこれでいいかと見せてくれた。
あのポーチは師匠が片手間で作ったモノらしく俺の能力と同じストレージ機能がが付与されているようだ。俺のストレージと違って中に入れていても時間は経過するらしい・・・また容量もそれほど入らないとのことだった。マジックアイテムとかを片手間で作れるとか・・・さすがは師匠だ。
俺は彼女をおんぶするような体制になるように移動するとその状態で麻ロープを使い俺たちを括り付けるように指示した。彼女は不思議そうにしながらも俺のいうとおりに括り付けてくれた。
その後少しきつめに結んでいることを確認すると彼女に「舌を噛むから口を開けないように」と告げると離陸を開始した。
「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら
是非ともブックマーク、評価よろしくお願いいたします。




