第47話 俺、異世界でプロポーズされる
「ゲケレスト続行不可能と判断します・・・よって、勝者アスティナ!!」
「・・・それはいいんだけどゲケレストあれ生きてる?」
「あー、大丈夫ですよ。頑丈さだけはギルド随一なんで。それよりも壁の修繕費が・・・」
「ごめんなさい・・・セルーンお姉ちゃんのときと同じように蹴ったんだけどこんなに差が出るなんて思ってなくてさ・・・」
「あの姉さんと同じ感覚で蹴っちゃったんですか・・・。それならあーなりますよ」
「でも・・・さすがにこれはやり過ぎたな・・・出費がかさむがこれも魔法の練習だと思えば安いもんか・・・」
エリンに耳打ちで「いまからショップで買い物をするから見えないように壁になってくれ」というと彼女の背後でしゃがみ込みショップからキュアを購入し、すぐにストレージから取り出すと左手で隠すように持った。
その様子に気づいたのかセレーンさんが集まっていた冒険者たちを演習場から出ていくように促してくれた・・・。キュアは光属性の上級魔法で説明には傷を癒すことができると書かれていたのでとりあえずこれを買ってみた。
他にも初級のヒール、中級ハイヒールとあったのだが2回ほど使ったヒールの感想としてはなんかぼんやりと光ったなぁぐらいであり、本当に回復しているのかが分かりにくかったので今回はやめにした。
ハイヒールもヒールと付いていたのでこれもスルーすることにした結果、最後に残ったのがキュアだったのでこれを選んだ。
演習場から野次馬がいなくなったことを確認すると俺は意識を失っているゲケレストにキュアを使うため近づいていった。
ゲケレストの目の前まで来たところで彼の様子を見ると意識はまだ戻っていないようだが僅かながら呼吸をしているのが確認できた。セレーンさんが「頑丈さだけはギルド随一なんで」といっていた通りだなと思いながら、俺は彼に向かってキュアを発動した。
「よぉ・・・思いっきり蹴っちまったが・・・動けそうか?」
「・・・・・・俺様の・・・・・・めが・・・・」
「はぁ・・・なんだって・・・聞こえないんだが?」
「アスティナ・・・俺様の女神様!俺様と・・・俺様と結婚してくれないか!!」
「・・・・・・ははは・・・俺の聞き間違いか・・・結婚がどうとかって聞こえたわ・・・」
「アスティナにもそう聞こえたのね・・・そうなのね・・・トドメヲサシマショウ!!」
暴走し始めたエリンを俺とセレーンさんの2人がかりで必死に抑えつけている横でゲケレストはずっと俺に対してプロポーズをし続けるという悪夢のような時間が過ぎ去るのをただただ耐え続けた・・・。
「エリン大丈夫・・・大丈夫だから・・・俺はエリンとずっと一緒にいるから」
「・・・・・・本当?」
「あぁ、本当だ。それにフォレストエルフの誓いを忘れたわけじゃないよな?」
「・・・そうね・・・そうよね・・・もちろんよ!誓いは絶対なんだからね!!」
「アスティナさん・・・あなたもいろいろと大変そうね・・・」
「もう慣れたよ・・・それに案外こういうのも悪くないと思ってる。それはセレーンさんも一緒だと思うけど?」
そう返事をするとセレーンさんはとても嬉しそうに「それもそうね」と返してくれた。エリンの方もやっと落ち着きを取り戻したようで先ほどまでの暴走状態は終了していた。ただもう片方はまだ続行中の様子だった・・・。
あることを思いついた俺はセレーンさんにゲケレストが階級いくつなのかを聞いてみた。すると彼はB級冒険者だということがわかった・・・。この面倒くさい状況を終わらせるために俺はゲケレストに無理難題を押し付けてみることにした・・・。
「あー、ゲケレスト・・・お前がS級冒険者になったら一考してやるよ」
「・・・本当か!本当だな!!」
「あー、本当だ・・・だからもう今日はこれで終わりな・・・お疲れさん・・・」
「アスティナ、絶対に俺様はS級になるからな!!」
そう言い残すとゲケレストは走って演習場から出て行った。彼のテキストにこのとき新しく一文が追加されていたのだが・・・俺はまだそのことに気づいてはいなかった・・・。
”アスティナ”に重度の好意を抱いています。
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