第46話 俺、異世界で蹴り飛ばす
「それじゃ、シャドーウルフを討伐しに行きましょう!」
「あー、はいはい。それで依頼書はあのボードから取ってくればいいんだっけ?」
「そうね、わたしが依頼を受けるまでの流れを教えてあげるわ」
「あー、はいはい。よろしくお願いしますわ・・・先輩」
「・・・先輩・・・なにかとても心地いい響きね・・・それ!」
そんなやり取りをしながら依頼書が貼ってあるボードの前まで来ると冒険者数名がどの依頼を受けるか見て悩んでいるようだった。俺はそんな彼らを横目にシャドーウルフの依頼書をボードから剥がしセレーンさんのところに持っていこうとしたときだった。
先ほどまで悩んでいた冒険者のうちのひとりが俺に向かって怒鳴りかけてきた・・・。その冒険者はゲケレストとかいうらしい。
新人冒険者に対してちょっかいを出すのが大好きな痛いおっさんです。上下関係をはっきりさせてやりましょう。と鑑定からも辛辣なテキストが表示されていた・・・。それを見て俺はもう確実に面倒くさいことになりそうだなと思った・・・。
「そこのガキ!それは俺様がやろうとしていた依頼だ!それにお前みたいなガキができるような依頼じゃねぇんだよ!俺様によこしな!!」
「あなた・・・いまわたしのアスティナに向かってなんていったの・・・。ちょっと聞こえなかったからもう1回いってみてくれないかしら?」
「もう1回いってやるよ・・・お前みたいなガ・・キ・・・が・・・翠弓姫のエリン・・・!?」
「聞こえないんだけど・・・もう1度いってくれないか・し・ら?」
「エリンそれぐらいで許してやってくれ。この姿でさらに新人冒険者だしな・・・ただ・・・」
俺がその先を言おうとしたときにはすでにゲケレストとかいう冒険者はエリンの威圧によって拾われてきた猫のように大人しくなっていた・・・。
だが、それではエリンも納得しなさそうだし、あのおっさんもあとあとさらに面倒くさいことをしてきそうだったので一つ提案を出すことにした。
「なぁゲケレストさん。あんたが俺に勝てたらこのシャドーウルフの依頼を譲ってやってもいいぜ」
「翠弓姫がついているからって調子に乗ってるんじゃ・・・ない・・・お嬢さん・・・」
「エリンが隣にいるからってそのしゃべり方はないだろ・・・あんた。セレーンさんどっか広い場所とかない?」
「あー、それならこのギルドの裏に演習場がありますよ。使用許可はわたしから出しておきますね♪」
「そういうことだから・・・行こうか、ゲケレストさん?」
俺とゲケレストはセレーンさんに案内され、演習場まで向かった。なぜかそこには俺たちの模擬戦を見に来たのか大勢の冒険者が集まっていた。それよりも真横で模擬戦をやる俺以上にやる気に満ち溢れているエリンの方が気になって仕方がなかった。
こんな挑発をしたのには理由がある。一つはセルーンさんのような化け物じゃなくて、普通の冒険者と実際に戦ってブーツの能力を把握したかったこと。
もう一つはテキストの上下関係をはっきりさせてやりましょう・・・と一文が非常に気になったことだ。わざわざこんなテキストが書かれているってことはなにかあるに違いない。イベントとかで段階を進めていくことにより最後に高レアリティの報酬が手に入るっていうゲームでよくあるあれだ。
そういやまだもう一つあった・・・最後は俺のアスティナを侮辱したことだったわ・・・これについては万死に値するが・・・俺の練習台になってくれるらしいので許してあげることにした。
俺とゲケレストは演習場の中心に案内されるとそこから1mずつ離れるようにセレーンさんに指示された。
「相手が負けを認めるか続行不可能とわたしが判断したら、そこですぐにやめるように・・・分かりましたか?」
「あぁ、それで問題ないよセレーンさん!」
「こちらも了解した・・・」
「それではアスティナさん、ゲケレストさん準備はよろしいですか?」
「いつでも!」
「俺様もだ!」
「それでははじめてください!!」
その合図と共に俺はブーツに魔力を通すと一気に加速をしてゲケレストの腹めがけて飛び蹴りを放った。ゲケレストは急に俺が目の前まで来たことに反応できなかったのか無防備な状態で飛び蹴りくらった衝撃で後方に吹っ飛んでいった。
ゲケレストが飛んでいった方向で石が砕けるような音がしたかと思えば演習場の壁まで飛んだらしくそのぶつかった衝撃で壁が一部破損していた・・・。
俺はやり過ぎたと反省したのと同時にこれを片手で受け止めたセルーンはやっぱり化け物なんだと再確認した。
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