第36話 俺、異世界でお返しされる
「アスティナァ~、もうそろそろ起きなさ~い!」
「・・・・・・・あと5分・・・5分だけだから・・・・・・」
「それ5分前も同じこといってたわよ、あなた・・・今日冒険者ギルドに行くんじゃなかったの?」
「・・・・・あと5分で・・・起きるから・・・」
「はぁ・・・・・・こうすればもう起きるしかないわよね?」
なにか聞こえた気がしたが眠気に逆らうことはできずそのまま睡眠を貪ろうとしていたときだった。先ほどまでぬくぬくで寝ていたはずが急に寒気を感じ、仕方なく目を開けることにした。ついさっきまでかけていたはずの掛け布団が無くなっていた・・・。
首だけを動かして周囲を確認すると、そこには掛け布団を両手で抱えているエリンが無機質な笑顔でこちらを見下ろしていた。それを見た瞬間、俺はすぐに起き上がり着替えの準備をするのであった。まぁ着替えや髪のセットは全て彼女がやってくれたのだが・・・。
髪型も昨日のお団子へアーもといシニヨンではなくてハーフアップという髪型にしてくれた。ハーフアップに興味津々な俺を見て、彼女は手鏡を持ち出すと後ろ髪がどうなっているのか俺に見せてくれた。
「ほぉ、後ろを一部結んで固定している感じか?昨日も可愛かったがこれもありだな・・・。やっぱ俺最強に可愛いわ」
「わたしがしてるんだから当たり前よ!」
「それもそうだな・・・。それじゃ朝飯を食いに行こうぜ」
「っと、その前にこれを付けて完成よ♪」
彼女はそういうと俺の前髪を固定するように金色のヘアピンを付けてくれた。そのヘアピンはアスティナの銀髪にとても映えていて、それを見た瞬間から俺は鏡から目を離すことができなかった。このヘヤピンをくれた彼女も大満足な様子で見ているのが鏡越しに確認することができた。
「・・・これ・・・どうしたんだよ?すっげぇアスティナに似合ってるけど・・・」
「あなたに似合うと思って実はこっそり買っていたのよ。やっぱりわたしの見立て通りだったわね!」
「もらっていいのか・・・、これ高かっただろ?」
「ミスリルの胸当てのお返しってことでありがたく受け取りなさい」
「・・・・・・あぁ、大事にするよ!ありがとうなエリン」
鑑定の初回発動により彼女からもらったヘアピンがかなり高価なことがわかった。ゴールドのヘアピン、ゴールド製のヘアピンです。運気UP、金貨40枚。
普段なら彼女の反応を見たくて鑑定をOFFにするのだが今回は鏡に映った自分に見とれていたこともありOFFにするのを忘れていた。
「このヘアピンは本当に綺麗な色だな・・・それになんかエリンの髪の色にも似てるしな」
「・・・アスティナ、あなた昨日のわたしみたいになってるわよ?」
「ははは、マジか!?なるほどな・・・いまならエリンの気持ちがわかる気がする。というか、エリン。冒険者ギルド行くだけなのにその胸当て着けていくのか?」
「あなたね・・・。ギルドマスターに会ったあとそのまま魔物を倒しに行くんでしょ?」
「・・・・・・そうだったな。ヘアピンが嬉しすぎてすっかり忘れてたわ・・・」
準備が完了し部屋の戸締りをすませると俺たちは朝食を食べに食堂に向かった。食堂に着くとちょうど朝食の準備をしているカテリーヌさんがいたので、2人分の朝食を頼むと席に着くのであった。
「はいよ~、モーニングセット2人前お待ち~!」
「ありがとうな!カテリーヌさん、まさかこの世界でモーニングが食べられるなんて・・・」
「それじゃ、早速いただきましょうよアスティナ」
「いただきま~す!」
朝食はメニューはモーニングセットの1種類しかないのだがその潔さといい、このメニューの中身もトースト、ベーコンエッグにサラダ食後にコーヒー、紅茶が付いてくるのがどこか懐かしく感じた。味についてはここの宿屋のご飯ということもありもちろん絶品だった。
ただあれほど完璧に外出の準備を整えたのに結局歯磨きなどをするためにもう一度部屋に戻ったことはいうまでもない。
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