第35話 俺、異世界で明日の予定を立てる
聖弓のことも一段落したところで俺たちは明日の予定を立てることにした。とはいっても俺の場合セルーンからもらったこの紹介状を持って冒険者ギルドに行くだけだったりする。あとは当分先になるであろうデッキケースを受け取ることぐらいしか思いつかなかった。
「明日、冒険者ギルドに行こうと思うんだけど」
「すっかり忘れていたわ・・・。明日冒険者ギルドに行ってカードを発行してもらわないとね」
「そのカードってのはなんだ?」
「アスティナ・・・カードを作るためにギルドに行こうとしてるんじゃないの?」
「あ~、いや違うんだ・・・。冒険者ギルドの人から紹介状をもらっちゃって・・・」
俺はセルーンとした手合わせなどを全て省いて、紹介状を受け取ったことだけを伝えた。それを聞いたエリンは驚いているようだった。その様子を見ながらストレージから紹介状を取り出し、彼女に見せるとさらに驚愕しているようだった。
もらった本人としてはなにがどうすごいのか全く分からないがギルドマスターってことは、前世でいうとこのCEO的な立場なのだろうか。
「アス・・・アスティナ・・・こ、これスゴイことなのよ・・・わかってる!?」
「・・・全くわからん。ただエリンがそれほど慌てるってことは相当スゴイことだけは分かる」
「わたしも冒険者だからギルドには所属しているけど、会ったこと一度もないのよ」
「・・・・・・一度も会ったことがない?」
「リリアーヌの両親でさえ、冒険者を引退するときに一度会っただけといえば、スゴさが分かる?」
「マジか・・・あの2人って、元S級冒険者だろ・・・。それで引退のときのみだと・・・・・・!?」
そのことを聞いてやっとことの重大さを理解したのだった。彼女はついでといわんばかりに冒険者ギルドの階級システムについて教えてくれた。
階級としては下位からD級、C級、B級、A級、S級の5段階でわけられている。またその中でギルドマスターが認めたS級には特別な権限がもらえるらしい。
ただこっちの権限はあくまでうわさ程度だと彼女はいった。俺はそれを聞きながら、水を飲もうとピッチャーを持ったとき中に入っている水が揺れているのを感じた。
実際は水が勝手に揺れているわけではなく、俺がギルマスに会うことに緊張しているのが手の震えとして出ているようだった。その様子を見ていた”エリン”が俺に代わってコップに水をいれると両手で手渡してくれた。彼女からコップを受け取るとゆっくりと水を飲んだ。
「大丈夫よ!明日はわたしもギルドについていってあげるから」
「あー、ありがとうな。なぜか急に緊張してしまったわ」
「わたしもちょっといい過ぎたわ。アスティナの緊張する様子を見たら、なんだがわたしリラックスしちゃったわ」
「そういうのあるよな、他人の様子を見てなぜか落ち着くやつだろ・・・」
「ふふふ、それとアスティナでも緊張することなんてあるのね?」
「俺だって緊張するときだってあるさ」
そういうと彼女は楽しそうに笑うのであった。緊張も解けたところで明日行くところを決めていくことにした。まずは冒険者ギルドでギルドマスターに会いに行くことが最重要なため、一番最初に行くところはそこに決まった。
ついでに聖弓ユグドラシルの性能と俺のスペルカードの実用性を試すためにお金稼ぎも兼ねて冒険者ギルドからの依頼を受けてみることにした。
明日の予定はほぼ冒険者ギルド関連で一日が終わりそうな気がしてきた。それと魔法の練習は上級魔法まで試すとなると破産一直線だったので、初級と中級だけで試すことにした。
魔物を倒すだけならアスティナを守護する者でもいいのだがリキャスト24時間ということもあるし、それに今日”セルーン”戦で召喚しているため、あと20時間近くは召喚することができない。
それに今後アスティナを守護する者が使えない状態で戦うことも増えるだろう。そのためにも魔法の性能を知ることは必要だと思った。ただそれだけだと本当に魔法で破産しそうなので、魔法と”疾風のバトルブーツ”を使用した蹴りを主体としたバトルスタイルでやってみることにした。
問題があるとすれば、体術を教えてくれる人が俺の周りにはいないってことだ。リリアーヌの両親はすでに引退のみなので教えを乞うのも難しいだろう。
あれやこれやと考えていると師匠がいった「僕の知り合いにはアサシンとかいないからね」という言葉を思い出した。
俺の攻撃を軽々とかわし、ブーツで強化した回し蹴りを片手で軽々と受け止めた彼女に教わればいいじゃないか。明日の予定がひとつ増えたことを彼女に伝えるとなぜ靴屋のセルーンに体術を教わるのかと不思議がられた。
「まぁ、そういうことだから明日に備えてそろそろ寝ようぜ。俺ちょっと瞼が重たくなってきたし・・・」
「その前に歯を磨きにいくわよ」
「あ~、わかった・・・。歯を磨きにいこ・・う・・・」
「ちょっと、まだ寝ちゃダメだからね!あ~、もう仕方がない子ね。ほんとうに」
彼女に洗面台まで引っ張られながらたどり着き、眠気と戦いながら歯を磨き終わるとまた彼女に引っ張られながら部屋まで帰ってくると俺はすぐさまベッドに倒れこみそのまま寝てしまった。
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