第33話 俺、異世界でエリンにお返しをする
「はぁ~、もうお腹いっぱいだわ~」
「そらあれだけ食えば、腹いっぱいだろうさ・・・!俺も人のこといえないけどな・・・。あ~、しんどい・・・」
「お風呂はもう少しあとにしましょう・・・。さすがにいまはそれどころじゃないわ」
「・・・・・・昼に風呂入ったのに・・・また風呂入るのか?」
「・・・・・・!?あなた・・・まさかそのまま寝ようとしてたわけじゃないわよね?」
「飯も食ったし、あとは歯を磨いて寝るだけだろ・・・?」
「・・・・・・アスティナちょっとこっちにお・い・で♪」
俺はこの言葉を発する前に戻りたいと思った。なぜならこのあとまた彼女に正座させられ、小言をいわれる未来が確定してしまったからだ。ただこの小言・・・もとい彼女のお話のおかげでちょうどいい感じに晩飯が消化されていった。
「わかった?アスティナ」
「はい、わかりました」
「よろしい!お腹も落ち着いてきたし、お風呂にいきましょ」
「わかったよ、それじゃ着替えよろしくな~」
「はいはい、任せておいて。今日買った寝間着も用意してるわ」
「おぅ・・・」
俺は風呂に向かい本日2回目の入浴を堪能するのであった。いうまでもなく前回と同じように万歳で始まりそして万歳で終わった。そして、自分の部屋に帰ってきた俺はいま彼女に髪をクシでとかしてもらっている最中である。
前世の自分は髪を洗ってあとは乾かして終わりだったのだが、こんな風に誰かに髪をとかしてもらうのも案外悪くないとこの姿になってはじめて思えた。
「はい、これで終わりよ」
「ありがとうなエリン・・・・・・それにしても・・・やっぱ俺可愛いな!」
「本当にあなたはブレないわね・・・」
「ただここまでいくにはエリンの助けがあってこそだな!俺だけじゃこうもいかないだろうし」
「ふふん!よく分かっているじゃないの!!」
「そりゃここまでされたら分かるわ・・・」
俺はアッシュの店で買ったプレゼントをこのタイミングで渡すことにした。ただストレージに収容しているのでまずはそこから出さなければいけなかった。
「・・・なぁ・・・エリンちょっとだけ目を閉じてくれないか?」
「・・・・・・どうして?」
「えっとな・・・。靴もだけど、それ以外もいろいろと俺の世話をしてくれたお礼をだな・・・」
「ふ~ん、わたしが好きでやってるから別にいいのに」
「あー、俺のために受け取ってほしい・・・ずっと施しばかり受けるのは俺の性に合わないからな」
「・・・アスティナのためなのね。わかったわ、目を閉じていればいいのね」
彼女の目の前で手を振り、ちゃんと閉じられていることを確認するとストレージからミスリルの胸当てと聖弓ユグドラシルを取り出すとミスリルの胸当てを彼女の前に置き、聖弓ユグドラシルは見えないように俺の後ろに隠した。
「これでいいか・・・。エリンもう目を開けてもいいぞ!!」
「いいのね?・・・それじゃ、開けるわよ」
「エリンいつもありがとうな」
「・・・・・・・・・・・!?これアスティナ・・・ミスリルの胸当て・・・じゃないの?」
「エリンが欲しそうに見ていたから、俺からのプレゼントだ。是非とも受け取ってくれ!」
「いやいやいやいや、あなたこれの値段知ってる・・・?金貨300枚よ!金貨300枚なのよ!!」
なにやら彼女はパニックになっている様子だった。そんな彼女を落ち着かせるために俺はテーブルに置いてあったピッチャーからコップに水を入れると彼女に手渡した。彼女はコップを受け取るとゆっくりと飲んでいき、飲み終わるころには先ほどよりも落ち着いた様子だった。
「本当に、本当にもらっていいのね!あとで返してっていっても返さないわよ!」
「ははは、そんなこというわけないだろ」
「ありがとうアスティナ・・・。一生大事にするわ!はぁ~・・・なんて綺麗な色・・・アスティナの髪の色にそっくりだわ・・・」
「・・・うん・・・うん?よし・・・いまのは聞かなかったことにしよう・・・」
それから彼女がミスリルの胸当てに対して頬ずりが終わるまで、俺は嬉しそうにしている彼女をただただ見続けるのであった。
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