第31話 俺、異世界でリリアーヌにお返しをする
「・・・・・・イクストリアの話はわかったわ。それでアスティナのそっくりさんがいたのも納得はしたけど・・・!それならそういってくれればいいじゃない」
「許してあげてくれないか?僕が魔法の練習を兼ねてやってみればっていってしまったから・・・さ」
「イクストリアはちょっと黙ってて。わたしはアスティナに聞・い・て・い・る・の!」
「・・・あっ・・・はい」
「・・・・・・ごめん、騙すようなことをして本当に悪かった。ただせっかく覚えた魔法だったから使ってみたかったんだ・・・」
俺と師匠で用意したアリバイはこうだ。師匠の本屋にショップで買ったカードを置き忘れてしまったことにした。さすがにそれだけだとまだ疑われそうだったので、魔法書と同じ本棚に置かれていた世界の偉人たちという本にしおり代わりにして挟んでしまったのを思い出して取りに行ったことにした。
俺のストレージには使う予定だったはずのハイドが1枚まだ残ってることもあっていざとなればそれを証拠として提出することもできる。ただ”世界の偉人たち”を一切読んでいないのでそこを指摘されたときは”師匠”から助け舟を出してもらい切り抜ける手はずになっている。
だが、俺たちが用意したアリバイを彼女に説明することは今後一度もなかった。
「はぁ・・・、もういいわ。2人ともリリアーヌちゃんも待っていることだし、ご飯を食べに行きましょ!アスティナが興味を持ったことに真っすぐになるのはわたし知ってるしね。だけど、次からはちゃんというのよ。わかった、2人とも?」
「・・・・・・わかった。次からは絶対いうようにする」
「僕もちょっとやり過ぎたよ。次回から気を付けるようにするよ」
「それじゃ、リリアーヌちゃんのとこに行くわよ・・・・・・あと」
彼女が「あと」といった瞬間また体が凍り付くような感覚に陥った。俺と同じく横で正座をしていた師匠も感じているようだった。俺たちは次に彼女がなにをいうのか息を呑みながら待っていると彼女の口が動き出した。
「さっき見たことは忘れなさい!忘れられないのなら、わたしが忘れさせてあげるから安心してね♪」
「・・・・・・はい・・・もう忘れました」
「ぼ、僕もなにも見てないよ・・・」
「それならいいのよ・・・。それじゃ、ご飯食べに行きましょう!わたしもうお腹ペコペコだわ」
そういうと彼女はいつもの表情に戻り、テーブルの上に置かれている部屋の鍵を手に取ると俺と師匠を部屋の外に出るように促すのであった。
部屋を出る前にストレージから高級ハーブの詰め合わせを忘れずに取り出すように彼女にいわれた。そして3人揃って階段を降りていくと昼ご飯のときに座った席でリリアーヌちゃんがメニュー表を持って待っていてくれた。
「やーっと、降りてきた!エリンお姉ちゃんを呼んでくるだけでどれだけ時間かかってるの!」
「ごめんね、リリアーヌちゃん。あんまり2人を怒らないであげてね」
「うーん、エリンお姉ちゃんがそれでいいのなら・・・」
「待たせて悪かった。リリアーヌ、それとこれは俺の靴を選んでくれたお礼だ、受け取ってくれ!」
リリアーヌが持っていたメニュー表をエリンに受け取ってもらい俺は両手が空いたリリアーヌに高級ハーブの詰め合わせ”を感謝の言葉を述べつつ手渡したのだった。
彼女は最初なにをもらったのか分かっていないようだったが紙袋の中身を確認した途端すぐに表情が明るくなった。
「アスティナちゃん、こんな高いのもらってもいいの!本当にもらっていいの!!」
「あー、是非もらってくれ!リリアーヌのために買ったんだからな!」
「ありがとうアスティナちゃん!あとでこれで淹れたハーブティーを持って来るね!」
「おぅ!実はそれを見越して渡してたりしてな」
「期待して待っててね」
「晩飯もだが食後の一杯もかなり楽しみだな」
リリアーヌの機嫌が良くなったことを再度確認すると、俺たちは席につくと同時に注文をしていくのであった。
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