第26話 俺、異世界でデッキケースを注文する
「いろいろと教えてくれて、ありがとうなアッシュ」
「いいのよ。それにあなたになにかあったら、目覚めも悪くなるわ~。あと儲け話も持って来てくれそうだしねぇ♪」
「あー、心配してくれてるのは嬉しんだけど、その儲け話ってのは・・・なんだ?」
俺がそう聞くとアッシュは自分が持っている能力について話してくれた。彼は俺のとは効果は違うようだが鑑定が使える。調べられる範囲は購入したモノに限られるらしい。俺が店にはいったときにはすでに履いてる靴を見て、目をつけていたとのことだった。
それを聞いた俺も彼に鑑定し返してみることにした。しかし、彼を鑑定することは出来なかった。どうやらアッシュは俺よりもランクが上か、もしくは鑑定を無効にするような能力を持っているようだ。
「あなたがひとりで金貨300枚を持って来るのにわたし止めようともしなかったでしょ?まぁストレージは予想外だったけど」
「そういえばそうだな・・・。それで、どうして止めなかったんだ?」
「それはね。その疾風のバトルブーツをあなたが履いていたからよ。それセルーンから買ったモノでしょ?」
「確かにあの人からこの靴を買ったけど、それがどうしたっていうんだよ?」
質問をすると彼はセルーンから商品を購入できた時点でなにも心配していなかったというのだ。俺にはその意味が分からずに彼に質問を追加するのだった。
「セルーンさんから靴を買うのとアッシュが心配しないことがなぜイコールになるんだ?」
「わたしたち商人の中でも彼女だけは別格だからよ。彼女から直接商品を買えた時点でもう冒険者としても客としても合格ってことね。彼女の眼は本物だから」
「それって、どういう意味だ・・・。彼女も俺たちと同じように能力持ちってことなのか?」
「あら、あらあら!ちょっとしゃべり過ぎたわね。セルーンには内緒ね♪」
「・・・わかったよ。んじゃ、口止め料としてなんか、頂戴!」
「あなたのそういうとこ嫌いじゃないわ。それじゃこのポシェットを上げるわ!今度からストレージを使うときはこんな感じにすれば能力も隠せるでしょ?」
彼はストレージを使う場合に何もないところから出すのではなくて、このポシェットから出すしぐさをするように勧めてくれた。俺はポシェットを肩にかけると早速、彼がやった動作を実際に能力を使いつつ試してみることにした。
硬貨は枚数を指定して取り出す位置を決めるとそのまま出てくるので、特に問題はないのだがアイテムやスペルなどはストレージの画面から取り出さないといけないため、この動作をポシェット経由でするのがかなり厳しかった。
そこで前もってカードを取り出して、ポシェットにいれて置こうとも考えたのだがポシェットが盗まれた場合どうしようもないのでこの案はやめることにした。
ポシェットに関しては硬貨を取り出すときのカモフラージュ用とあとは普通に使うために持ち歩くことにした。
「ポシェットありがたく使わせてもらうな!それじゃ、肝心のミスリルの胸当てともう1個のおまけはストレージにいれて帰るよ」
「その方がいいわね。ミスリルの胸当てはともかくあの弓はあなただと持って帰るだけでふらふらになりそうだわ」
「なぁアッシュ!俺がこれ全部そのまま持って帰るっていったらどうしてたんだよ?」
「それはもちろん!ストレージの付いた鞄を貸してあげていたわ」
「おいおい!そんなもの易々と貸しても大丈夫なのかな?」
「もちろん大丈夫よ?誰にいつどこで貸したか覚えているし、そ・れ・に商人ギルドにも連絡するのよ。つまりは全ての商人にその情報が行くってわけね♪」
「商人全てを敵にまわしてまで盗もうとするやつはいないってことか・・・」
アッシュはだからいままで一度も盗まれたことがないと教えてくれた。それを聞きながらも俺は頭の中で他にカードを保管する方法はないかと考えていた。
一番最初に思いついたのはデッキケースだ。デッキケースとはその名前の通り、組んだデッキをいれるための箱。もちろん俺のデッキケースもスリーブも全て”アスティナ”仕様なのはいうまでもない。
ただデッキケースをそのままポシェットにいれるのであれば結局同じで盗まれる可能性が低くなるわけもなく、どうしようかと考えていると向かいに飾られているマネキンの装備で太もも部分にナイフを挿してあるベルトが括り付けられているのを見つけた。
「なぁアッシュあのマネキンの太もものやつさ~、あれ改造とかしてもらえるのか?」
「えぇ、出来るわよ。でナイフの代わりになにを挿す予定なの?」
俺はカードになっているハイドを彼に見せた。すると彼はカードを手に取りサイズを確認すると俺に返してくれた。
「ポシェットじゃなくて、わざわざこっちで保管したいってことはこれがあなたの武器ということね?」
「さすがアッシュだな!素早く取り出せて、盗まれるにくいのが欲しいんだ!ポシェットだと、どうもそれが難しくて・・・」
「そういうことなら、わたしが最高の品を用意してあげるわ。値段は張るかもしれないけどあなたなら問題ないでしょ?」
「ミスリルの胸当てよりも安いことを願うわ・・・」
「商談成立ね。試作品が出来たらまた連絡するわ」
会話に夢中になっていた俺はふと店内の時計に目をやった。時刻は19時を指していた。店にはいったときは確か18時半頃だったことを考えると俺は30分近くここにいたことになる。つまり、それだけあの部屋を離れていることになる。俺はすぐに帰る準備を始めた。
「ごめんアッシュもう帰るわ!」
「あらそう?」
「それじゃ、試作品楽しみにしてるぜ!」
そういうと俺は店を出ると同時にブーツに魔力を通し、急いで宿屋に帰るのであった。
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