第25話 俺、異世界で大金を支払う
徒歩でしか移動ができないのが難点だがいまのところ誰にもバレずに移動できている。上級魔法にこれほど効果があるとは思いもしなかった。こんな魔法をイクストリアさんは最上級以外なら全部使えるとか化け物じゃないのかといまごろになって理解した。
「ふぅ、やっと階段を降り終わったぞ・・・。っと、あそこにいるのはエリンとリリアーヌか、こっちを見るなよ」
「リリアーヌごめんね、ご飯ちょっと遅くなるわ。アスティナの用事が済んだら、すぐに食べに来るから」
「わかった、お母さんにいっとくね!エリンお姉ちゃんも大変だね!アスティナちゃんの面倒もみないといけないんだから」
「ふふふ、そうなのよ。でも、わたしがいないとあの子なにも出来ないでしょ?」
「わたしもエリンお姉ちゃんみたいな。お姉ちゃんが欲しいな~、いいなアスティナちゃん!」
「あん?エリンのやつ!!いや・・・・・・、傍から見れば、確かに全部やってもらっているな・・・」
愚痴が聞こえてしまったのか、急にエリンがこっちを振り向いた。俺はその瞬間心臓が止まったんじゃないかというほどの恐怖を感じた。彼女と目が合った気がしたがそのあと彼女はまたリリアーヌと会話をし始めた。その恐怖をまだ感じながらも俺は宿屋から脱出することに成功した。
「焦ったー、マジで焦ったわ!なんなのこっち見てなかったか・・・。やっぱこれバレてる・・・!?」
「はぁ・・はぁ・・さて・・・と、いまは考えても仕方ないか・・・さっさと用事を済ませに行くか!」
俺は路地裏に入るとハイドを解除して、そのまま走ってアッシュの店に向かうのであった。途中転びそうになったとき履いている靴が見えた。そのとき俺は自分が履いている靴の能力を思い出した。
疾風のバトルブーツ、魔力を通すことにより、脚力UP、移動速度UP。魔力をモノに通す場合もエリンにヒールかけた時と同じようにイメージが大事だと彼女がいっていたのを思い出し、イクストリアさんから教えてもらった方法を実践してみた。
「お、おお!なんか急に足が軽くなった!さっきまでとは比べものにならないほど速く走れてるけど・・・急にギアチェンジしたからか、すっげー走りにくいわ・・・これ。それとこういっちゃあれだけど、この走り方でこの速度は不自然さがヤバい・・・。こんなフォームでよくこけもせずに走れてるよな。これも能力の恩恵なのか?」
そんな独り言をいってるとアッシュの店が見えてきた。俺はブーツに流していた魔力を遮断し、そこからアッシュの店まで歩いていくことにした。ドアを開けると俺に気づいたアッシュがこちらに向かって来たと思ったら、すぐにドアノブに営業終了と書かれた札をかけるとそのままドアを閉めたのだった。
「いらっしゃい!アスティナちゃん、思ったより早かったわね。もう少し遅れて来るのかと思っていたわ」
「俺の我がままに答えてくれたんだから、少しでも早く来るのは当たり前じゃないか?ただ結構急いできたから、ちょっと休憩させて・・・」
「本当にアスティナちゃんは面白い子ね。待ってて、いまお茶を持ってきてあげる♪」
「あぁ、ありがとう。アッシュ助かるよ」
そういうと彼女はというか彼は冷たいお茶を出してくれた。俺はそれを一気に飲み干すとアッシュにコップを返した。
「いやぁ、このタイミングでこんなに冷えたお茶を出してくるとことかアッシュやるな!俺が男だったら惚れてるやつだぞ」
「うふふ、アスティナちゃんだったら、わたし大歓迎よ!どっちでもイケルからね。わ・た・し♪」
「おおぅ、それはそうと代金を払う前にちょっと外から見えない場所に移動してもいいか?」
「それなら大丈夫よ。この店の窓は中からだと外は見えるけど、外からは中が見えないのよ。というかあなた最初来た時に気づかなかったの?」
「・・・・・・も、もちろん・・・気づいてたさ!それでもこんな大金をおいそれとは出せないんだけど・・・」
「それもそうね。てっきり、その靴を履いていたからあんまり気にしないのかと思っていたわ」
「・・・・・・よく分からないが、そこのテーブルに金貨を出すよ!」
そういうと俺はストレージから金貨300枚を取り出すと、アッシュが用意してくれた枚数カウンターの入り口に投下していった。
「この枚数カウンターって、本当にすごいよな。こうやってジャラジャラ入れてくだけで銅貨、銀貨、金貨を仕分けて数えてくれるもんな」
「・・・・・・・・・・、いやいやいや、あなたの方がすごいじゃないの!どこから、その金貨出したのよ!?」
「あー、説明するのが難しいんだが俺自身が持ってる能力らしいんだ。まぁ本人ですら、いまいち理解してないけど」
「そうなのね。数は少ないけど能力持ちはいるわ、わたしもその1人だしね。ただストレージ持ちはかなり貴重だと思うわ」
「マジか!能力持ちの人俺以外で初めて見た」
「基本的に能力を持ってる人はバレないように隠すわ。その能力目当てでなにされるかわからないもの」
数え終わるまでの間、俺はアッシュに能力持ちであることの重要性や危険性などいろいろと教えてもらった。
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