第214話 俺、異世界でシスティと夢の中で交流するその3
俺はぷるぷる震える右手を左手で抑えながら、溜まった魔力を解放する方法をシスティに尋ねる。
「それでシスティ・・・この右手どうすればいい?」
「そうね・・・とりあえず私めに向かってそのまま右手で殴りかかってきて」
「・・・・・・・・あれ??・・・俺の聞き間違いかな・・・なんかシスティにこのまま殴れって言われたような気がするんだけど!?」
システィから与えられた解決策が俺の聞き間違いではないかとついそのままオウム返しで聞き返す。
それに対してシスティはごく普通に「それで合っていますよ」と淡々と答える。
「ふむ・・・・・・聞き間違いじゃなかったか・・・ふむ、そっか~。で・・・本当にやっていいんだよな?」
「はい、貴方の姉である私めを信じて」
システィの言葉を信じて拳を突き出すしか選択肢はないようだ、彼女が強いことは実際に何度かこの目で見たことがあるので知っている・・・知ってはいるが例えそうだとしても、俺を弟と呼んでくれる人に攻撃するというのはなかなか難しいものがある。
俺はそんなことを考えつつ・・・ただただ眩く光る右手を傍観する。
システィはそんな俺の様子をただ見つめるだけで俺に攻撃してくるように指示することもなく、ただジッと見つめているだけだった。
正確な時間は分からないが・・・傍観すること1分弱・・・俺は拳を握り締め、目の前にいる姉システィに攻撃する決意を固める。
「もう・・・一度確認するけど、本当にいいんだよな?」
「はい、いつでもどうぞ」
「・・・・・・分かった!!」
俺はそう答え、ふっと軽く息を吐き・・・その後ゆっくりと息を吸って吐いてを繰り返し、呼吸を整える。
爪が手のひらに刺さり痛みを感じるほどにさらに拳を固く握りしめた俺はその拳を彼女に向かって突き出す。
魔力がこの空間に干渉しているのか突き出した拳がビリビリと音を出し、さらに目の前の空間が湾曲しているのか少しグニャっと曲がっているように見える。
・・・・・・・さすがにこれはやばくないか・・・夢の中とはいえなんか怖いんだけど・・・それにシスティがあれほど心配そうに声をかけ、魔力の流れを止めるように言ってきたってことは・・・これ現実にも何か影響があるのでは・・・・・・いや、不吉なことは考えるのはよそう・・・俺はただ・・・システィを姉ちゃんを信じてこの拳を突き出すだけ・・・それだけを考えておけばいい。
そして・・・・・・・・・放たれた拳は彼女に命中する。
ドゴォォォォォーーーーーーーーーン!!!!!!
激しい衝撃音、閃光と一緒に爆風がシスティを中心として周辺に広がっていく・・・俺はその衝撃に耐えられず目を閉じる。
命中してから数秒後・・・音も風もなくなり静寂が訪れる。
風圧できっと髪やドレスは乱れているだろう・・・だが、それよりもまずは現状を把握することが先決だ。
俺は状況確認するために目を開く。
そこで見えたものは・・・俺の拳を左手で包み込むように受け止め微笑むシスティの姿。
俺が言うのもあれだけど、結構やばい一撃だったと思うんだよ・・・マジで・・・・・・だけどシスティはそれを赤子の手をひねるかのようになんの問題もなく受け止めていた。
それどころか慈愛に満ちた優しいタッチで俺の右手を包み込んでいる。
現状を理解できず目を見開いて硬直している俺にシスティは優しく話しかける。
「ね、大丈夫だったでしょ」
「・・・・・・あ、あぁ・・・別にシスティを疑っていたわけじゃないけど、それでもちょっと不安はあったんだよ・・・もしものことがあったらとかさ・・・でも、そんなこと考える必要なんてなかったわ」
「本当に貴方は心配性ね。でもそれが貴方の良いところでもあるけどね、エリンは何というか真っすぐだからそれぐらいが丁度いいのかもしれないわね」
「おっ・・・そっか・・・そうか、そうだよな!あははははは!!」
システィが急にエリンのことを話しだしたことに俺はつい笑ってしまった。
システィもエリンも本人がいる前ではそういうのをあまり言わないため、ちょっと新鮮に感じてしまったのかもしれない。
「ど、どうしたの?私め何か可笑しいこと言った??」
めずらしく戸惑っている姉を見た俺はさらにツボってしまい笑いが止まらなくなる。
「あははははは・・・ははは・・・しんど・・・あはははははははははははっは・・・ぜぇぜぇ」
「ねぇ・・・本当にどうしたの?」
「あぁ・・・大丈夫・・・・あはははは・・・もうちょっと経てば治まるから・・・はは・・・・・・ふぅ・・・・・・ふぅ。ごめん、心配かけたもう大丈夫」
「そぉ・・・それでどうして笑っていたの?」
「あー、それはだな。システィがエリンを大切に想ってくれているのを再確認できたから、それでちょっと安心したというか・・・なんだろうな、俺にもよく分からないけど気づいたときにはあ~なっていた」
「そういうことですか。貴方が知らないだけで私めは何度か言っていますよ。主にエリンをからかうためにですが、でも今回のは私めと貴方だけの秘密ですからね。それでは次は両手に魔力を纏わせてみて・・・魔力は・・・そうね・・・さっきの半分、それをさらに右と左に半々に別けてみて」
こうして何事もなく練習が再開するのであった。
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