第213話 俺、異世界でシスティと夢の中で交流するその2
システィと色々話したことにより、俺の心は軽くなったんだけど・・・なにか忘れている気がする・・・。
・・・・・・・・・あっ、思い出した・・・システィから接近戦での戦い方についてアドバイスもらうんだった・・・なぜかいまは彼女が用意した夢の中にいるんだけどな。
わざわざ俺を夢の中に連れてきたってことは何か理由があるはず、あれか・・・睡眠学習ってやつか・・・・・・俺が思ってるやつとはだいぶ仕様が違うけど・・・それにしてもシスティはこんな能力も持っていたなんて、それが一番びっくりだわ。
「・・・・・・で、俺が言うのもあれなんだけどシスティ・・・そろそろここに俺を連れてきた目的を教えてもらっていいか?」
「あ~、そうでした。では、私めが貴方をここに誘った理由を教えますね。私めがアスティの身の回りの世話をしていたことは貴方も知っていると思うけど、それ以外にもアスティに護身術を教えていたこともあるの。それを貴方にも覚えてもらおうと思ってここに呼んだというわけです」
アスティナが護身術を身につけていたのは初耳だ・・・まぁ俺が知っている情報なんてカードのテキストやイラストそれにあの夢での印象ぐらいで、それ以外はシスティとの会話の中でアスティナの情報を仕入れる程度、情報量としては数パーセントにも満たないだろう。
ただシスティの話でもアスティナがそれほど強かったと言ったことはないし、彼女はあまり戦闘には向かないタイプだったのかもしれない、そんな彼女がいざというときのために会得した護身術か・・・一体どんなものなのか実に楽しみだな。
「確かにそういう術があると俺も助かる。それを夢の中で教えてくれるってことか!こっちでその練習をして実際に成果って出るものなのか?」
「大丈夫よ、ちゃんと使えるようになるわ。この護身術は自分の魔力を手や脚に体に纏わせることで攻撃力や防御力を増加させるもの。この格闘術のいいところは力のない子でも魔力さえあれば、それを補えるところね。その魔力を体に纏わせる感覚を掴んでもらうわ、あとは明日実際に試してって感じね」
「ふむふむ・・・なるほど、実際に体を動かしてとかじゃなくてやり方を理解するためだけなら夢の中でも大丈夫ってことか・・・本当に?」
「大丈夫、アスティもこの方法で使えるようになったわ。貴方もすぐに使えるようになるから安心して私めに身を預けなさい!!」
システィは笑みを浮かべ俺に自信をつけさせるためか、そうハッキリと断言してくれた。
ただなぜかその言葉を聞いたとき一瞬ゾワッと寒気を感じた・・・夢の中にいるはずなのに。
彼女の期待に応えないわけにはいかないな・・・それにこれが使えるようになれば、カスミとの手合わせも楽になるし、それ以上に俺たちの戦い方にも幅が広がりいろんな戦術が試せるようになる。
それだけエリンやシスティにも楽をさせることができるかもしれない・・・当の本人たちはそんなこと1ミリも感じていないかもしれないけどな・・・。
・・・・・・・・・パチンッ!!・・・・・・・・・と先ほどまで普通に会話をしていたシスティが急に両手を叩く。
その行動に顎に手を当て護身術を覚えたあとで試してみたいことを考えていた俺は反射的に彼女の方に目をやる。
システィと目が合うと彼女はニコッと笑い、その後護身術の練習開始を告げる。
「早速始めるわね。まずは貴方がいつもやっているブーツに魔力を通すあの感じを思い浮かべてみて」
「えっと、ブーツに魔力を通す感じだな。それなら何度もやっているから、片手間でもできるぞ!!」
「そのときに自分の体から魔力がブーツに流れているのは感じる?なんていえばいいのかしら・・・血液が抜かれるような感覚?」
「・・・・・・システィのその例えが合っているのかは分からないが、何かがブーツに少しずつほんのちょっとだけ流れているのは感じたことはある」
「その感じを今度はブーツではなく、自分が強化したい場所に・・・手や脚に流れるように思い浮かべてみて」
俺は目を閉じて早速自分の右手に魔力が流れるようにイメージする。
システィは血液と言っていたが俺はどちらかというと川が流れるイメージかもしれない。
最初はただ細く狭い川が一本弱々しく流れている・・・それが徐々にあちらこちらから分流だったものが集まり合流していく。
ブーツに魔力を通していたときとは比べものにならないほどに疲労が蓄積しているのを感じる。
自分の中になる魔力を自分の体に纏わせるだけで、これほどしんどいとは思いもしなかった。
徐々に呼吸が荒くなる。
左手と右手で魔力の流れる量が最低でも5倍は違うと目に見えて分かる量まで変化したとき、システィから何か危機感を覚えるような焦った声が聞こえた。
「アスティ!そこで止めなさい!!」
俺は彼女の指示通りそこで川が合流しないように支流を土嚢でドンドン塞き止めていくイメージをする。
土嚢で塞がれた川は徐々に水源すら失い存在そのものが消えていく、最終的に川一本のみが残るのみとなった。
右手に魔力が溜り安定したのを確認した俺はゆっくりと目を開く。
目の前には心配そうに俺を見つめるシスティの顔が見えた。
「システィ・・・あのぅ・・・俺またなんか何かやっちゃったか?」
「いえ、アスティも貴方も悪くはないわ。私めが見誤ってしまったのがいけないの・・・とりあえず自分の右手を見れば、いまどうなっているのかすぐに分かるわ」
俺はシスティに言われるがまま自分の右手に目を向ける・・・そこには右手を完全に覆い隠し直視できないほどに眩く光り輝く真紅に発光する魔力の塊があった。
それを見てすぐに俺はボソっと呟くのであった・・・「これはさすがにやり過ぎた」と・・・。
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