第212話 俺、異世界でシスティと夢の中で交流するその1
・・・・・・・・・・・・懐かしい感じがする・・・・・・・ここはどこだろうか・・・・・・・・・あっ、思い出した・・・・・・ここはオークキングを討伐する前日に夢で見たあの城の中庭か・・・・・・・・どおりで見覚えがあるはずだ。
いま見ている夢の世界では時刻としては夕方のようだ。
この場所はアスティナとシスティが仲睦まじく一緒にいた場所、そしてどういう経緯かは不明だがアスティナを守るためにシスティ自ら扉を閉め、彼女たちが最後に悲しい別れをした場所・・・。
前に見たといっても数か月とかではなくたかが2、3週間前の話ではあるがそれでもとても懐かしく感じた。
これは俺がというよりもアスティナ自身がそう感じているからかもしれない。
俺はさらに詳しくいま置かれている状況を知るため、その場で首だけを動かしさらに周囲を見渡す。
綺麗に刈られた芝生に3メートルほどの木が植えられている、そこに木漏れ日が差し込みその真下にはガーデンテーブルとふたり分のイスが置かれている。
中庭ということもあり周囲は基本的には白を基調とした腰壁で囲われているが、外からでも中からでも見えるように考慮しているのか高さは1メートル程度。
そして中庭に入るための通路は大人三名ほどが横一列で歩いたとしても問題ないほどに広く作られている、それが四方に何か所もあるのが見える。
見たところそれぐらいしかない、テニスぐらいなら余裕で出来そうなほどに広い空間・・・だが、そこにあるのは木とガーデンテーブルとイスのみだった。
中庭の外・・・通路の方も見てみたが、こっちも照明が一切なく内部は真っ暗でそれ以上は確認できない。
夢の中で話の続きをしようと言っていたシスティはどこにも見えないし、あの真っ暗な中を歩くのはなかなか勇気がいるし、さてどうしようか・・・。
そんなことを考えていた俺はふとあることを思い出す。
それはライユちゃんに譲ったあの絵本のイラストだ、あの絵本にもこの場所は描かれていたはず、そこでは赤いドレスを着た少女がイスに座り、メイドが用意したアフタヌーンティーを飲みながら談笑していた。
まさにいま俺が夢の中とはいえ立っている場所はここ・・・やはりあの絵本は・・・・・・アスティナとシスティをモチーフにしているのか。
「それにしても不思議な感じだ・・・夢だとハッキリ認識できるのに本当にここにいるみたいに感じる、前はアスティナの記憶を映画のようにただ見ている感じで体は一切動かすことはできなかった・・・あれはあれでくるものはあったけど・・・」
どうせ夢の中だからと堂々と独り言を言っていると俺をこの世界に誘った張本人が目の前に急に現れる。
「アスティ遅くなってごめんね。それともう一つごめんなさい、さっきの貴方の独り言聞いてしまったわ・・・」
「あー、それは別に謝らなくてもいい。システィに聞かれて困ることじゃないし、それに俺が思うに前に見た夢のおかげでシスティを呼ぶことができた気がするんだ・・・やっぱりあれはアスティナの記憶なのか?」
俺は天を仰ぎシスティに尋ねる・・・あの楽しくも辛く悲しい過去について。
「そうだと思う・・・そうとしか私めの口からは言えない」
「そうだと思う?俺が見た夢では確かにシスティもあの場に一緒にいたと思うんだけど?」
システィから何とも微妙な答えが返ってきた俺はつい反射的に重ねて質問をする。
するとシスティは少しほんの少しだけ眉をひそめて困った表情を作り答える。
「まだ貴方に言っていないことがある・・・それは私め自身の記憶・・・・・・」
システィは自分も記憶喪失であることを俺に話してくれた・・・俺の場合は最初は完全にウソをついていただけなんだけど・・・まぁいまは本当に記憶の一部を失っているけどな・・・あいつの名前未だに思い出せないもんな・・・マジで。
ただシスティの場合は俺とは真逆でほぼ覚えていない状態だった、自分に関する記憶がほぼ抜け落ちているらしく、名前や種族とあとは彼女がフルンティングと呼んでいるあの漆黒の大剣ぐらいしか覚えていない。
なのになぜかメイドの仕事や戦闘技術は問題なくこなせているのかと疑問を持ったが、システィの話を聞いていてすぐに答え合わせができた。
愛ゆえになせるものかどうか知らないが、なぜかアスティナに関することはバッチリと覚えているらしい。
なのでアスティナを護衛するために必要な戦闘技術、世話するために必要な家事技術は忘れていないらしい。
そして最後になんとなく感じてはいたが、俺から彼女にそのことに触れることはなかった話に彼女自ら話を切り出す。
「それで・・・最後に私めとアスティナは本当の姉妹ではないの・・・騙していてごめんなさい」
「うん・・・知ってた、種族違うしな・・・だけどそれは俺がとやかく言うことじゃない・・・・・・それは俺じゃなくてアスティナ本人が決めることだろ?いつになるか分からないがこの体はアスティナに返す・・・そのときにでも聞いてくれ、まぁどんな答えが返ってくるか俺でもすぐに分かるけどな」
「・・・・・貴方のことだからそう答えると思っていました・・・・・・・・・貴方がアスティナのために消えることも厭わないことも・・・だけど、それはダメ。前にも言ったようにエリンや他の人たちのアスティナは貴方なの、大切なひとが急にいなくなるのはとても辛いの・・・知ってるでしょ、貴方なら・・・」
「あぁ・・・・・・そっか・・・俺は自己満足でアスティナにバトンタッチすることで現実を直視せずただ逃げていただけか・・・大事な人か、父さんや母さんに一言も連絡せずにこっちに来たんだっけか・・・忘れていたわ・・・いや忘れようとしていただけか・・・」
「だから、アスティナも救って貴方も救わないと、私めは貴方に召喚された意味がない・・・もし、貴方が貴方自身を救うのに理由が必要なら私めやエリンのために生きなさい!!分かりましたか、私めの大切な・・・貴方の名前そういえば私め知らないわ・・・」
「・・・あっははっははは!!確かにずっとアスティナとして生活していたから、名乗ったことなかったわ・・・俺の本当の名前は〇〇□□って言うんだ」
「改めてよろしくね、私めの大切なもうひとりの家族〇〇□□」
「あぁ、よろしくな!システィ姉さん、分かってはいると思うけど夢の中で以外では絶対にその名前を呼ぶなよ!!」
システィにそう返した俺はいままでずっとどこか心に重しのようにのりかかっていた石が取れたように心が軽くなったのを感じた。
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