第210話 俺、異世界でエリンからコーヒー牛乳の返答を聞く
そんな中システィは何をしているかというとクシで俺の髪をといでくれている。
ただクシが髪を通り過ぎるだけなのに・・・これがかなり気持ちいい、まだイスに座っているから耐えられるが、これがベッドの上で行われたときは秒で夢の世界に誘われる。
・・・・・・・・・・カクン・・・・・・寝てない・・・寝ていませんとも・・・。
背後から優しい声でシスティが話しかけてくる。
「アスティ・・・もう寝る?」
「まだ寝ない・・・ふあぁぁぁぁぁ・・・寝ない・・・・・・システィに聞きたいこともあるし」
俺は自分の両頬を叩き眠気を飛ばす、その音を合図にエリンもやっと天使と悪魔の決着がついたのか飲むか飲まないか結果を教えてくれた。
「・・・・・・や、やめておくわ」
「わかった、それじゃ今回は出さないでおくよ」
「えぇ、あのね・・・アスティナ・・・今後はわたしが自分から飲むって言わない限りは話に出さないでもらえると嬉しいわ」
「あぁ・・・了解だ。封印しておくよ」
「ありがとう、アスティナ・・・・・・でわたしが考え込んでいた間にシスティは何をしているのかなぁ?」
エリンの視線が俺からシスティに移る。
「アスティの綺麗な髪をといでいるだけですが・・・それが何か?」
「アスティの綺麗な髪をといでいるだけですが・・・じゃないわよ!それもお風呂係であるわたしの仕事でしょうがぁ!!」
「エリンが忙しそうだったから、代わりにやっていただけよ」
システィは俺の髪にクシを通しながら答える。
エリンは「ぐぬぬ・・・」と歯を噛み締め、システィに付け入る隙を与えてしまった自分の落ち度にただただ怒りがこみ上がる。
しかし、それ以上は突っかかることもなく羨望のまなざしで俺というかクシを通したことにより、サラサラと肌触りがさらに良くなった髪をジッと見ているだけで特に何かをするということはなかった。
いつもならこのあとさらにヒートアップすることになるのだが・・・今回はエリンとしても分が悪いと判断したのか自ら戦いの舞台から降りたようだ。
賑やかなのも良いけどたまにはこういうのもありかもしれない、ただおとなしくこっちを見ているエリンに対してほんの少しだけ罪悪感があったり・・・なかったり・・・次からはシスティの誘惑を断るようにしよう、これは相手がエリンだったとしても断るように努力しよう。
つい一か月ほど前まではこんな体験をするなんて思いもしなかった・・・友達はいたが会う頻度はそんなに多くもないし、どこか旅行に行くこともなかった。
野郎同士で泊りがけの旅行に行くというのが、そもそも俺たちの中で好きなやつがひとりもいなかったってのもある。
それがいまや毎日一緒に寝て一緒にご飯を食べ会話をして、こうも生活が変わるとは思いもしなかったなぁ・・・・・・もしも・・・俺の見た目がアスティナではなく、元の俺だったとしても・・・彼女たちは俺と一緒にいてくれただろうか。
急にそんな考えが俺の頭を過る、それに連動するかのようにスーッと涙が頬を伝う。
この身体になってから、どうも感情のコントロールが安定しない・・・やはりこの身体に引っ張られているのだろうか。
魂は身体に引っ張られるか・・・あまり気にしないようにはしているが、定期的に考えてしまう・・・そのうち俺だったものも完全に消失するかもなぁ。
自分が推しているカードであるアスティナで第二の人生を歩めているので、最終的にそうなったとしても別に構わないし甘んじて受け入れる、ただその前にアスティナや不死族のことそれに七つの大罪・・・他にも結構いろいろと手を出してしまったことを終わらせておかないといけないよな・・・まずはカスミの依頼残り二日をちゃんと終わらせないとな。
急に泣きだした俺を見たエリンは驚きつつも寝間着で涙を拭ってくれた。
「アスティナ、また嫌なことでも思い出したの?大丈夫よ、あなたにはわたしがいるわ。あと・・・システィもね」
「少し言い方にトゲがあるような気もしますが、エリンの言う通りです。アスティには私めたちがついています」
「・・・・・・ありがとうな、ふたりとも。心配かけた・・・」
「いいのよ、気にしないで。それで明日もカスミと戦うんでしょ?少し早い気もするけど寝とく?」
「あー、そうだな。カスミのことだから明日もぶっ倒れるまでやるだろうし、それじゃ歯を磨いて寝る準備しようぜ」
俺、エリン、システィの三人は歯を磨くため洗面所に向かうことにした。
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