第209話 俺、異世界でエリンのコーヒー牛乳に対する熱意を知る
部屋に戻ってきた俺はいまイスに腰を下ろし、風呂上がりで火照った体を冷やすためストレージから水筒を取り出す。
テーブルに放置されているカップに取り出した水筒を傾けて注いでいく。
エリンとシスティの分はまた別途用意したコップにそれぞれ注いでおいた。
俺だけふたりと違ってカップなのには理由がある、これといって深い理由があるわけでもなく、ただ俺が風呂に入る前に飲んでいたお茶が入っていたカップをそのまま使用しているだけ。
お茶で満たされたカップを手に取った俺はそれを一気に飲み干す。
キンキンに冷えたお茶が喉を通るたびに火照った体が冷えていくのが分かる、そう感じているのは俺だけではないようで隣でエリンとシスティもゴクゴクと美味しそうに飲み干している。
飲み食いをしているシスティを見るたびにあれはどうなっているのだろうと気になることがある。
彼女はデュラハンでいまは頭と首が繋がっているように見えるが、着脱可能で頭をすぽっと取り外すと人間の中身・・・断面図が見える。
それについては慣れた・・・わけではないが、種族特有の能力や個性といったものなので別に気にはしないが、頭をセットするときって神経や血管といったものを全て正しい位置に少しの誤差もなく、戻しているのだろうかというものだ。
普通に問題なくお茶が飲めているところを見ると、正しい位置にセットしているということだとは思うが・・・着脱頻度が多いというわけでもないし、俺も実際にこの目で見たのも二回だけで、センチネルの部屋と師匠の家で一回ずつ見ただけでそれ以降は一度も彼女は頭を分離していない。
まぁこれは俺の許可が無い限りはしてはいけないと彼女と約束したから。
デュラハン特有とはいえ、そんな神経一本一本の位置を正確にそれも数秒で判断して戻すとか・・・どれほどの技術を要するのか到底理解できない。
もしかしたら、自動で正しい位置にセットし直してくれるシステムのようなものが彼女の種族デュラハンは持っているのかもしれない。
そのうちまたシスティに聞いてみるか。
・・・・・・そういやシスティって戦闘時はあの大剣を使っているけど、それ以外でも戦えたりするのかな・・・これもあとで聞いてみるか。
空になったカップをテーブルに置くと同時に、俺はふたりに同意を求めるように独り言としては大きめの声で話す。
「あ~、風呂上がりにはやっぱ冷えたお茶が最高だな!炭酸とかコーヒー牛乳とかも悪くはないんだけど、やっぱ俺はこれが一番好きだな!」
「そうねぇ、確かにお茶はスッと喉を通っていくのが心地よくてわたしも嫌いじゃないわ。でも、わたしはアスティナが前に教えてくれた腰に手を当てて飲むあのコーヒー牛乳の方が好きだわ」
「エリンあれ本当に好きだよな・・・教えた俺が言うのもあれだけどさ、あれを毎回やってるのってお前ぐらいしか見たことないわ。飲むのなら出すけどいるか?」
俺は腰に手を当て飲む真似をするエリンにコーヒー牛乳がいるか聞いてみた。
するといつもなら脊髄反射レベルで「いる!!」と返答が返って来るはずなのだが、今回はめずらしく「いらない」と断っていた。
「・・・エリンにしてはめずらしいな?本当にいらないのか?」
「えぇ・・・やめておくわ。あのコーヒー牛乳はここでは手に入らないし、特別なとき以外は飲まないようにしているの」
「確かにこの大陸に来てから俺も一度も見たことがないが・・・でもまだストレージに100ぐらいは在庫あるぞ?」
「そんなにあるの!?あ~~~~~、それなら一個ぐらい飲んでも大丈夫な気が・・・・・・だけど、う~~~~~ん」
思った以上にまだまだ在庫があることにエリンは頭を抱える、自分の欲望に忠実に行くべきか・・・それとも自分を律して欲望を断ち切るか。
エリンの頭の中ではいま天使と悪魔が対立しているんだろうなぁ。
悪魔は一個ぐらいなら飲んでも大丈夫だと・・・対立している天使は一個飲んだ瞬間ダムが崩壊して全部飲み干すからやめておけと・・・たぶんこんな感じ。
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