第207話 俺、異世界でデスサイズの能力自動補充を理解する
システィがこっちに来るまでの間、俺は今回カスミとの手合わせで使用したカードを補充することにした。
カスミの依頼初日ということもあり、相手もまだ完全に本気を出していない以上こちらも手の内を明かすわけにもいかないので、俺の切り札と言っても過言ではないデスサイズを発動せずに今まで通りの方法で魔法を使用した。
その結果デスサイズを覚えてから久々に自分でカードを補充することになったというわけだ。
デッキ内容もデスサイズを使用することを考えた上で構成していたので、キュアなどの回復系にフライ、ウォッシュ、テレポート以外は1枚ずつしか入れていなかった。
とはいっても・・・初級魔法のアロー系と食器や長時間の手合わせで汗と汚れでボロボロになった俺とカスミを洗浄するためにウォッシュを使用したぐらいでそれほど枚数は消費していない。
チェックで現在のデッキ内容を確認してみたが火、水、風、土の四属性アローにウォッシュが4枚・・・合計8枚しかドローしていなかった。
俺は太ももにベルトで固定しているデッキケースを取り外すと自分の膝の上にのせる。
次にストレージから先ほど確認したカードを選んで取り出してはふたを開けたデッキケースにそれをどんどん入れていく。
取り出したカード8枚全てをデッキケースに入れ終えた俺はデッキケースに付いているベルトをくるくる丸めてまとめるとテーブルにそのまま置いた。
それにしても・・・あれだな、デスサイズの自動補充に慣れてしまった今、手動補充がこれほど面倒くさいと感じてしまうとは・・・明日からデスサイズ使おうかな。
ふと今回の一件である事が気になった俺は首に掛けているペンダントを握り締めてわーさんに話しかける。
別にペンダントに触れなくても直接わーさんと会話をすることは可能なのだが、わーさんの話によるとペンダントに触れずに話かけるのはマナー違反だそうだ。
最初そのことを聞いたときは意味が分からなかったが、彼が言うには直接話かけるのは勝手に部屋に入って来る感じで、ペンダントに触れてから話かけるのはドアをノックしてから部屋に入る感じ・・・だそうだ。
「わーさん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いまいいか?」
「・・・なんでっか、アスティナはん。いまええとこなんやけど」
「あのさー、デスサイズ発動前にドローしたカードって自動補充とかできる?」
俺の質問にわーさんは「もちろん、できまっせ」とあっけらかんに答える。
その返答を聞いた俺は驚愕すると同時に前もって聞いておけば良かったと少し後悔した。
「マジか!?自動補充できるのか・・・わーさん、俺てっきりそれできないと思って、自分でデッキケースにカード入れてた・・・」
「・・・あ~、わいの説明不足やったかもしれまへんな・・・ごめんやで、アスティナはん。えっとな、わいが付与したデスサイズの能力はデッキケースからドローして減った分を補充する能力やねん・・・せやから・・・なんていえばええんやろ・・・・・・」
わーさんは自分が付与したデスサイズの能力を説明してくれているのだが、どう説明すれば俺に正しく理解してもらえるか必死に考えながら話そうとしてくれている。
ただ言葉が出てこないのか、わーさんはずっと「なんていえばええんやろ・・・」を繰り返している。
たぶんわーさんは俺にこう言いたいのだろう。
「つまり・・・デッキケースに50枚入っている最新の状態を維持してくれるってことか?」
「そう!それ!それですわ、アスティナはん!!年は取りたくないもんやわ・・・こんなことも説明できへんやなんて」
「死神が年なんて気にするなよ・・・それに俺も試していなかったのが悪いんだしな。わーさん、ありがとうな。あとお楽しみの邪魔して悪かった」
「そんなん気にせんでええよ。ほな、またな~アスティナはん」
わーさんとの会話が終了して、少し経ってから彼に俺が話しかける直前まで何をしていたのか聞いておけば良かったとちょっとだけ後悔した。
俺はテーブルに置いてあるデッキケースに視線を向ける。
デスサイズの自動補充という能力を理解した・・・今まではデスサイズ発動中に使った分だけを自動補充してくれるのだと思っていたが、それは俺の勘違いだった・・・実際はデッキケースに50枚入った状態を維持してくれるというものだった。
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