第206話 俺、異世界でカスミとの手合わせその7
ベッドに仰向けの状態で降ろされたカスミはエリンに申し訳なさそうに再度謝っている。
「エリン殿・・・お手数をおかけして・・・誠に申し訳ございませんでした・・・」
「はぁ~~~~、カスミ・・・・・・もう謝るの禁止ね!!あなたそうしないとずっと言い続けそうだもの・・・次それ言ったら・・・」
エリンは悪さをするいたずらっ子のように笑みを浮かべカスミに告げる。
話を途中で切られたカスミは恐る恐るエリンに尋ねる。
「次また言ったらどうなるのですか・・・エリン殿?」
「それは・・・・・・」
「そ、それは・・・?」
「まだ残り二日あるけど、あなたの依頼を破棄するわ・・・ギルドにその分の手数料を支払ってでもね、そうよねアスティナ?」
急にエリンから同意を求められた俺は目をキョロキョロしつつも「そうだな・・・」と相槌を打つ。
ここで彼女に同調しておかなければ・・・俺の立場が危うい気がした・・・すまん、カスミ。
エリンからキャンセル料を支払ってでも、依頼を破棄すると言われたカスミはこの世の終わりだと言わんばかりに顔面蒼白になった。
か細い声でカスミはエリンにさらに尋ねる。
「さすがにそれは冗談ですよね?・・・ね、エリン殿?」
「冗談だと思うのなら・・・わたしに今ここでその言葉を言ってみなさい・・・依頼主様?」
SSS級冒険者エリンからの圧に耐えかねたカスミは俺に助けを求めているのか、澄んだ青い目でこちらを見ている。
俺は・・・ただ一言も発することもなく・・・ただただ無言で目を閉じてゆっくりと頷く。
その様子を見たカスミはエリンが本当に依頼破棄する気なのだとやっと理解する。
「・・・・・・分かりました、エリン殿。今日はありがとうございました。」
「いいえ、どういたしまして!それでカスミ・・・わたしたちは晩ご飯を食べに食堂に行くけど、あなたはどうする?あれなら、ご飯を部屋に運んでもらうように頼んでおくけど?」
「お心遣い感謝します・・・エリン殿、申し訳・・・・・・それではおにぎりを頼んでおいて欲しいです」
「分かったわ、おにぎりね。具は何がいい?」
「梅干しと鮭、昆布でお願いします」
「梅干しと鮭に昆布ね、分かったわ」
カスミの食べたいものを聞いた俺とエリンは早速食堂に向かうことにした。
食堂で刺身定食を食べた俺はすぐに自室に戻る。
エリンは少し遅れて部屋に帰って来た・・・遅れた理由は明白なんだけど、昼にあれほど間食していたというのに大きなエビがのった天丼にうどん・・・刺身盛り合わせを頼んでいたからだ。
それにしてもエリンが魚を生で普通に食べているのが何度見ても意外だなと思ってしまう。
この世界で魚を生で食すという文化は獣人族が多く住むこの大陸ぐらいしか見られないのでないだろうか。
まだ俺はアルトグラム王国とガルード連合国しか知らないため、残りの三国でもそういった文化はあるかもしれないが、アルトグラム王国は他種族も多く住んでいるが、魚はあっても焼いたり煮たりなどで生で食べている人はひとりもいなかった。
貿易港町オセロンですら、生魚を提供している店はなかったような・・・まぁ船の出向時間が迫っていたからちゃんとは見れていないんだけどな。
そんなことを思い出しながら、俺はイスに腰かけて熱々のお茶をふぅ~ふぅ~してはやけどしないように気を付けて飲んでいく。
美味しいご飯をお腹いっぱい食べて満足したエリンはベッドで大の字で寝っ転がって余韻に浸っている。
さて・・・いつも21時頃にシスティがこっちに来てそれからみんなで風呂に入るんだが・・・まだ20時をちょっと過ぎたぐらいか・・・何をして時間を潰そうか。
「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら
是非ともブックマーク、評価よろしくお願いいたします。




