第205話 俺、異世界でカスミとの手合わせその6
その後結局・・・19時頃までずっとカスミの訓練に付き合うことになった、確かにカスミは冒頭でぶっ倒れるまでとは言っていたが、マジでそれを有言実行するとは思いもしなかった・・・現にいまカスミはエリンにおんぶされた状態で宿屋に帰還しようとしている。
カスミの実家はここ首都オオエイド内にあるらしいのだが、「まだ修行中の身だから帰ることはできない」とおんぶされた状態で俺とエリンに語っている。
さすがはS級冒険者ということもあり、カスミもそれなりに稼いでいるようで数か月前から俺たちと同じ宿屋に泊まっているらしい。
今まで一度も宿屋ですれ違ったことがなかったので、そのことを聞かされるまで全く知らなかった。
正直なところ・・・あんたもう霞流抜刀術免許皆伝だろうが・・・さっさと家に帰れと言いたかったが、確かに霞流抜刀術は完璧ではないのだろう、カスミの中での完璧は全ての技を零か十ではなく、零から十と段階で行えるようになること。
それは今回嫌というほど手合わせをして感じた・・・それがカスミの強くなろうとする理由であり、また重荷でもあるのかもしれない。
霞流抜刀術か・・・今日使ってきたのは一之型霧衝と三之型残衝だった。
なぜ一之型が霧衝という名称なのか知っているかというと・・・カスミが自分でそう呼んでいたから分かった。
カスミも霞流抜刀術を使用する際は俺が魔法を発動するとき唱えるのと同じで技名を言わないと使用できないようだ。
そのおかげで俺は霞流抜刀術の技名を知ることもできたし、それを合図に回避行動も取れるようになった・・・それでも結構ギリギリで油断すれば、300ダメージがすぐそこで手招きしているのが見えるほどに・・・。
一之型霧衝は三之型残衝のように一瞬で動作が完了するものではなく、一連の動作完了後に居合斬りをしてくる技・・・何て言えば良いか・・・わざと隙がある動きを見せ、こっちを誘い出して自分の間合い入った瞬間に一閃してくるというか・・・その隙を見せている間は回避に専念しているから、こっちの攻撃は当たらないし、ゆっくり近づいてくるので余計に焦って攻撃してしまい、さらにドツボにハマる。
本当にきりを相手にしているように手ごたえがなく、残衝の方がまた対応しやすかった。
後半は霧衝を混ぜた連撃をしてくるから・・・マジでしんどかった。
・・・・・・あと二日これ俺やらないといけないのか・・・今日はもうさっさと風呂に入って寝よう。
おんぶされているカスミは耳元でやっと聞こえるか程度の小声でエリンに話しかける。
「申し訳ない・・・エリン殿・・・まさかここまで動けなくなるとは思いもせず・・・この御恩は必ず・・・・・・」
「これぐらい気にしなくてもいいわよ、それよりもカスミ・・・自分の限界ぐらいはある程度把握しておきなさいよ」
「はい・・・面目ない・・・返す言葉もありません。某・・・ついはしゃいでしまいました、ここまで本気を出せる相手が今までいなかったもので・・・」
「でしょうねぇ・・・わたしもSSS級とこれだけ対等に戦える人はじめて見たもの。SSS級とはいってもシスティだけは別格だけどねぇ・・・」
エリンからSSS級という単語を聞かされたカスミは「・・・・・・SSS級?」とその意味が分からずに困惑し、エリンに聞き返す。
「カスミ・・・あなた、まさかアスティナがただのラジオ体操美少女とかって思っていないでしょうね?」
「えっ、そうではないのですか・・・・・・」
「はぁ・・・カスミ、そんな子がこんなに強いわけないでしょ・・・。アスティナはSSS級冒険者よ・・・もちろんわたしもよ」
それを聞いたカスミは現実が受け入れられないのかエリンの背で硬直している。
満身創痍どころかさらにおとなしくなったカスミを背に乗せたエリンと俺はそのまま宿屋に帰るとカスミが泊まっている部屋にすぐ向かうことにした。
ただカスミが泊まっている部屋がどこか分からない俺は本人に場所を聞いてみる。
「なぁ~、カスミさんの泊まってる部屋ってどこ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
しかし・・・カスミからそれについて返答が返ってこない。
俺はもう一度カスミに問いかける。
「あのぅ・・・カスミさん?俺の言葉聞こえてます?」
今度は・・・ちゃんと反応はあったが・・・とても無機質な動きでコクンと頷くのみ。
エリンに背負われた状態で無言で前方を指差しするカスミ。
俺とエリンは無言で案内をするカスミの指示に従い部屋にたどり着くと、すぐにエリンは部屋主をベッドに降ろすのであった。
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