第204話 俺、異世界でカスミとの手合わせその5
俺は今の状況を整理する・・・。
ドレスのおかげで斬られた箇所はもうすでに止血され、傷も塞がりつつある。
斬られたドレスも自動修復能力で徐々に再生しているはず・・・自分の背中は見えないから断言はできないけど。
俺はカスミからの攻撃を回避するために後ろに下がった・・・なのに誰もいないはずの背後から斬られた・・・この斬撃の感じはいま現在対峙しているカスミのもの・・・・・・ということは・・・これが霞流抜刀術・・・三之型残衝。
ざんしょう、衝撃が残る・・・か・・・なるほど、この技は自分の斬撃をその場所に留める技か・・・そして残衝は三之型・・・まだ最低でもあと二つは技を習得しているはず・・・これはあれだなぁ・・・理解したとしてもすぐには対応できないやつだ。
俺が魔法名を唱えないと発動できないのと同じでカスミも技名を言わないと発動できないということならば・・・その技名に反応して対応できるようになるかもしれないが・・・もしこれが無言で使えるとなると一気に難易度が上がる。
通常の攻撃にこれを混ぜられるともうこっちはお手上げです・・・。
さて・・・とりあえずは今にもカスミを狙撃しそうな目つきで睨みつけている相棒が実際に行動開始する前に一言いっておくか・・・。
「エリン、俺は大丈夫だから!!本気で手合わせする以上はこういうことも起こる。それに俺もカスミさんも殺すまではやらないから・・・なので・・・とりあえずその目でカスミさんを見るのはやめような?」
「分かったわ、アスティナ・・・あと、わたし・・・そんなに怖い目してた?」
「あ~、A級冒険者ですら気絶するか・・・土下座して謝るぐらいには・・・な」
「そぉ・・・なのね」
エリンは自分の目頭をグニグニと指を押し当てほぐす。
いつもの顔に戻ったところでエリンは依頼主であるカスミに謝っている。
「カスミごめんね~、どうもアスティナのことになるとわたし、すぐにあ~なっちゃうらしいのよ。自分ではそんなつもりはないんだけどね」
「いえ・・・お気になさらず・・・それほどアスティナ殿のことを大事に想っているということでしょうし・・・某は大丈夫です」
「そぉ?それなら良かったわ、真剣勝負を中断させちゃって本当にごめんね。どうぞどうぞ再開してちょうだい!」
「はい・・・承知いたしました、エリン殿」
なぜか試合を邪魔されたはずのカスミの方がエリンに対して深々と頭を下げている。
それを見た俺は・・・わかる、その気持ち・・・と言葉を出さず心の中で相槌を打つ。
このやり取りが始まる前に俺は自分のステータスを開きずっとHPの状態を見続けていた・・・丁度カスミとエリンの会話が終了する直前にHPが全快した。
斬られてすぐにHPを確認する余裕はなかったが、エリンのあの目を注意したあたりでは俺のHPは800ぐらいだった・・・体感的には斬られたから数秒と考えるとあの一撃はザックリ計算にはなるが・・・300前後のダメージ。
ふむ・・・三連続までなら、なんとか耐えられるって感じか・・・それがカスミと堂々と殴り合えるギリギリのラインということになるな。
斬られるたびにちょっとした休憩時間があれば延々と戦えないことはないが・・・HPがどんだけあろうと疲労はする・・・しんどい。
リカバリーで無理矢理疲労を回復して続行できなくもないが・・・そこまでしてやりたくないな~、依頼主は喜んでやりそうだけどな。
さてと・・・・・・全快したことだし、再開するとしますか。
「カスミさん・・・エリンもあー言ってるし、手合わせ再開しようぜ。次はその残衝を見切ってやるからな!!」
「あのアスティナ殿・・・手合わせして下さるのはありがたいのですが、治療しなくても良いのですか?某・・・霞流抜刀術の免許皆伝ではありますが、お恥ずかしながら、零か十でしから技が使えないもので・・・アスティナ殿が強いことは知っておりますが、それでも無傷とはいかないはずでは・・・それにその・・・ドレスまで斬ってしまいましたし・・・」
「・・・・・・あー、そういうことか!確かにカスミさんの一撃はマジで痛かったし、やられたとは思ったけどさ・・・ほらこのとおり!!」
俺はカスミに背中が見えるようにその場で反転して、もうすでに傷が癒えていること証明する。
傷一つないどころか、綺麗なままのドレスを見て唖然とするカスミに対してさらに俺は言葉を付け足す。
「これでまた俺の能力を一つ知ることができたな」
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