第203話 俺、異世界でカスミとの手合わせその4
その後カスミは「う~ん・・・」と首を傾げ、何やら難しい顔をしている。
俺はてっきりすぐまた手合わせを開始するものだと思っていたが・・・カスミは今それどころではないらしい。
「あのぅ・・・カスミさん・・・続きしないのか?俺が言うのもなんだけど、カスミさんの要望どおり一部能力開放したんだけど・・・」
俺は考え事をしているカスミに問いかける。
するとカスミは額にしわを寄せながら俺の質問に答える。
「しますよ!もちろんするのですが・・・アスティナ殿になんで気づかれてしまったのかと思いまして、それをさっきから考えているのですがその原因が全くと言っていいほどに思いつかないんです・・・ハッ!?まさかアスティナ殿・・・相手の思考を読み取る能力とか持ってたりしませんか?」
「・・・ノーコメントで」
「のぅこめんと?」
俺はあえてこちらの世界の住人には理解出来ない言語で口に出すと案の定カスミはオウム返しでその言葉が繰り返す。
そして俺はカスミに二戦目開始時に取り決めた内容を交えながら問いかける。
「カスミさん・・・俺が能力を出すってことはだな、俺がその分ちょっと本気になっていると言うこと、だけど自分が持っている能力について説明などはしない・・・それでも、もし知りたいというのなら・・・どうすればいいと思う?」
「・・・・・・つまり・・・それもちからずくで聞き出せと言うことですか?」
「カスミさんはそっちの方がやる気出るだろ?」
「某・・・俄然やる気が出てきました!!それでは・・・アスティナ殿・・・・・・参ります!!」
カスミは抜刀術の構えを取ると二戦目で最初に見せた動き、そのままに俺に向かって走って来る・・・デジャヴかと錯覚してしまうほどに挙動が同じ。
さすがにもう柄頭を蹴って、抜刀を止めることはできないだろう・・・一度見せた手が二度も通じるほど容易い相手じゃないことは一戦目の時点でそのことは理解した。
そうなると・・・次はどんな一手を仕掛けてくるのか・・・ここから先はもうバトルブーツに頼らないと即手合わせ終了になるかもしれない。
さて・・・どうしたものか・・・・・・今度は相手の動きをじっくり見てみることにするか、いつ攻撃がきたとしても対処できるように動ける準備だけはしておくか・・・。
俺はその場で軽くステップを踏んで、カスミの動きを観察する。
そして前回と同じ2メートルまで両者が近づく・・・が未だにカスミは刀を鞘から抜かずに距離を詰める。
それからさらに50センチほど一歩踏み込んだとき・・・カスミはポツリと俺がギリギリ聞こえる程度の音量で呟く。
「霞流抜刀術・・・三之型残衝」
鞘から刀を抜くとその勢いそのままに胴体目掛けて斬りかかる・・・があと数センチ届かず、虚しく空を斬る。
・・・カチン・・・・・・と静かに刀が鞘に戻る。
霞流抜刀術、それがカスミが会得した流派の名前なのだろう・・・うん・・・かすみ・・・依頼主の名前と同じ・・・ということはあれか、襲名しているということならば・・・カスミはその流派の当主とかいうやつでは・・・免許皆伝してるやつでは・・・。
そんなやつが・・・距離感をミスって攻撃なんて仕掛けてくるか・・・。
俺はカスミが次にどんな行動を取るのかを注意深く観察する。
しかし・・・カスミはそこから俺を攻撃することはなく、そのまま通り過ぎる。
俺とカスミは距離にして1メートルほど離れた場所で対峙する。
俺はカスミの行動を目を離さずに最後まで見続けるが、そこから追撃してくる様子もない。
・・・・・・これはあれか攻撃すると見せかけた・・・フェイント・・・。
「そのまま斬りかかって来ると思っていたんだが、これはどういう作戦?」
「それをアスティナ殿に言ってしまっては策を考えた意味がないじゃないですか・・・」
「いや・・・まぁそうなんだけどさ・・・気になるじゃない?」
「案外すぐに答えは出るかもしれませんよ!」
カスミはそう言い放つとまた胴体を狙った一閃を繰り出す。
さすがにこのまま棒立ちしていてはカスミの抜刀術の餌食になってしまうと判断した俺は回避するため後方に軽く飛ぶ。
・・・・・・ザシュ・・・・・・。
背中から刃物で斬られたかのような鋭い痛みが走る・・・。
俺の眼前には確かにカスミがいるし・・・ちゃんとムラマサも振り抜いて斬りかかって来ている・・・なのに背後から斬られた。
「まずは某に軍配が上がりましたね、アスティナ殿?」
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