第202話 俺、異世界でカスミとの手合わせその3
それから10分ほど休憩したところで俺とカスミは席を立ち、二戦目の準備に入った。
一戦目と同じように俺たちは5メートルほど離れ言葉を交える。
「アスティナ殿、一つ確認したいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
「構わないけど・・・聞きたいことがあったのなら、休憩時言ってくれても良かったんだが・・・」
カスミは少し返答に困りながらも最後はハキハキと答える。
「その時は特に何もなかったので・・・・・・違いますね。某が聞くのを躊躇していただけ・・・アスティナ殿!次からは本気でお相手をお願いしてもよろしいでしょうか!!」
「あー、やっぱり気づいてたか・・・でも、体術に関してはあれが俺の限界に近いんだけど?」
「そうではなくて・・・その脚に付けている箱らしきもの・・・それにその靴にも何か仕掛けがあるように思いましたので・・・」
「ドレスで隠れて見えないと思っていたんだけど・・・そんなとこまで見ているなんてカスミさんのえっちぃ!!」
「アスティナ殿・・・茶化すのはやめて頂きたい。某は真剣に頼んでおります・・・」
カスミから放たれる圧・・・それに対峙している相手の目が完全に本気モードになっている・・・これは俺が茶化したのが悪いか・・・。
依頼主の願いを叶えるのが依頼を受けた者の責務だしな・・・ただカスミも今回の大会に参加するだろうし、手の内をさらし過ぎるダメな気がする。
魔法を使うとしても一部の属性だけを使用するなど・・・できるだけ使える範囲を狭めておくか。
「分かった、分かったよ・・・だからその圧やめてくれない・・・息が詰まるわ。ただし・・・俺が本気を出すかどうかはカスミさん次第ってことでどうだ?」
「と言いますと・・・某がアスティナ殿を本気を出さざる負えない状況にすれば良いということですか」
「そういうこと!それにカスミさんも本気出していないだろ、そのムラマサが本領発揮するのは抜刀術のはずだしな?」
「アスティナ殿・・・どうしてそのことを・・・・・・いや、それも某が実力で聞き出すことにします」
カスミはその言葉を最後に口を閉ざし、柄に手を当てる。
「あー、是非ともそうしてみてくれ!でも、俺はそう簡単に口は割らないけどな~。さてと、それじゃエリン、カウントよろしくな!!」
俺はカスミに返事をしつつ、エリンの方を向き右手を上げて合図を送る。
何度かカウントという言葉をエリンの前で使っていたこともあり、彼女は何事もなく前回と同じく三秒前からカウントを数え始める。
「さ~ん、にぃ~、い~ち、ぜろ~!!」
一戦目はこの後ゆっくりと抜刀していたカスミだったが今回はぜろの合図とともに柄に手を当てたまま低い姿勢で一気に加速し、俺との距離を詰めに来た。
ここで気圧され後ろに下がると相手の思う壺・・・ならば・・・俺が取る一手はこれしかない。
俺はこちらに向かって走って来るカスミにぶつかる気満々で駆ける。
一般的な冒険者ならば・・・そんな行動を取られるとその行動には何か裏があるのではと疑い、そこで戸惑ったりなど動きに変化があるのだが・・・そんな素振りなどカスミからは一切感じることができない・・・それどころかさらに速度を上げてきている。
残り2メートルに差し掛かろうとしたとき、カスミの口角がほんの少しだけ上がるのが見えた。
寒気がする・・・殺気を感じるといったものは一切感じなかったが、ただただ予感が・・・とてつもなく嫌な予感がした俺は咄嗟にバトルブーツに魔力を通し、さらに速度を上げてカスミの間合いに入る。
通常ならば選択肢としてはバックステップで相手から離れることが第一候補になる。
だが、それだと結局最初の気圧されて距離を離すためにバックステップするのと同じ・・・それよりも俺が一番気になったことは2メートル離れている状況で、刀身80センチほどのムラマサを振ったとしても距離としては全然届かないはず、それなのにカスミは口角を上げた・・・つまり笑ったということ。
理由は分からないが抜刀させるのはマズイ・・・抜刀術を見てみたいっていう好奇心はあるが、いまやられるのは非常にマズイ気がする。
・・・・・・・ガッ!!・・・・・・・・。
なんとか・・・ギリギリ間に合った。
左腰に携えている刀が鞘から抜ける前に柄頭を蹴ることによって、なんとか抜刀を阻止した。
蹴られたカスミは蹴りの勢いを逃がすため後方に飛ぶ。
そしてピョンピョン跳ねては両手を高く上げ左右に振って満面の笑みでこう叫ぶ。
「やったぁぁぁぁ!!アスティナ殿をちょっと本気にさせました!!」
嬉しそうだなぁ・・・こっちはそれどころじゃないっての、マジであの一瞬で冷や汗びっしょりなんだけど・・・。
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