第201話 俺、異世界でカスミとの手合わせその2
・・・・・・・ジリリリリリリリィィィィィィ・・・・・・・・・・・・。
手合わせの終了時間を示すアラーム音が鳴り響く。
その音を聞いた俺はカスミの横腹を狙った回し蹴りをピタッと空中で停止し、ゆっくり地面に右足を降ろす。
カスミは回し蹴りをするために軸にしている左足に狙いを定めてムラマサでの足払いが当たるギリギリで俺と同じように止めて鞘に戻している。
そして俺とカスミはそれぞれ1メートルほど離れると軽く頭を下げて、一回目の手合わせが終了した。
アラームが鳴ったタイミングに合わせてエリンは俺たちがすぐ飲めるようにお茶を用意している。
俺たちはエリンが占拠している休憩スペースに向かい、二時間しっかり動き回ったためカラカラになった喉を潤すためコップに入ったお茶を一気に流し込む。
空になったコップをテーブルに置くとすぐにまたコップにお茶を注ぐエリン、そしてまたすぐに一気に飲み干す俺とカスミ。
このやり取りが二回ほど続いたところでやっと手が止まり、初回手合わせの感想をカスミが話し始める、俺はもう残り少なくなったクッキーを手に取りそれを口に放り込みながらその話を聞く。
「いやー、結局これという一撃を当てることができませんでした。アスティナ殿の体術、実に見事で某感動しました」
「それはこっちの台詞だっての・・・その変幻自在の剣筋を躱すのマジで精神すり減らしながらやってたんだからな」
「その割には後半結構余裕そうに某には見えましたが?」
「そりゃ、さすがにあれだけ見せられたら否が応でも身体が覚えて反応できるようになるわ・・・生命の危機を感じれば余計にな」
「ですが・・・生命の危機を感じたからといって皆が皆そうできるとは限りません。そういった点でもアスティナ殿には才能があると思います、さらにこの技術を高めようとは思わないのですか?」
「あー、この体術はあくまで護身用・・・どうしても近接戦をしなければならない状況に陥ったときに対応できるために覚えただけだ、正直に言うとだな・・・そんな状況にならないことを祈りながら、毎回討伐依頼とか受けてたりする」
「それほど実力があるのに・・・ただの護身用だと・・・なるほど、興味深いですね・・・実に興味深い」
カスミはそう言うとニヤッと笑みをこぼす。
その顔を見たときにあることに気づく・・・それはセルーンとの訓練最終日にちょっとだけ彼女が本気を出したときに見せた表情にそっくりだった。
カスミが所持している妖刀ムラマサは居合、抜刀術を主体とする流派との相性が良いんだっけか・・・ということはカスミが本当に得意な戦闘スタイルは抜刀術のはず・・・だけどカスミは一度もその抜刀術を繰り出していない。
次からはさらに過激な訓練になりそうだな・・・。
俺の戦闘スタイルの主軸はあくまでも魔法による遠距離攻撃であり、この体術はこれで直接戦うというよりかは接近されたときにすぐに逃げられるようにするために必要な手段として覚えたもの。
本当に近接戦に特化するのであれば、手にもガントレットなどの武器を装備するなどして足だけじゃなくて拳も使えるようにする。
いや・・・それ以前に武器重たすぎて持てないんだったわ・・・腕を振り回せないとドローすらロクにできなくなってしまうので代償が大きすぎる。
まぁそれでも前衛であるシスティがアルト一家の護衛のため不在なので、基本俺が前衛をしなければいけないんだけど・・・近づかせずに倒せるのならそれに越したことはないと思う。
この疾風のバトルブーツも靴としては重たい・・・重たいのだが、魔力を通せば履いていないと錯覚するほどに軽くなる。
それでも基本的には魔力を通しことなく普通のバトルブーツとして履いている方が多い、ドレスを着ている限り魔力が枯渇することなどないので常に能力を発動してても問題ないといえばないが、それに慣れすぎるともしバトルブーツを履いていない状態で戦闘になった場合に焦りが生じてしまう可能性がある。
そういうもしものときに備えて普段はただの靴として履いている。
えっ・・・ドレスを着ていないときの対処、それはテレポートで逃げればいいんだよ・・・デッキケースが手元にない場合、それはリターンで手元に出現させればいいんだよ・・・・・というかマジでピンチのときはシスティを呼べば万事解決する・・・これはエリンも近くにいない俺ひとりだけ最悪のパターンのときだけどな。
そういや、カスミって俺がドレスで戦ってても何も言って来ないな、大体の冒険者はまずそういうとこを難癖つけてるんだけどな。
カスミにそのことについて尋ねるとカスミはあっけらかんとした様子で返答する。
「ひらひらして動きにくくないのかなと思ったぐらい・・・でしょうか?」
「たった・・・それだけ・・・?」
「はい、それぐらいですが・・・結局はそんな杞憂など考えるだけ無駄でした」
「そっかー、いや変なことを聞いてすまなかった。えっと、もう少し休憩してから二戦目をして、それで一旦終了して昼飯にしようと思うんだけどそれでいいか?」
「はい、某としても問題ありません」
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