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第2話 俺、異世界で意気消沈する

「いやいや、そんなテンプレみたいなことあるわけがない・・・」


 自分に起こった出来事ですら、まだ理解していないのにさらにそんなイベントが発生されても困る。そう軽く現実逃避をしていたところにさらに追撃がやってくる。


「ほんと!本当にお願いだから、もうこっちに来ないでよぉぉぉぉ!うわぁぁぁぁん!!」


「あー、めっちゃ泣いてますな・・・、はぁ、俺に何か出来るか分からないが助けに行くか!!」


 俺は泣き声が聞こえる方に向かうことにした。そして、走り出した途端に足裏に草木を踏む感触がした。ついさっきまで、部屋に裸足でいたのだからそれはまぁいいのだが、今は”アスティナ”の体になっているはずなのに靴を履いていないのである。


 そこでふと俺は自分が持っているアスティナコレクションを思い出してみた。絵違いやレアリティ違いなど色々と思い出してみると、イラストが全部上半身よりも上のバストアップでしか描かれていなかった。


「あー、イラストに描かれてなかっただけで、本当はずっと裸足だったのか」


 俺はアスティナの情報が手に入り嬉しかったのが半面、昔馴染みのアイツらにこのことが話せないのが少し悲しく思えた。そんなことを考えながら走っていると、またあの声が聞こえてきた。


「さっきからやめてってお願いしてるじゃない!とりあえず1回離れましょ、えっやっぱダメ?いやぁぁぁぁ!!」


 先ほどよりもだいぶ近くで聞こえるようになったきた。さすがに何の情報も分からずに飛び出して行くほどの度胸も技量もない俺にはない。


「さて、まずは状況を確認しておかないとな」


 俺は茂みに隠れつつ、忍び足で距離を詰めていくことにした。そして、やっと泣き声の張本人を視界に捉えることに成功した。


「あー、なるほど・・・、こりゃ叫んで助けを呼ぶことしか出来ないだろうな」


 泣き声の張本人は木の上によじ登ったはいいが、その真下にウロウロしながら様子を見ているウルフらしきクリーチャーが3匹がいるようでそこから降りられない様子だ。


「どうしよう、武器も落としちゃったし・・・、もうわたしは一生ここで生きていくのね・・・、うわぁぁぁん!!」


 なんだろうな・・・、当の本人だいぶ余裕ありそうじゃないか・・・。ならば、いまのうちに俺自身のステータスをもう一度確認しておいた方がいいんじゃないかと思い、今度は小声でさっきと同じように口に出した。


「ステータスオープン」


 俺はその表示された情報を確認していった。どうやら俺ことアスティナはランク1であり、種族がハーフヴァンパイアらしい。カードの時はテキストがシンプルだった上に、種族も不死族と大雑把に分けられていただけだった。


「えーと、それとHPは20でMPは1,000か、HP20は『クインテット・ワールド』のままだが、MP1,000ってのはなんだ?マナは最大でも10までしか溜まらないはずだ、つまりはMP100がマナ1つ分ってことか。それに所持金が金貨1,000枚で最後に能力だが、アスティナを守護する者、眷属の魔眼、血狂いの乙女」


「それとストレージ(カード)、鑑定(カード)、ショップ(カード)・・・この能力は初めて見るぞ」


 俺は見たことがない能力が気になり、ストレージ(カード)が表示されている箇所に触れてみた。すると別画面を表示され、そこに1枚”女神様のお手紙”という意味が分からないカードが1枚だけあった。


 俺はそのカードが気になったので右手で触れてみると画面内のカードが消えて、目の前に現れた。俺は落ちてきたカードを拾い上げ、おもむろにカード名を読んだ。


「女神様のお手紙ねぇ、こんなカード初めて見るわ」


 すると、さっきまでカードだったそれは1枚の封筒に変化していた。そしてその封筒にはたった一言。


「ようこそ、わたしの世界へ」


 その文字が目に入った時には、すでに封を開けていた。その中には1枚手紙が入っていて、そこにはこう書かれていた。


 当選おめでとう!君をわたしの管理する世界にご招待するよ。といっても拒否することは出来ないけどね。こっちに来る時に君の体は消滅しちゃってるからね。


 それに元の世界では君の存在そのものがなかったことになってるし。ただなんにも無しでこっちに来ても楽しくないだろうと思って、わたしなりに特典を用意しておいたよ。


 まず、最初にこっちで生活するために必要な体を用意したよ。君がいつも「俺が俺自身がアスティナだ!!」って、言いながら『クインテット・ワールド』を遊んでたから、サプライズとして前の体じゃなくてアスティナの体を用意したよ。


 次にこっちの世界に来る時にこちらの言語を読み書き出来るようにしておいたのと能力も君が生活する上で困らないように使えそうなのを選んでおいたよ。


 あとは君が今まで集めていたコレクションだけど、全部売ってこっちの通貨に換えておいたよ。


 買取額は任せておいてよ、ちゃんと一番高く売れるところで売っといたからね。全部で1,000万円だよ、すごいね。一番高かったのはね、君が世界大会で優勝したときの副賞永久なる乙女~アスティナ~の絵違いがなんと150万円で売れたよ。それじゃー、またねー。バイバイ!!


「この金貨1,000枚って、俺の全コレクションの売値だったのかよ・・・。いや、まぁこっちの世界の通貨に換えてくれたのはいいんだけどさぁ、勝手に他人のモノ売るなよなぁ・・・」


 俺は20年間集めてきたコレクションが見ず知らずの女神とやらに売りさばかれたことを知り意気消沈してしまった。そんな中、また例の叫び声が聞こえた。


「あー、腕だるくなってきたわ・・・、わたしこれもう食べられる未来しか見えないんですけどぉ!ほんと、誰か助けてぇぇぇぇ!!」


「あっ、ごめん、完全に忘れてたわ・・・」


 と小声で謝るのであった。

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