第197話 俺、異世界で期限三日間の依頼を受ける
冒険者ギルドに入ると先ほどまでテーブルを囲い談笑していたり、張り出されている依頼書を見てどれを選ぼうか悩んでいた冒険者たちが急にダンマリになる、そしてすぐに全員揃って操られているのかという一糸乱れぬ動作でこちらに振り向き首を垂れる。
そして・・・せ~の!という掛け声もないのに息ピッタリのタイミングで一斉にいつもの挨拶をされた。
「おはようございます!アスティナ姐さん!エリン姐さん!」
実力を見せてからというもの冒険者ギルドに来るたびに毎回これをされる・・・最初はやめてくれと何度も頼んだが頑なに頭を縦に振ることはせず、俺たちが認めてくれるまで延々と付き纏ってきたので渋々こちらから折れることになったのだが・・・やっぱ全力で拒否するべきだったか。
俺とエリンはそんな彼らに聞こえるように「おはよう」と挨拶するとすぐに受付窓口に向かう。
受付窓口には俺たちがこの街に来てから世話になっている・・・・・・世話をしているシーレイがいた。
冒険者ギルドの新米受付嬢~シーレイ~、人懐っこい猫耳少女、ヒマリという幼馴染がいる。
前に鑑定したときにこの情報を仕入れたのだが、【ヒマリ】という名前に聞き覚え上がった俺は名前を直接口に出したりはしなかったが遠回しに聞いたことがあった。
結果として俺が思っていた通りで彼女の幼馴染ヒマリは冒険者の町ミストでシーレイと同じ冒険者ギルドの受付嬢をしているあのヒマリで合っていた。
別大陸に来ていることもあって、センチネルからはまだオークキング事件の犯人が見つかったとの報告は受けていない。
俺たちを貶めた犯人・・・第一候補がヒマリだということは変わりはないが、確たる証拠が見つかるまではあくまで疑いがあるだけで留めている。
ただそれだとヒマリが俺らを貶めて殺そうとした理由が思いつかないんだよな・・・。
・・・っといまはそっちよりもこっちをどうにかしないとな。
何か面白そうな依頼がないか早速シーレイに尋ねる。
「おはようー、シーレイ。なんかお勧めの依頼とかないか~?」
「おはおは~!!ええっとねぇ・・・SSS級にお願いする依頼なんてないよ・・・そんな依頼がもしあったら・・・一大事だし!!」
「はぁ・・・そういうもんか~」
「今日はどうしたのよ?いつもみたいにギルドに顔出して終わりかと思ったら、お仕事が欲しいなんていうから、あっしちょっと驚いちゃったんだけど」
彼女から不思議そうに質問された俺は大会にエントリーしたこと、大会がはじまるまでの三日間その間、時間を潰すために面白そうな依頼がないか探しに来たことを伝える。
そのことを聞いたシーレイは何か思い出したのか俺に「ちょっと待ってて・・・」と言葉を残すと背後に設置されている棚に目をやり、「あれじゃない・・・これじゃない・・・」と独り言を呟きながらごそごそしている。
俺は隣にいるエリンの顔を見ながら「・・・どんな依頼が来ると思う?」と問いかける。
俺の質問に対してエリンは「分からないけど・・・」とまだ続きがありそうなところで区切り返答している。
それから一分ほど経過したとき「あったぁ!!」との声とともに一枚の依頼書を手にしたシーレイがこっちに振り向き戻ってきた。
そしてシーレイは俺たちに依頼書が見えるように台に置いて、どういった内容の依頼が書かれているのかを説明する。
「アスティナ、エリンさん!これどうかな?内容は依頼者の訓練に付き合うだけ・・・しかも期限は受けた日から三日間、丁度良くない?」
「確かにこれなら俺たちも身体を動かせるし、丁度いいかもしれない・・・・・・でもさ、シーレイこんな簡単な依頼が棚に放置されていたってことは・・・これ何か訳ありだろ?」
俺は片手に依頼書を持ちながらシーレイに疑いのまなざしを向ける。
「わかったわよ・・・正直に言います。この依頼主はね・・・S級冒険者なのよ・・・それもここの冒険者ギルドで一番強い冒険者・・・」
「・・・ここで一番強い人がわざわざここに依頼を頼んだってことか・・・自分が一番強いのに?」
「・・・・・・そうなの・・・ここで自分が一番強いのに・・・ここで依頼してるの・・・」
低いトーンで会話をしたあとにため息をつくシーレイ。
「・・・・・・何というか・・・愉快な人物のようだな。シーレイも苦労してるんだな・・・分かった受けるよ、この依頼。エリンもそれでいいよな?」
「えぇ、わたしもそれでいいわよ。どんな人なのか楽しみね、アスティナ!」
「あー、そうだな。きっとエリンとの相性はバッチリだと思うぜ・・・」
その後シーレイから依頼主がこの時間帯によくいる場所を教えてもらった俺たちは早速そこに向かうことにした。
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