第194話 俺、異世界でリヴァイアサンに乗船する
出航時間5分前に着いた俺たちはクルーにチケットを見せ、ギリギリ乗船することができた。
肩で息をしながら周囲を見渡す俺とエリン・・・船の内部にいるとは思えない豪華な内装にただただ無言でキョロキョロとはじめて都会に来た子供のような行動を取ることしかできなかった。
時間内に乗船することで頭がいっぱいだった俺とエリンはそこまで船の大きさや外装を見る余裕がなかったこともあり、まさか内装がこんなことになっているとは思いもしなかった・・・。
そんな俺たちのことが気になったようで、さっきとは違うクルーが声をかけてきた。
話しかけてきたそのクルーは太陽のようなオレンジの髪と海のように澄んだ瞳が印象的な青年だった。
「どうかなさいましたか、お客様?」
「あ~、俺たち船に乗るのが今回初めてでさ・・・しかもこんなに豪華だとは思ってもいなくて、それに時間ギリギリだったから、あまり説明も聞けてなくてさ・・・」
「そういうことでしたら、自分がご案内いたしましょうか?それにお話を聞く限り、お客様は自分のお部屋も分からないご様子だと思いますし・・・お客様がよろしいのであれば・・・ですが?」
俺とエリンはその青年の提案を秒で承諾する。
正直このままウロウロしていては埒が明かなかっただろう・・・それに青年が部屋がどうとかも言ってたし・・・個室まで用意されているとは・・・白金貨2枚の価値ありか。
こんな船旅あっちの世界だと一生することなどなかっただろうな、そんな金があったらそれ全部がカードを購入するための必要経費として使っていたと断言できる。
それほどまでに『クインテット・ワールド』というTCGは俺にとって無くてはならない存在だったということだな。
俺たちの返答を聞いた青年は乗り気で早速案内を開始しようとしてくれたが・・・別のクルーがこっちに走って来るとすぐに案内をやめるようにその青年になぜか敬語で話しかけている。
この青年を止めるために走ってきたクルーの少女は青年と同じ髪と瞳をしている。
よくよく彼女の話を聞いていると・・・追いかけてきたクルーは青年のことをこう呼んでいるではないか・・・キャプテン・・・と。
どうやらこの青年はこの豪華客船の船長だそうだ・・・20歳・・・もしかしたら17,8歳の可能性まで垣間見えるほど若いこの青年が船長なのか。
ということはだな・・・俺もエリンも船長に船の中を案内させようとしていたのか・・・。
いまのうちにふたりとも鑑定しておくか。
キャプテンと呼ばれている青年は鑑定することができなかったが、こっちの少女は鑑定することができた・・・しかし知らない方が俺にとっても彼女にとっても最良だったかもしれない。
豪華客船リヴァイアサンのクルー~ミリリン~、ミリガランの妹で兄のことを異性として慕っているが、それが兄にバレないように必死に隠している。
現実にこんなラブコメみたいなことってあるんだな・・・どうしよう・・・面と向かってこの兄妹と話しずらいのだが。
まだ会って数分しか経っていないのにこんなトップシークレットを知ってしまったことで、ひとりだけ意味もなくパニックに陥っていたとき、兄のミリガランから案内できずに申し訳ないと頭を下げられたが・・・こっちも家庭の事情を知ってしまい申し訳ないと謝罪したい思いで頭がいっぱいだった。
ミリガランは出航準備に入るためその場で別れた、兄に代わって妹のミリリンが内部を案内してくれることになった。
それから案内をするミリリンの後ろをついて回る。
最後に俺たちの泊まる部屋まで案内するとミリリンは会釈をしてすぐに俺たちから離れていった。
俺とエリンはあまりミリリンに良く思われていないのか、何というか機械的なマニュアルに則った感じで案内される・・・まぁ最初の印象が大好きな兄貴と楽しそうに会話しているところからだしなぁ・・・致し方ないか。
部屋はそれぞれ俺とエリンでひと部屋ずつかと思っていたが、ミリリンが案内してくれたのはひと部屋のみ。
ふたりでひと部屋で100万円か・・・部屋が別々だったらもっと高かったかもしれないってことだよな、オリベラさん、少しでも安くなるように一応考えてくれてたんだな。
部屋のドアに手をかけると俺はゆっくりとドアノブを回して入室する、俺に続くようにエリンもすぐに入室するとドアを閉めた。
部屋の中は俺たちが泊まっている宿屋の3部屋分を一つにまとめたような大きさにど真ん中にキングサイズのベッドが堂々と配置されている。
部屋の奥にはトイレやシャワー室などの水回りが完備しており、部屋の手間にはドレッサーやちょっとした衣類が仕舞えるようにクローゼットが用意されている。
なんか部屋の配置がごちゃついている感じはするが、悪くない・・・特にあのベッドが最高だと言わざる負えないな。
この部屋は外側ではないため、部屋の中から外の景色を見ることができない、それだけが残念ではあるが寝泊まりするには十分すぎる環境だ。
あー、それと俺もエリンも知らなかったことなんだけど・・・ここからガルード連合国の港町タンサキってとこまで3泊4日らしい。
大陸同士もつながってるし、それほど日数がかかるなんて思ってもいなかったが、この五大陸周辺は常に海が大荒れの状態だそうでそのため迂回を余儀なくされているのだが、それが結構離れないといけないらしい。
それならやっぱり陸路で行くべきだったかとも思ったのだがガルード連合国の首都オオエイドが北西にあるため、陸路を横断するよりも大陸の南西にあるタンサキまで船で行ってから、北上した方が首都を目指すのであればお金はかかるが、そっちの方がお勧めだとミリリンに案内してもらっているときに出会った老夫婦が親切に教えてくれた。
こうして命運をかけた世界旅行がはじまるのであった・・・・・・この船旅の間ぐらいはそのことを忘れて優雅で自堕落な生活をしよう・・・あっ、エリンがいるからやっぱ無理か。
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