第191話 俺、異世界で飛行タクシーでオセロンを目指す
師匠と別れた俺たちはいま港町オセロンを目指して南を下って進んでいる。
もちろんその移動方法はいつもの安心安全飛行タクシーである。
南に下るに連れて海が近くなっているのか潮風にのって磯の香りが鼻腔を通過していく。
この磯の香に俺はこの世界に来てはじめての海にどんどん期待が高まっていき、そしてそのテンションのまま眠たそうにしているエリンに話しかける。
「なぁなぁエリン!ウミガメの匂いがしてきたぞ!!俺さぁ、こっちで海を見るのはじめてだから、楽しみでしょうがないんだが!だが!!」
「・・・ふあぁぁ、えぇそうねぇ。わたしも見たことがないから楽しみだわ。それよりも・・・アスティナ、ウミガメの匂いってなに?」
「ミストや王都で嗅いだことがない・・・この独特な鼻を抜ける匂いのこと。この匂いがするってことはそれだけ海が近いってことなんだ」
「へぇ~、そうなのね。それでどうしてウミガメの匂いって言うの?」
「・・・・・・さぁなんでだろうな?」
「それもきっと記憶がちゃんと戻れば理由も思い出せるわよ。そのときはわたしにその理由を教えてよね・・・ふあぁぁぁ」
エリンからの言葉に対して俺は「あぁ、もちろんだ」と返事をしたが・・・そもそも俺は何も記憶を失っていない、この件に関してはマジで本当に何にも知らない、母親が昔からそう言っていたのでいまもついついそう言ってるだけだったりする。
最初は記憶喪失の方が都合が良いと思い、いまもそのままダラダラとそれを演じ続けているが、ちょいちょいその設定を忘れポロっと口に出したりしてしまうことはあるが・・・さて・・・どのタイミングで相棒に真実を告げるべきかそろそろ考えないといけないか。
この事実を知っているのはアスティナの姉であるシスティただひとりだけ。
まぁいまはそのことを彼女に伝えるよりもまずは七つの大罪のお遊戯を止めることに専念することにしよう。
決して話すタイミングの延ばしているわけでは・・・断じてないと思う・・・思いたい。
それはそうと別れ際に師匠が教えてくれたことがあった。
大陸間でのテレポートなどを用いた移動はできないらしい・・・師匠やレイヴン、それ以外の実力者たちが何度もその原因を追究したが、未だにその原因は分かっていないと言っていた。
師匠に言われるまでそんなことなど1ミリも考えていなかった・・・確かに大陸間でテレポートできるのであれば、そっちの方が良いに決まっている・・・それにこっちに来ることができればライユちゃんにも会えるしなぁ。
追加で師匠が説明してくれた内容を足すと、その大陸で発動した魔法が効果を及ぼす範囲はその大陸内のみということらしい。
大陸間でテレポートができない理由ってそれが原因じゃないのかと思ったが・・・師匠たちが言っているのはその大陸間でどうして魔法範囲が制限されているのかということらしい。
それ以前に大陸を区切るようにそれぞれ結界が張っているわけでもない・・・もしかしたら見えないように隠蔽された結界が張られている可能性はゼロではないかもしれない、だがもしそうならこの世界の住人全てを騙しとおせるほどの結界ということになる。
それはつまり・・・・・・この世界を創造した人物がそういうルールの下に創り出した結界・・・この世界での絶対的なルール。
ということはだな・・・俺をこの世界に呼び寄せたあの女神が創ったルールという可能性が非常に高い。
・・・・・・じゃー、無理じゃないかな・・・とシンプルにただそう思ってしまった。
そういや、ここ最近色々とあり過ぎて忘れかけていたがあの女神にも一言ガツンっと言ってやらないとな・・・。
未だに・・・未だに俺のコレクションを勝手に売りさばいたこと、俺は根に持っているからな、せめて・・・せめてあの優勝したときに貰ったアスティナだけは手元に残しておきたかった。
理屈では分かっているとも・・・こっちの世界にそういった物を持って来れないから売りさばいたことなど分かっているさ・・・分かってはいるが、俺の魂がその現実を未だに受け入れることができずに拒絶し続けている。
しかし・・・しかしだ・・・俺自身をアスティナにしてくれたことはナイス判断だと称賛するほかあるまい。
まぁこの世界にオリジナルのアスティナが存在していたことを知ってしまったいまでは、オリジナルのアスティナに申し訳ない気持ちでいっぱいではあるが・・・。
頭の中でアスティナに謝罪しながら飛行を続けていると、遠くの方に港町オセロンが見えてきた・・・そしてその街の向こう側には広大に広がる海の存在が視界に入った。
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