第190話 俺、異世界で休憩スペースを解体する
その後師匠とエリンの争いも終結し、いまは皆でゲオリオさんが作ってくれた弁当を食べている。
カロリーでいえば・・・優に成人男性一日分・・・ヘタすれば二日分はいってるのではないかというほどのお菓子を食べていたはずのエリンはいま現在弁当をがっついている・・・その光景を見ているだけで俺も師匠も弁当を食べ進める手が止まる。
・・・・・・それから30分ほど時間をかけて、弁当を食べ終えると食後にいつも飲んでいたハーブティーを飲みながら俺は師匠が契約している死神のことで質問する。
「師匠の死神にも名前とはあるんですか?」
「・・・・・・あー、あるよ。僕じゃなくてエリンがつけてくれたんだけどね」
「そうなんですね!・・・それで何ていう名前なんですか?」
「僕の杖、エレメントロッドから名前を取って・・・エレちゃんだそうだ」
「エレちゃんですか、俺が言うのもなんですが・・・結構いい勝負ですね」
「僕はエレちゃんもわーさんも良い名前だと思うよ、特徴を捉えていると思うしさ?」
「・・・・・・師匠ならどうして俺から目を背けているんですか・・・しかも疑問形だし・・・」
エリンからも追及されるが師匠は「どちらも良い名前」と抑揚のない声で俺たちが問い詰めるのを諦めるまで続けていた。
師匠と契約している死神のエレちゃんは師匠によく似た性格だそうで、基本魔石の中でずっとゴロゴロしているらしい。
前に師匠がエレちゃんに魔石の中にずっといて楽しいのかと聞いたことがあったそうだ。
返答してきたエレちゃんの話を聞いた師匠はその内容をはじめて聞いたときは驚愕したと言っていた。
死神が住まいとして選ぶとその空間内を自由に改造できるらしい。
エレちゃんの場合はその空間に読み切れないほどの絵本、キングサイズのベッド、エアコンなどの各種電化製品など・・・それはもう一生外に出なくても、悠々自適に生活できる夢のような空間になっているとかなんとか・・・。
しかも・・・もし途中で気に食わなくなったとしても、すぐにまた空間内を自由に変更することもできると言っていた。
ということはだ・・・うちのわーさんも同じことをしているってことか・・・なんかちょっとだけ腹立ってきた。
能力としては微妙に違うかもしれないが、自分の理想の空間を作ることができるって意味ではレイヴンに似ているかもしれない、あれはあれですごかったしな。
師匠の話を聞きながらハーブティーを飲もうと口を当てカップを傾けるがもう空っぽのようで一滴、二滴と舌の上にポツリと落ちるだけだった。
ふたりのカップの中も覗き込むがどちらも空っぽ。
この辺で終わりにするには丁度良いタイミングだと思った、このあとオセロンで船に乗って新天地ガルード連合国に向かわないと行けない。
出航時間は正確には把握はしていない・・・が一日三便ほどしか出ていなかったはず、朝8時昼14時夜20時確かこんな感じだった気がする。
ただ・・・いま現在の時間が分からない・・・あっ、そういや前にエリンと一緒に買い物したときに買ったものがある。
目覚ましとして買っていた置き時計のことを思い出した俺は早速取り出そうとストレージを開くが・・・結局最後まで置時計を取り出すことはなかった。
ストレージに収容すると時間が停止する、置き時計もストレージに収容した時間で針が止まっていることに途中で気づいたからだった。
もう最終便に乗れたらそれでいいかなと思いつつ、俺は師匠とエリンふたりに聞こえるように声を出した。
「師匠、今日は本当にありがとうございました。そろそろ船の時刻が迫ってきているので、オセロンに向かおうと思います」
「もうそんな時間か。たしかガルード連合国行きの便は朝方と夕方の二便だったね・・・えっと今が14時だから・・・あー確かに2時間ほどしかないか」
師匠はどこを見るわけでもなく現時刻を断言している。
その謎能力も気になったが、それよりもガルード連合国行きが三便から二便に減ってることの方が衝撃だった。
「あのぅ師匠・・・ガルード連合国行きの船って三便じゃないんですか?」
「それは先月までの話さ・・・いまはダイヤ改正されて一日二便に減っているんだよ・・・まさか知らなかったのかい?」
「ふむ・・・・・・エリンここから先は休憩なしってことで・・・よろしく」
俺の言葉を聞いたエリンは「・・・そうね」と返事すると、テーブルに置かれている食器類を俺の前に集める。
その様子を見た師匠もエリンと同じように集めてくれた。
そして俺はそれらを対象にウォッシュを発動する。
綺麗になったことを確認すると休憩スペースとして用意したテーブルやイスなどを全てストレージに収容していくのであった。
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