第187話 俺、異世界でデスサイズを試すその5
早速俺は召喚した死神に自己紹介をする。
「俺の名前はアスティナって言うんだ、よろしくな!早速で悪いんだけど、あんたの鎌を貸してほしい!・・・っと、その前にあんた名前ってあるのか?毎回あんたや死神って呼ぶのは契約する身として、あまりいい気分ではないよな、あんたもそう思うだろ?」
「お嬢さん・・・失礼・・・アスティナはん。わいたちみな死神は名前なんてもの存在せえへん・・・せやから、アスティナはんの好きなように呼べばいい。それにしてもまだ契約すらしてへんのにほんまおもろい人やな」
死神には名前は存在しないのか・・・師匠は契約している死神に名前とか付けているのだろうか。
死神・・・リーパー、デス・・・骸骨だからスケルトン、ドクロ・・・ボーン・・・どれもいまいちピンとこないな。
ならばいっそのこと・・・あの死神の【わい】から取った名前にするか・・・どう考えても俺よりも年上そうだし・・・うん、これにしておくか。
我ながら実に安直な名前だとは思うがこれが俺が考える最良の選択だ。
「それじゃ、今からあんたのことをわーさんと呼ぶことにするよ!よろしくな、わーさん!!」
「わーさん・・・あれかいな、わいって言うてるのからそこから取ったやろ自分?・・・あひゃひゃひゃははは!!悪うないでなんか逆にしっくりくるわ。アスティナはん、ええ名前を付けてくれておおきにな!ほな、契約書用意するさかいにちょっと待っててな」
死神ことわーさんはそう言って自分が着ているローブに手を入れると上手いこと肋骨を避けながら、これでもないあれでもないと契約書探している。
探していたものが見つかったのかわーさんの動きがピタリと止まる。
そしてこれまたボッロボロのいまにも崩れそうな契約書を取り出すと俺が読めるように正面に向きを変えて手渡してくれた。
「アスティナはん、ごめんやでいま手元にある契約書これぐらしかあらへん・・・ボロボロで読めへんとこあったら、わいに言うてな。教えるさかいに」
わーさんは申し訳なさそうに両手を合わせてごめんとジェスチャーをしているのだが・・・肉がないため骨の乾いた音とわーさんのこってこての関西弁が合わさって何ともいえないシュールなコントにしか見えなかった。
ボッロボロの契約書はところどころ文字が崩れている箇所があったが、そういうときはわーさんに手伝ってもらった。
ただわーさんも契約をするのがかなり久々らしく、完全には覚えていないようで・・・ちょいちょい本当にそれで合っているのかと質問しながら読み終えた。
契約書の内容は俺が思っていた、甲が乙に・・・とかいうやつではなく、何というかもっと幼いものだった。
死神が泊まれるお家を用意してあげること。
危なくなったら魔法をやめること。
あまり難しい能力は言わないこと。
死神と仲良くすること。
自害しないこと。
契約書らしきものを読み終えたが・・・まだどこかに続きがあるんじゃないかと疑った俺は裏を見てはまた返して表を見てという動作を数回繰り返す。
しかし、どこを見てもそれ以外に文章らしきものは存在せず、あとは俺がサインをするために用意されている右下の署名欄しかなかった。
「・・・・・・なぁわーさん。契約内容って本当にこれだけなのか?実はこんなところに小さく書いてあるとかないよな?」
「そんなんあるかいな!わいら死神は信用されてなんぼの世界なんやで?アスティナはんよう考えてみ、わいらもう見た目ですでにマイナスからはじまってんねん!それやのにそんなあくどいことまでしてたら、誰も契約してくまへんやんか!!せやろ?」
「そっか・・・でもさ、わーさんこの契約書・・・契約というかただのお願いにしか俺には読めなくてさぁ。本当にこの五つを守るだけでいいんだよな?」
「せやで!!正味の話な・・・わいら死神って、ずぶらな性格でな働かんでいいんならそれが一番なんやわ・・・せやけど、そうも言ってられへんやんか。死神やから別になんも食べんでも死にはせぇへん・・・もうしんどるようなもんやしな・・・」
わーさんはそこで言いたくないことでもあるのか急に口を閉ざすと、おもむろに空を見上げる。
それから数秒経過したところで、先ほどの続きを話しだした。
「それでも契約するのには理由があんねん・・・わいら死神はな、生命力が枯渇すると堕ちてしまうねん・・・自我も失い魂を狩るだけの存在に。それが死神のほんまの仕事かもしれへんよ?せやけどさ・・・それってもう、わいやなくてなんかでしかないやんか!そんなんおもろないし、それに人様に多大な迷惑をかけてまうやん。せやからわいら死神は契約することで、生命力を分けてもらうことでそうならんようにしてるってわけやねん!!」
「ふむ・・・わーさんが言いたいことはよく分かったし、そんな状態に陥る可能性があるのならそれを止めるために考えついたこのルールは画期的でいいとは思う・・・思うが・・・けどさ、わーさんいい感じの話にもっていこうとしてたけどさ、実際のところただ食っちゃ寝したいだけだろ!!」
「・・・・・・アスティナはん・・・それ正解!!」
楽しそうに返事を返しながらダブルピースをしている骨の姿がそこにはあった。
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