第185話 俺、異世界でデスサイズを試すその3
師匠の鎌によって斬られたであろう丸太をこの目で近くで見るために急行する。
現場に近づいたときにやっと斬られてなくなっていた上半分がどうなっているのか知ることができた。
あの位置からは丁度この丸太が死角になっていて見えなかったが、少しだけ角度をつけて斬っていたらしく上半分が後ろにそのまま滑り落ちていた。
それでも丸太を斜めに斬ったからといってこんなに綺麗にスッと滑り落ちるなんてことがあるはずないのだが・・・丸太の断面を見たときにこうなるのは必然だと納得した。
その断面は大工さんがカンナで削りましたかと聞きたくなるほどにすべすべで滑らかな仕上がりになっていた。
だが・・・実際は師匠が遠くから鎌を一振りしただけ、ブォンという風切り音と素早く動く師匠の方に気を取られていて、丸太がこうなるまでの過程を見ていなかったが・・・これが師匠が言っていたデスサイズの能力というわけか。
丸太の状態をこの目で確認した俺はすぐに師匠がいる場所に走って戻る。
自分でも少しテンションが上がっているのに気づきながらもそれを抑えることもなく、師匠にデスサイズのことを質問する。
「ししょぉぉぉ!あの丸太どうやって斬ったんですか!俺もデスサイズが使えるようになったら、あれができるってことですよね、ね師匠!!」
「お・・・弟子君ちょっとだけ落ち着こうか」
「あっ・・・すいません・・・師匠」
「それでだね。分かりやすくするために実践したんだけど、デスサイズには能力を一つだけ付加することができる。これは使用者によって異なる、僕の場合は空間断絶って能力なんだけど、これは僕の視界に入ったものを対象に空間ごと切り裂く能力なのさ」
うん・・・俺の聞き間違いか、さっきの師匠の言葉だと見える範囲全てが射程距離ということになる。
そんな強力な攻撃ができるのならば・・・もう攻撃魔法はこれだけでいいのではないだろうか。
そんな発想が頭を過ったときだった・・・師匠はデスサイズを解除するとすぐに自身にキュアを唱える。
デスサイズを解除したことにより、元に戻ったその杖に重心を預けて呼吸を整えている師匠の姿を見たときにその発想を実行するのはやめようとすぐに決断した。
「師匠・・・このデスサイズという魔法は実体化している間だけ生命力を死神に支払うだけではないということですか?」
「さすが僕の弟子だね・・・ふぅ・・・その通りさ。デスサイズを使って直接戦うだけならまず死ぬことはない・・・支払う生命力も微々たるものだしね、それに使用者の生命力が一定値まで下がると強制的に解除される。・・・だけど、デスサイズの能力を使用する場合は普段なら強制解除されるはずのその一線を超えていたとしても発動することができる」
「やはりそうなのか・・・でも師匠。能力を使用するのに生命力を支払うといっても師匠はたった一振りしただけですよね・・・たったその一回の発動で師匠は肩で呼吸しないければいけないほど生命力を支払ったってことですよね・・・」
「僕の場合はこのデスサイズを最後の切り札として・・・一振りで終わらせるためにこの能力に決めた。その分、代償も大きいってことさ。デスサイズで君は何がしたいかをよく考えた上で能力を決めるんだよ、僕のように一撃で終わらせる能力を選んでもいいし、能力を付けずにそのまま武器として扱ってもいい、能力を付けなければ暴発することもないしさ」
師匠は色々と俺に助言を伝えるとキュアで回復したとはいえまだ完全には回復しきっていないのか、動きがロボットのようにカクツキながらエリンがいる休憩スペースに足を運ぶ。
移動途中に師匠は「それじゃ君のデスサイズ楽しみにしているよ!!」と声をかけてくれた。
俺は右左に揺れながら歩いていく師匠の後ろ姿に「ありがとうございました」と深々と頭を下げ感謝の言葉を述べる。
やっとの思いで休憩スペースたどり着いた師匠に対してエリンは各部位をちょんちょんと人差し指で突いているのが見えた。
その度に「痛い!痛い!!やめないか、エリン!!」と師匠は移動して離れたはずなのにこっちにも聞こえるほど大声で叫んでいた。
ふむ・・・師匠の場合はデスサイズを使用したことにより生命力を削ったことよりも・・・久々に全力で鎌を振ったことによって筋を痛めた方が辛そうだ・・・・・それにこのまま何もしなければ明日は筋肉痛も追加されることになるな。
そもそも師匠もリカバリー使えるんだから、エリンにいじられる前にこっちで回復しておけば良かったのでは・・・。
さてさて・・・師匠から教わったことも考慮してデスサイズに付加する能力を決めないといけない。
そこから俺は腕を組んで頭を左右揺らしながら見た目や能力について悩むのであった。
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