第184話 俺、異世界でデスサイズを試すその2
ひと通り鎌を振り回して手に馴染んだところで師匠は刃を上に向け、持ち手部分が下に来るように持つとそのまま勢いよく地面に向け振り下ろす。
見事に地面に刺さり固定されたことを確認した師匠はその鎌を手放し、その場に放置する。
せっかく呼ばれたのにぶっ刺されて放置されている鎌が少しだけ寂しそうに見えた。
そんなことなどお構いなしに師匠は早速デスサイズの能力について説明し始める。
「まず最初にデスサイズは他の魔法と違い発動したからといってすぐに効果があらわれるものじゃない。この魔法はあくまで僕達に鎌を貸しても良いと思っている死神を呼び出すだけの魔法、そのあとの交渉によっては鎌を貸してくれないこともある。例え借りれたとしても契約により、僕達の生命力を対価として支払い続けないといけないから、それで命を落とす人もいる。彼らからこの鎌を借りる代償がどれほどのものか良く理解した上で使用しないといけない・・・分かったかい、弟子君」
命を落とした人がいる・・・と言った瞬間の師匠は少し悲しそうな顔をしていた。
俺は「はい、師匠」と背筋を伸ばし大きく返事をすると、師匠は「よろしい」と笑顔で言葉を返してくれた。
「次に死神から借りる鎌だけど実体化するには何か媒体が必要になる、僕の場合はこの杖だね。それともう一つ契約した死神の住まいも用意して上げないといけないんだ。彼らは魔力を帯びているものを好んでそこに住むことが多い。今は鎌になってて見えないけど、杖の先端に付いている魔石が彼の住居になっているというわけさ」
「媒体・・・それに魔力を帯びているもの・・・」
鎌の媒体になるものか・・・武器として使用しているとなれば、この疾風のバトルブーツだけどこれを媒体した場合、どうなってしまうんだ・・・。
杖のように長物ならばまだ鎌の媒体として扱いやすいかもしれないが、そういう長物を持っていない装備していない場合どうすればいいのか師匠に聞いてみるとしよう。
「師匠一つ質問なのですが、俺のように長物を使わない魔法使いは媒体としてどういうものを選べば良いのでしょうか?」
「別に君がいつも履いているその靴でも肩からかけているポシェットでも何でもいいさ。それに僕は考えるのが面倒くさかったから彼が持っていた鎌をそのまま真似たけど、死神の鎌というもの自体がそもそもただの概念だから自分が考えた見た目にすることも可能なのさ」
師匠の話を聞く限りだと死神の鎌という名称ではあるが、別に鎌をモチーフにする必要は一切ないということか。
そうなると話はかなり変わってくる、自分が身につけているもの全てが選択肢に入る。
こっちはまだ選ぶのに時間がかかりそうだが、契約した死神の住まいとなる場所はもう決めてある。
それは俺が首にかけてあるこのペンダントだ、これには強大な魔力が込められている・・・このルビーならば問題ないはずだ。
師匠は死神の住まいとなる魔石と媒体をあの杖一つで済ませている。
俺も師匠のようにこのペンダントに全て集約しておくべきか・・・それとも媒体と住処を別けるべきか・・・。
そんな中、師匠自身で地面にぶっ刺したデスサイズを両手で必死に息を切らしながら引き抜いていた。
やっとの思いで鎌を引き抜いた師匠はペンダントの握り締めどちらにすべきか悩んでいる俺にどういう用途で使うのかを質問をする。
「君はこのデスサイズでなにがしたいんだい?」
「師匠・・・質問の意味がよく分からないのですが・・・」
「言葉が足りなかったね・・・えっとさ、デスサイズの形は使用者が考えたものになると言ったのは覚えているかい。あっ、弟子君ちょっと離れていた方が良い。・・・・・・デスサイズにはもう一つある能力があるのさ、それは・・・」
師匠はそう言うとおもむろに鎌が自分の背中に当たりそうになるぐらい身体をねじり水平に構える。
そして・・・コテージの隣に伐採される前は巨木だったことを思わせる高さ60センチほどの丸太目掛けて一気に振り抜く。
先程師匠の鎌捌きを見ていたこともあり、身体の一部のように扱っていたとはいえ・・・あの動きがとろい師匠とは思えない速さで鎌を振り抜いていた。
振った鎌が当たらないように師匠から2メートルほど離れていたにもかかわらず風圧とブォンという風切り音が聞こえる。
師匠はまた鎌を地面に突き刺すといきなり鎌を振り回した理由が分からず、軽くパニックになっている俺に丸太を指差して話しかける。
「弟子君、そこの丸太を見てみると良いさ!!」
師匠に言われるがまま俺は丸太に目を向ける。
丸太がある場所と俺と師匠がいる場所は距離として4メートル以上離れている・・・それなのに丸太は半分ほどの高さになっていた。
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