第183話 俺、異世界でデスサイズを試すその1
エリンの報告しないで揺らしによって、グロッキー状態になっていた師匠だったがリカバリーをかけたことによりここまでルンルン気分で案内していたときの師匠に戻っていた。
「あー、弟子君助かったよ・・・さすがに吐き気と眩暈で気持ち悪すぎて唱える余裕が無くてさ」
「エリンのあれを受けて三半規管がやられない人なんていないかと・・・それよりもリカバリーがちゃんと効いて良かったです」
「それはそうだね。僕もだけど・・・君もこっち側はあまりというかほぼ鍛えていないからやられそうになったらテレポートでもして逃げるんだよ・・・君とエリン、システィの三人だと君しか魔法が使えないんだからね・・・」
「あ~、分かりました師匠・・・」
師匠からの実体験込みの注意喚起を受けた俺は師匠の言葉に頷きながらも視線だけはエリンに向けていた・・・それも自分でもびっくりするほど冷めた冷ややかな目で・・・。
師匠も途中から俺と同じような目でエリンに視線を向けている。
さっきそんな感じでエリンをいじったから、あんな惨事になったというのに俺と師匠はまた同じことを繰り返している・・・分かっている、分かっているがやめられないというやつだな・・・俺も師匠もエリンのこととなるとなぜにこれほど息が合うのか。
ふたりに見つめられていることに気づいたエリンは両手で顔を隠すと樹海に響き渡るのではないかと思えるほどの大声を出した。
「もうあんなことしないわよ・・・だ・か・ら、ふたりともその目で見るのやめてよぉぉぉ!!わたしが悪うございましたぁぁぁぁぁ!!」
さて・・・いつもの一連の流れも済んだことだし、そろそろデスサイズを試してみないとな。
デスサイズの練習をしている間、エリンはただ見ているだけでは暇だろうし機嫌取りも兼ねて、色々と取り出しておくか。
空間の端っこに移動するとストレージからテーブル、イスを人数分取り出す。
次に取り出したテーブルに水筒やコップ、皿などといった食器類を置いていき、最後にストレージに収容しているお菓子を適当に選び空いた皿にのせる。
コテージが目の前にあるというのにわざわざ野外に休憩スペースを用意するのもどうかとは思うが、師匠もエリンもコテージに自ら入ろうとしない時点でコテージに入るのにはリーズランドさんの許可とかがいるのかもしれない。
エリンに向かって俺は手招きをしてこっちに来るように誘う・・・・・・前にエリンはもうテーブルの前に立っていた。
そして・・・俺が食べていいと許可するのを待てと言われている犬のようにジッとこちらを見つめてその時を待っている。
「えっと・・・俺と師匠は向こうで魔法の練習をするから、それが終わるまでここでお菓子でも食べて待っててくれ」
「えぇ・・・分かったわ!!それでこれ全部食べてもいいの?いいの?」
「あー、大人しく待つと約束するなら全部食べてもいいぞ!!だけど、このあと昼食の弁当もあるんだから、食べ過ぎて肝心の弁当が食えないとかないようにしろよ?」
「分かっているわよ!!・・・・・・いっただきまーす!!」
エリンは秒でそう答えると左右の手でそれぞれ別のお菓子を掴むと美味しそうに食べ始めるのであった。
黙々と食べ続けるエリンをその場に残して、俺は師匠がいる場所に駆け足で移動する。
師匠の近くまで移動したところで俺は深々と頭を下げる。
「師匠、よろしくお願いします!!」
「デスサイズは他の魔法と違ってちょっと特殊だからさ、まずは僕がデスサイズを唱えるよ」
「はい、師匠!!」
最上級魔法ということもあり、やはりこちらもコンシールメントと同じで詠唱が必要なようだ。
何を言っているのかは前回同様ほぼ理解できないが、詠唱している時の師匠はカッコいい・・・。
詠唱が終わるにつれて師匠のワンピースように真っ黒いもやのようなものが杖を徐々に隠していく・・・そしてついには杖が完全に見なくなる。
そして・・・詠唱が完了すると師匠は「デスサイズ・・・」と呟く。
その瞬間、もやが急に晴れて覆い隠されていた杖が姿を現したのだが・・・明らかに見た目が変わっていた。
師匠がいま手に持っているものはどう見ても鎌・・・それも俺が思い描いたとおりの死神と言えばこれだよねっていうものだ。
全体としては黒い印象だが刃の部分だけは正反対で白銀を思わせるほど綺麗な色をしていた。
さっきまで杖だったものを師匠は慣れた手つきでクルクルと回したり、鎌を引いて引き裂く動作などを確認していた。
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