第178話 俺、異世界で師匠の本屋を思い浮かべる
ミストに戻るためデッキからテレポートをドローする。
右手にカードを持った状態で俺はみんなにこのままエリンとガルード連合国に向かうことを告げる。
「それじゃみんなちょっくら行ってくるわ、システィみんなのこと頼んだぞ!!」
俺に続きエリンもみんなにそれぞれ別れを告げている。
アルト一家はそれぞれ手を振ったり、声をかけたりと一人一人違う方法で別れの挨拶をする。
システィは「お任せください、お嬢様」とキリっと澄んだ声で返答してくれているのだが、今度は正座をした状態でライユちゃんを膝に乗せていて何とも締まらない感じがしたが、この感じ俺は嫌いではないこの意見にはエリンも同じようで俺と同じようにニコニコしながらその様子を見ている。
彼女の膝に座っているライユちゃんはテレポートの発動準備をする俺をつぶらな瞳でずっとこっちの様子を窺っている。
そのことに気づいた俺はちょこんとぬいぐるみのように座っているライユちゃんに問いかける。
「うん、ライユちゃんどうした?」
「うんとね・・・アスティナお姉ちゃん」
めずらしくモジモジしているライユちゃんの様子が気になった俺は彼女の目線に合わせるため中腰になる。
「ライユちゃん、本当にどうした?」
「えっとね・・・アスティナお姉ちゃん・・・うん!!」
何か決意を固めたライユちゃんは座った状態で両手をばっと広げる。
ジッとこっちを見ながら両手を広げている彼女の行動を理解するのに少し時間かかった。
ふむ・・・この感じどこかで見たことがあるぞ・・・えっと、何だっけ・・・・・・あれだ友達の子供が抱っこして欲しいときにやってたあの動きか。
親友の顔はあれからずっと思い出せないままだが一緒につるんで遊んでいたやつらの顔はまだ思い出せるな・・・。
つうか・・・半数以上が結婚して子供とかいたんだっけか・・・ふっ・・・。
前の身体だと抱っこすることもできるのだが・・・今のアスティナの身体では持ち上げることはできないので、ギュ~ッと全力で抱きしめる。
それから両者無言のままハグすること30秒ほどが経過すると俺はライユちゃんから離れる。
俺とのハグが終わると顔が少しテカテカし始めたライユちゃんは次にエリンの方を見てまた同じ行動をする。
今度はエリンがライユちゃんをフワッと軽く抱きしめる・・・エリンが全力で抱き着くと少女が複雑骨折しかねない。
そしてまた同じように30秒ほどでハグが終了する。
俺とエリンのふたり分のハグを受けたライユちゃんの顔はもうテッカテカになっている。
師匠もそうだったがこの世界の女児は満足すると顔があーなってしまう能力でも保有しているのだろうか・・・・・・一応師匠も見た目だけは女児だから。
・・・・・・それにしても俺はなぜこんな言い訳を述べているのだろうか。
ライユちゃんとお別れを済ませた俺たちは一緒にテレポートでミストに瞬間移動するためエリンと手をつなぐ。
俺は目的地として師匠の本屋を思い浮かべる。
禍々しい外見、乱雑に配置されている本棚やとりあえずシリーズで揃えましたというだけの巻数もバラバラに置かれている本。
本棚に入りきらなかった本はそこら辺に積み重ねてあり、足の踏み場もない。
全く本を売る気がない店主・・・そのくせ売れたら売れたですっげぇ喜ぶんだよな、あの人・・・。
テレポートをするためとはいえ師匠の本屋を第三者の視点から思い出しているがマジでロクな場所じゃねぇな・・・それに比べてレイヴンの本屋はマジで広くて整然としていて、本屋というよりも図書館と呼ぶに相応しい佇まいだったな・・・まぁあっちも本を売る気が無かったけどさ・・・。
途中レイヴンの本屋を思い浮かべてしまった俺は目を閉じて頭を左右に振り、頭を真っ白な状態に戻す。
そして・・・しっかりと師匠の本屋を再度思い浮かべ右手に持っているテレポートを発動した。
「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら
是非ともブックマーク、評価よろしくお願いいたします。




