第176話 俺、異世界で王国の後ろ盾を得る
役に立たないエリンを横目にアルトは別大陸に行くためのルールについて教えてくれた。
個人を証明するもの、これは冒険者ギルドカードで問題ないようだ。
特に俺たちは全員揃ってSSS級認定を受けているため、場所によってはVIP待遇されるとかなんとか・・・。
また陸地でつながっているといって無断で大陸を渡ることはできない。
それは他の大陸に移動するということは国境を越えるということ・・・なので大陸を渡る場合には数か所用意されている正規ルートを通る必要がある。
五大陸の中心にあるアルトグラム王国から一番行きやすい国は南西の獣人族が多く住んでいる【ガルード連合国】らしい。
北西や北東の大陸に行こうにも王都から北側は山脈アルレインがそびえ立っており、陸地で行くことは不可能となっている。
北に行くのが難しいのは分かったがそれなら別に南東でもいいんじゃないかと思うのだが、南東の【エスティニア帝国】は警備が非常に厳しく、観光をしているだけでも息が詰まるらしい・・・そういうこともあって、初めての旅でそこに向かうのはお勧めできないらしい。
獣人族は時代劇に出てくるような長屋や城といった日本をモチーフにしている建設物、寿司やうどん・・・俺がひと口食べて感動した大福といった和菓子が有名。
あのとき冒険者ギルドで大量にストレージに収容したお菓子類はまだ多少残っていたりする。
特に大福や羊羹、どら焼きなどの日本食・・・いやこの世界では獣人食というのか・・・それがミストも王都でも売っている店が少なくて補充することがあまりできず、ご褒美として食べるようにしているほど大事に食している。
・・・・・・ガルード連合国に行ったらまずはスイーツを大量に仕入れよう。
ガルード連合国に行く方法としては陸路で行くか、船に乗って海路で行くかの二択だという。
この世界に来てまだ一度も海を見ていない俺は船で南西の大陸に渡る方を選ぶ、エリンも海を見たことが無いらしくすぐに賛同していた。
船は冒険者の町ミストから南に下って行くと貿易港町オセロンという町から乗ることができるそうだ。
思っていたよりも大陸に渡るのはそれほど難易度が高いものでもないらしい・・・セキュリティ結構ザルな気がする。
もちろん各入国エリアにはもれなくあの水晶があちこちに設置されているからこそ、この程度のセキュリティで問題ないそうだ。
あの水晶が設置されているということは・・・システィ大陸移動できなくないか・・・これ。
そのことが気になった俺はアルトにどう対応すればいいのか質問をする。
「身分証明や移動方法は分かったけどさ・・・またあの水晶があるんだよな、えっとそれはどうすればいい?」
「それはもちろん・・・ガルード連合国に着いてから、宿泊する部屋で呼び出せば何も問題ないではないか」
「それ不法入国とか言うんじゃ・・・」
「はて・・・術者が正規で入国しておるから、あとでシスティを召喚したところで何も問題もない。それにもしもの話、水晶が反応したとしてもSSS級が刻まれたカードを相手に見せれば良い。大体はそれで何とかなるはずだ」
「ふむ・・・それで問題なく歩き回れるのなら別に何でもいいけどさ」
俺がため息まじりにそう答えるとアルトは「そんなに不安ならこれを渡しておこう」と無造作に小指にはめてあった指輪を外すと俺にそのまま手渡してきた。
俺の目から見るとその指輪は装飾もなく宝石が付いているという訳でもない至って普通の指輪だった。
しかし手に取ってよく見てみると、文字のような模様が刻まれている。
ジッと目を凝らしてみると・・・その模様はアルトグラムと刻まれているらしい。
文字も確認したところで最後に映し出されている鑑定結果に視線を移す・・・そこにはこう書かれていた。
アルト王家刻印指輪・・・アルトグラム王国がその者の身分を保証することを証明する指輪。素材は全てアダマンタイト。
つまり俺たちはこの瞬間からアルトグラム王国という強大な後ろ盾を手にしたということか・・・。
まだエリンはこの重大さに気づいていたらしく、俺の手から指輪を摘まんで取ると色々な角度で指輪を興味無さそうに見ている。
なぁ相棒、お前がつまらなさそうに今持ってる指輪だけどさ・・・その指輪が持っている権力もだけど、その指輪の素材あのアダマンタイトなんだぜ・・・。
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