第166話 俺、異世界でシスティに召喚の許可を与える
それからシスティの召喚による大陸移動について謁見の間で色々と試してみた。
まず俺の魔力を込めた魔石を数メートル離れた位置に置いてそれを目印に召喚できるか試してみる。
結果としては大失敗だった・・・何度試しても俺の近くにしか呼び出せない。
次に貰ったペンダントを俺から数メートル離れた位置に置いて、俺とペンダントをそれぞれの位置に召喚できるか試みる。
結果としては大成功だった。
ラグというものもほぼなく距離が離れていたとしてもその場所に召喚されるタイミングは同じ。
ただ単に俺というかアスティナの魔力が込められているだけではどうやら目印にはならないらしい。
これについては俺もシスティも首を傾げるだけで理由は分からなかった。
ただ・・・毎日朝と晩に俺は【アスティナの従者~システィ~】と叫ばないといけないのが少々面倒くさいかもしれん。
そして・・・俺はあることを試してることにした。
予想外の結果がそこで生まれてしまった・・・良かったのか悪かったのかは別として・・・。
この短時間の間にシスティの能力が向上したのか・・・または俺もシスティもまだ知らない能力が隠されていたのかもしれない。
それは・・・俺が彼女に召喚許可を出せば、自分の好きなタイミングで召喚可能となるものであった。
そのことに気づいてしまったシスティは満面の笑みをこぼしている。
「お嬢様・・・これで万事解決ですね♪」
「おぅ・・・そうだな。これで俺も安心して旅に出れるよ・・・」
あの彼女の笑顔を見てしまうと・・・許可を取り消すことなど俺にはできなかった。
エリンは特にそういった素振りもなく普通に喜んでいる。
ふたりが喜んでいることだし・・・まぁこれでいいとしよう。
それに俺がもし口を塞がれて声が出せない状況になったとき、気絶や意識不明に陥ってた場合、システィを呼び出すことができない・・・。
だが、彼女自身で好き勝手こっちに来ることができるのならばそういった場合に陥ったとしても助けてもらえる。
そういった意味でもやっぱりこれで良かったのだろう。
これからは出来るだけ早く起きるようにしよう・・・。
そういや・・・システィから貰ったこのペンダントの鑑定結果にも驚いた。
ブラッシェント家のペンダント、ブラッシェント家の代々受け継がれているルビーのペンダント。
ブラッシェント家というのがどういうお家柄だったのかやアスティナとどういう関係があるのかまでは分からないが、それよりもこのペンダントのレアリティが俺のドレスやエリンの弓と同じ神級だった。
それほどまでにこのブラッシェントという一族がヤバい地位にいたってことが分かる。
それにアルトグラム王国の国王ですら、ファーストネームのみでセカンドネームが存在しないのに・・・このペンダントは代々ブラッシェント家が受け継いできたものだとテキストに書かれている。
このペンダントに込められている魔力がアスティナの魔力に近いこと、アスティナの護衛兼従者であるシスティが持っていたことを考えると・・・ブラッシェント家とは・・・。
ひとり考え込んでいると急にエリンの顔がドアップに見えた。
俺の知らないうちにやつはちょっとずつ移動して下から顔を覗き込んできていた。
「なんだ!!焦ったわ・・・」
「アスティナまた眉間にしわが寄っていたわよ!あなた考え込むとすぐそうなるのよね・・・せっかくの可愛い顔が台無しだわ!!」
そう言ってエリンは俺の眉間を両手でぐにぐにとほぐし始める。
あー、それと冒険者カードだがあれとペンダント両方を首からかけると胸元がごちゃついたので、冒険者カードはデッキケースにいれることにした。
このデッキケースの最大枚数容量は50枚ではあるが・・・実はこのデッキケースには一つ隠し要素というか、俺が『クインテット・ワールド』プレイヤーだった名残としてそっちに合わせた仕様にしてもらっていた。
どういうことかと言うと『クインテット・ワールド』はメインデッキ50枚とリーダーカード1枚を使って対戦するカードゲーム・・・つまり1枚だけまだ入れられる余裕があるのだ。
あのとき俺の訳の分からない注文を聞いてくれたアッシュ、職人さん本当にありがとう。
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