第160話 俺、異世界で今後の動き方について模索する
俺たちはいま謁見の間の扉を閉めて、絨毯に円を描くように座りシスティが話してくれた内容について語り合っている。
円の中心には俺がストレージから取り出したノートやペンといった文房具が乱雑に置かれている。
そこから俺とカークランドは適当に手に取って、俺たちの上の存在である七つの大罪が起こすであろう世界大戦を止めるべく、これからすべき行動について各々の意見をメモしていく。
エリンはとりあえずまずは各ギルドマスターに報告するべきだとキリっとした澄んだ声で発言しているが、彼女の右手は実に楽しそうにノートに落書きをしている。
システィはどこから取り出したか分からないが、紅茶を淹れてくれている・・・いやマジでどこからその紅茶セット出してきたの・・・。
カークランドはいきなりそんなことを大々的に伝えたところで、パニックを起こすだけで良いことなど一つもない。
まずはここにいる儂らだけで密かに行動して情報を収集することが先決だと進言している。
これに関しては俺もそう思っている。
ただ単にパニックになるだけではなく、どこにやつらが操る駒がいるか分からない現状迂闊に外に情報を漏らすべきではない。
アルトは五大陸をそれぞれ治めている代表に協力を仰ぐのはどうかと言っているが・・・これもやめておくべきかもしれない。
もしかしたら・・・その代表がそもそも操られている可能性がある。
その場合・・・俺たちがやろうとしている作戦が一瞬で無に帰す。
それから数十分の間、紅茶を飲みつつあ~でもないこ~でもないと各々の意見を交わす。
俺はひと息つくため・・・システィが淹れなおしてくれた紅茶をふーっと息を吹きかけて冷ましてはカップに口をつけて、少し飲んではまたふーっと息を吹きかける。
ふぅ・・・みんなの意見をまとめるとやっぱこれしか方法がなさそうなんだよな、正直なところ俺とシスティ、そしてエリンは操られていないと断言はできるが・・・アルト、カークランドはまだそうだとは言い切れないところもある。
エリンが操られていない理由としてはまず俺の【眷属の魔眼】の効果がちゃんと彼女に適用されたことだ。
レクメングルのように操られている場合俺の能力は適用されず不発に終わる。
アルトやカークランドにも試してみれば済むのだが・・・あと23時間ほど待たないと再発動できないんだよな・・・。
まぁこれは次回会ったときにでも彼らに許可を取って試してみることにしよう、さすがに挨拶するように気軽に使っていいものではないしな。
さて・・・それじゃ俺なりに最良だと思う方法を彼らに提示することにしますか。
俺は空になったカップを絨毯に置くと、対面に座っているアルトに話しかける。
「アルト、あのさぁみんなの意見を聞いて思ったことがあるんだけど・・・」
「ふむ・・・申してみよ」
「えっとさ、俺たち3人の世界旅行代を負担する気はあるか?」
俺は不敵な笑みを浮かべながらアルトにそう尋ねる。
アルトは少し沈黙したあと・・・俺の思惑を理解したのか、豪快に笑いながらも世界旅行の費用を負担すると快諾してくれた。
「・・・・・・なるほど・・・あっはっはっはっは!!だが、できるだけ穏便な方法を選ぶのだぞ。では・・・余の名にかけてここに誓おう、費用を全て負担すると!!」
アルトの隣に座っているカークランドも賛同してくれたようで首を上下に動かして頷いている。
ただ・・・こちらの場合は賛同してくれたことよりも、はしゃぎすぎて首を痛めるなよ・・・という心配の方が強かった。
国のお偉いさんふたりから承諾されたことで俺がこれからやらないといけないこと・・・やるべきこと・・・それは七つの大罪のゲームをぶっ壊す。
やつらのゲームはザックリと説明すると洗脳できる駒を探し出して、それを軸に陣営を強化していき、また洗脳できる駒を探して・・・を繰り返して、強化期間が終わると、最後に陣営同士で戦い勝者を決める。
ならば・・・陣営を強化するために必要な洗脳できる駒を先に見つけ出して、やつらが手を出せないようにしてしまえばいい。
方法については追々考えよう・・・多分・・・やつに勧誘されている人物の近くにいれば自然と声が聞こえるはず。
それにやつは最後にこう言っていた。
新しい代表を探しに行くか。
ということはつまりやつらが直接操れるのは代表に指定したひとり・・・サブ枠的なものもある可能性も捨てきれないが・・・そうだとしてもそれほど数がいるとは思えない。
もし余分にいたとするのなら、代表の駒が一個使えなくなっただけですぐに新規を探そうとはしないはず・・・。
現状では他に打開策も見つけることができない以上・・・こうやってやつらの邪魔をしつつ、情報を集めていくしかない。
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