第15話 俺、異世界で俺を観る
あれから30分ほど風呂を堪能した俺はいま脱衣所いる。そして、今度は彼女に髪を乾かしてもらっている最中だ。普通にドライヤーまであることにもう驚くこともなく受け入れている俺がいる。
「アスティナもう少しで終わるからね~」
「あいよー、それにしても髪が長いとこんなに乾くのにも時間がかかるのか、なぁエリン今度俺の髪切ってくれよ」
「はぁ・・・、こんなに綺麗な銀色の髪を切るなんてありえない!」
「わたしが全部やってあげるから、髪を切るのは禁止。い・い・わ・ね!!」
「おっ・・・おう、それじゃーエリンお願いするわ・・・」
そう返事をすると、彼女は髪を乾かす作業に戻ってくれた。ただあのとき彼女が止めてくれていなければ、俺は一生自分を許せなかったもしれない。
「はい、終わったわよ」
「あー、さっぱりした。ありがとうなエリン」
「どういたしまして、あっ!アスティナあなたのドレス、そろそろクリーニングが終わっているかもしれないわ」
「そっか、それならドレスを取りにいってから昼食にしようぜ」
宿屋に併設してあるクリーニング店でドレスを受け取るとそのまま一度部屋に戻ることにした。ドレスを受け取ったとき鑑定(カード)と唱えていないのに例の画面が表示されていた。一度も鑑定したことがないモノに対しては強制発動するように変更されているようだった。
真っ赤なドレスのテキストにはHP自動回復、MP自動回復、自動修復と書かれていた。樹海を迷子になっていたときは自動回復も自動修復どちらも発動していた気配は一切なかった。
どうやらこのドレスは俺のランクに合わせて同じように成長していくドレスのようだ。あのときオークの大群を倒せたから、あの状況でも死なずにすんだのかもしれない。
「あんたがくれたドレスに文句をいって悪かった・・・。最高のドレスだよ、これは・・・」
「ねぇアスティナそのドレス本当に着るの・・・。あとの方がいいんじゃない、せっかくクリーニングしたのに汚れちゃうよ?」
「いいの、いいの!これを着ないとアスティナじゃないし、それにこの服には自動で汚れを取ってくれる機能があるみたいなんだ」
「そうなの?アスティナあなたほんとにどっかのお嬢様だったんじゃない?そんなの普通持ってないわよ」
「やっぱりそういうもんなのか・・・」
俺は会話をしつつ、手に持っているドレスに着替えようとしたとき、また彼女に止められた。そして、今日の風呂でこのあとの展開をすぐに理解した。
「それじゃー、アスティナ万歳してね。せっかくだし髪型も変えてみない?」
「あ・・・、ああ、了解。髪型については俺はよく分からないから、任せるよ」
「そぉ?うーん、それじゃどうしようかなぁ・・・、ご飯を食べにいくんだし、シニヨンにするわね。アスティナ出来るまでちょっと目を閉じててね。目を開けたらダメよ」
「了解、出来たら教えてくれよな!」
楽しそうに彼女は俺の髪型を作ってくれている。俺はそのシニヨンという髪型がどんなものなのかドキドキしながら出来るのを待っていた。
「はい、出来たわ。アスティナもう目を開けてもいいわよ!」
「わかった・・・、目を開けるぞ」
「おっ、おお!俺めっちゃ可愛いじゃないか!ほぉほぉ、これはあれか髪を団子状にまとめているのか!!」
「どうよ!わたしに任せてよかったでしょ?」
「俺・・・尊い、マジでずーと見ていられるわ・・・、エリン本当に!本当にありがとうな!!」
俺は初めて生アスティナをこの眼で見たのだ。ステータスでも見ることは出来るがそれはあくまでカードのイラストである。彼女に止められなければ、これで1日が終わっていたかもしれないぐらい自分を見続けていただろう。
「はいはい、あなたが可愛いのはわたしが一番知ってるわ。それよりもご飯を食べに行くんでしょ?」
「はっ!そうだった、アスティナなんて怖ろしい子・・・さすがは俺の推し!!」
本来の目的を思い出した俺は昼飯を食べにいくのであった。
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