第157話 俺、異世界で謁見の間を掃除する
結果としてウォッシュ・・・170枚で謁見の間を掃除することができた。
その間、ずっとアルトは両手で皿を作り、一歩も動くことなく静止し続けてくれた。
それとシスティによって、あちこちの部位が砕け戦闘不能になっている兵士の姿はいつの間にか謁見の間から消えていた。
「おっし、こんな感じでいいのではないだろうか。なぁアルトはどう思う?」
「ふむふむ・・・絨毯も壁もだが臭いまでも綺麗に取れておるな!助かったぞ、アスティナ。あれを人力でここまで綺麗にしようとしたら、どれほどの労力がかかるか計り知れなかったからな・・・」
「気にするな、こっちも汚してしまった責任はあったしな・・・まぁお金が貰えるのであれば、これぐらい安いもんだぜ!!」
そう言って俺は笑いながらアルトの肩を叩く。
アルトは嫌がる様子もなく、それを受け入れている。
俺はアルトの肩を叩くのをやめ、スッと手を降ろすと神妙な面持ちで彼に尋ねる。
「それで・・・とりあえずいまできることは全て終わったが・・・・・・アルト、今回起きたことをどう説明する気なんだ?」
「正直なところ・・・余もどう臣下や国民に説明するべきか悩んでおる。余自身もまだこの状況に混乱しておるしな・・・・・・それに人を見下すことはあっても国のためにあれほど尽力しておった・・・あやつがレクメングルが余を手にかけようとしたことがな・・・・・・」
アルトは自分自身に起こったことがまだ受け入れることができずにいる。
今回起こった謁見の間での出来事はただ単にレクメングルが暴走して反乱を起こしたという簡単な話ではない。
実際にレクメングルが行動を起こしたのは事実ではある・・・あるが、レクメングルの弱い部分につけこんで操ったやつがいる。
レクメングルがやつの名前を呼んでいたよな・・・えっと、確か・・・プライド様だったか。
プライドか、その意味は傲慢・・・レクメングル本人も傲慢というのに相応しい性格の持ち主だということは今回直接見て聞いたことにより確信した・・・もしかしたら、裏で操っていたプライド様ってのはその名の通り傲慢な人物しか操ることができないのか。
アルトにレクメングルが溶ける前に口に出していたやつのことについて話す。
「あー、そのことで一つ気になったことがあってな・・・レクメングルがゼリーになる前に言ってたこと覚えてるか?あれよ、プライド様ってやつ」
「そういえばそんなことも言っておったな・・・それがどうかしたのか」
「そのプライド様ってのが、レクメングルを洗脳して今回の騒動を起こした張本人だと俺は思っている」
「ふむ・・・そやつが元凶だとして・・・なぜレクメングルだったのだ?それに一部の兵士も同じように操られておったな」
「それはプライドって言葉がその答えなのかもしれない。プライドの意味は傲慢・・・つまり、その名の通り傲慢な人物しか洗脳できないのかもしれない・・・まぁこれは俺が勝手にそう思っているだけだが、強ち間違ってはいないと思う」
「・・・・・・だからこそ・・・レクメングルが目をつけられたと言う事か・・・そうか、確かにあやつは傲慢であったかもしれんな」
アルトはそう独り言を呟くように小声で口に出してはレクメングルのことを思い出しているのか天井を見上げている。
掃除を開始する少し前・・・謁見の間に入っていったアスティナを後ろで見守るエリンとカークランド・・・そしてひっそりとついて行くシスティ。
エリンとカークランドは耳に手を当て、謁見の間に入っていったアスティナと大人しくなったアルトの様子を探っている。
システィはというと・・・アスティナとアルトがいる謁見の間に何事もなく普通に入っていく。
耳を澄まして内部にいるふたりの様子を確認するが・・・システィに挨拶をしている気配が一切ない。
それから数秒が経過したときに急に背後でドンッ!っとなにかを投げ捨てる音にエリンとカークランドは驚きつつ・・・呼吸を合わせて同時に振り返る。
そこでふたりが見たものは・・・関節が逆方向に向いて気絶している兵士の姿であった。
そこから一秒経過するごとにひとりずつどんどん投げ捨てられていく兵士をただただ震えながら見ることしかできないふたり。
そして・・・最後の兵士が投げ捨てられたところでエリンとカークランドは顔を見合わせ恐怖を分かち合おうと会話する。
「のぉ・・・エリン女史・・・これはシスティ女史が謁見の間から連れてきてくれたのかの?」
「そぅ・・・みたいです」
「ほぉ、そうか。まぁ誰ひとり死んでおらんし・・・これはこれでヨシとするかのぉ・・・ふぉっふぉっふぉ」
宰相であるカークランドはそう言ってどこか遠い目をしていた。
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