第152話 俺、異世界で王城の中でシスティを召喚する
レクメングルの命令に従い・・・虚ろな目をした兵士がアルトとカークランドに一斉に襲い掛かる。
その刹那・・・俺は彼らを守るために彼女を召喚する。
もう今更隠す必要もない・・・それに彼らは俺たちのことを公にすることもないだろう。
それにこの今の状況をこの場にいる俺たち以外の第三者からだと・・・国王に牙を剥いて襲い掛かる兵士とそれを命令する大臣・・・それに対して国王を守るために彼らと戦う者・・・さて、どちらが善で・・・どちらが悪に彼らの目には映るんだろうか。
そんなことわざわざ言わなくても考えなくても明白だ・・・国王を守護している方が善に見えるに決まっている。
まぁ呼び出した瞬間、警報というかアラームが鳴り響くだろう・・・だが、いまの状況ならば大臣側のやつらが原因で発生したと思わせることができる。
「来てくれ!アスティナの従者システィィィィ!!」
俺の叫びと共に彼女が呼び出される。
彼女が召喚されると同時にけたたましくアラームが鳴り響く。
召喚された彼女はアルトを守るように俺が伝える前に彼の元に移動し、そして右手をだらんと地面に向け・・・呟く。
「来なさい・・・フルンティング」
絨毯から大剣がズズズズと彼女の言葉に従うように徐々に姿を現す。
出現した大剣の右手で握り、天井に向け腕を伸ばしてグルンと一回転すると大臣に目を向ける・・・それはもう目で殺すという言葉が実に似合うほどに・・・殺意がこもっていた。
生物として圧倒的な恐怖を感じたのか・・・傍から見ても狂いおかしくなったおっさんだったはずのレクメングルが一瞬正気を取り戻したように見えたが、すぐにまた狂気に魅入られた。
何度見てもシスティが使用するフルンティングと呼ばれる漆黒の大剣は恐ろしいというよりも見惚れてしまう。
俺の背後にいるエリンは初めて見るフルンティングに些か興奮している様子。
システィはこっちに振り向いて頭を下げる。
「ただいま戻りました・・・お嬢様」
「あぁ・・・おかえり、システィ。いきなりで悪いんだが、そこのふたりを護衛してくれないか。というか俺が言う前からもうそっちに移動してるな・・・」
「そこの生物がお嬢様に殺意を向けていましたので・・・それで判断いたしました。よろしければ全員処分いたしますが?」
「・・・・・・いや、どうやら操られている可能性があるから殺さずにおいてくれると助かる」
「かしこまりました、お嬢様。それでは対象の無力化を開始いたします」
システィはその言葉を告げると目にも留まらぬ速さで兵士を無力化していく・・・その度にバキィ!ボギィ!・・・ゴキィ!!と人体の一部が砕ける音が聞こえるが・・・まぁ俺の聞き間違いだろうな・・・うん、きっとそうだ、そうに違いない。
耳を塞ぎしゃがみ込んでいる相棒の姿が見えた気がしたが・・・それも気のせいだな。
ものの数秒で兵士を全滅させたシスティは残るはお前だけと言わんばかりにレクメングルにフルンティングの切っ先を向ける。
兵士が全滅したことにより、予定が大幅に狂ったレクメングルはその場で助けを求め・・・いや、許しを求めて叫び続けている。
「あなた様の仰せのままに遂行いたしましたが・・・予想外の出来事が起こり、やつらを始末することができませんでした・・・どうか・・・どうか・・・惨めな私を許してください・・・私に救いを・・・・・・あなた様が望むのであれば、私の全てを捧げます・・・ドウカ・・・ドウカオネガイシマス」
このおっさんは操られていたわけではなく・・・自分からそのあなた様とやらと契約を結んでいるのだろうか。
まだ操られている可能性がゼロではない以上迂闊なこともできない。
ならば・・・あまり乗り気ではないがあの能力で強制的に聞き出してみるか。
エリンを逃がすために一度だけ使用した【眷属の魔眼】をまた使うことになるとは・・・しかし、それ以外で聞き出す方法が思いつかない。
それになぜかすごく嫌な予感がする・・・いま使っておかないとあとで後悔するような気がした。
レクメングルを視界にいれて俺は眷属の魔眼を発動する。
そしてすぐにレクメングルにあなた様とは誰のことだと問い詰める・・・がレクメングルは答えようとしない。
まさか・・・効いていないのかという不安が一瞬過ったときだった。
誰かが俺に話しかけてきた。
「ほぉ・・・面白い娘がいたものだ。古の力を使うものがまだいようとはな・・・・・・実に興味深い」
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