第150話 俺、異世界で礼儀正しくすることをやめる
さて・・・どうしたものかと俺はアルトの目を向けて、アイコンタクトを図る。
俺の意図に気づいたアルトはゴホンと咳ばらいをしてからレクメングルに話しかける。
「レクメングルよ、その話は最初に済ませているだろう・・・それに彼女たちにも都合というものがあるのだ。それほど会いたいというのならば、次回は日程を決めて双方の都合を合わせるが良い。余もそれに合わせて時間を作るようにする・・・それで良いのではないか?」
「王の仰ることも理解できますし、本当に用事があったのであれば私もそのご提案を受け入れます・・・・・・が此度はそうではないはず!!」
「ほぉ・・・レクメングルよ、お主何が言いたい?」
「ははは・・・王もご存知でしょう・・・最後のひとりがどういう存在であるのかということを・・・・・・」
「センチネルからはシスティという名の剣を扱いに長けた女性としか聞いておらぬが?」
「あぁ・・・そうでございましたか・・・私はてっきりもう一つの方も聞いておいでかと思いました・・・では私の方から僭越ながらご説明いたします」
レクメングルは不気味な笑みを浮かべ・・・アルト以外の3人にもハッキリと聞こえるように大きい声で自信満々にしゃべりだした。
「私の調べた情報ではシスティという名の剣士はそこの娘が召喚術で呼び出した人ではない存在だということ・・・それに私たちが想像し考えただけで、身が震え正気が保てなくなるほどに凶悪な事件を起こした犯罪者・・・私も最初は耳を疑いましたが・・・今はそれが確証に変わっています・・・なぜならば、そこのオークエンペラーを何の躊躇も無く取り出し、平然としていることに私は戦慄し恐怖を覚えております・・・」
「レクメングルよ、オークエンペラーは余も宰相も怖いとは思っておらんし・・・熟練のなせる業だと感心しておるのだが、お主は魔物と対峙したことがないからそうなってしまうのやもしれぬな。それと・・・彼女たちの仲間であるシスティのことについてはレクメングルの言う情報はセンチネルから聞いてはおらぬな・・・」
「それは王のお耳にいれたくない・・・後ろめたいことがあったからでございましょう!!」
「・・・・・・そうか・・・アスティナよ、それでどうなのだ?レクメングルの言ってることは本当のことなのか?」
レクメングルがどうやってその情報を仕入れたのか・・・実力行使でもして聞き出したいところではあるが・・・ここで事を起こすわけにもいかない。
アルトに迷惑をかけてしまうことにもなる・・・さて、どうするべきか。
素直にレクメングルが言ったことが真実だと述べるべきか・・・それとも言葉を濁して有耶無耶にしてこの場を去るか・・・どちらを選んだとしても結局問い詰められるだろうなぁ。
それなら・・・真実を述べて国王アルトや宰相カークランドをこっちの味方にしてしまった方がいいのか・・・だが、それでも大臣単体の方が権力を持っているのなら、意味がないか。
アルトグラム王国の成り立ちを知ってしまっている以上・・・現国王のアルトが相当権力を保持していないと負け確定な気がする。
センチネルやヤマブキさん・・・それに師匠が国王のアルトではなく大臣のレクメングルに気を付けろと言っていたことを思い出すと、やはり分の悪い賭けになりそうではある。
返答に困っている俺に対してレクメングルは追い打ちをするように言葉を投げかけてくる・・・それはもう黙れと腹ではなく顔めがけて全力でグーパンをしたくなるほどにただただウ・ザ・イの一言。
そして・・・俺はとうとう限界に達したのであった。
まぁ俺がもうちょい我慢をしていたとしても後ろにいるエリンが俺より先に反論・・・いや、グーパンしてただろうな・・・それも俺が脳内で考えていた殴り方で・・・そう顔面に全力グーパンだ。
アスティナはまだか弱く非力だからいいものの・・・エリンがそれをやったら、あのおっさん・・・元の顔が分からなくなるんじゃないだろうか・・・。
それを制止するためにもここは俺がやつと対峙するしかないだろう・・・。
謁見するまではあれほど楽しかったのにな・・・本当に残念だ。
当面の間・・・もしかしたら一生ライユちゃんに会えないかもしれないな・・・あの絵本を渡しておいて良かったわ・・・。
はぁ・・・でもあの絵本を見るたびに俺とエリンを思い出して、会えないことに悲しんだりしないか・・・はぁ・・・それだけが心残りだな。
ソレイユとももっと話がしたかったな・・・彼女の能力もだがあっちの世界のこと・・・帰還方法などがあるのかを聞きたかったがそれももう叶わないか。
「王がどうなのかと聞いておいでだろうが!さっさと答えぬか、娘!それともなにか答えられない理由でもあるのか!なぁ、おい、何か言ってみろ娘!!」
「はぁ・・・もうやめだ・・・ごめんな、アルト・・・もう俺演技するの無理だわ。こんな無礼なやつにはそれ相応でしか対応できねぇわ・・・マジでごめんな」
「王に向かって何という態度・・・それに!それに!私に向かって無礼なやつとはどういう言い草だ!!」
俺の言葉に脊椎反射で反応し激昂する小太りのおっさんを無視して俺はさらにアルトに話しかける。
「アルト・・・そこのおっさんの言ってることは本当だ・・・ただこの情報は本当に少数にしか教えていない・・・つまり俺たちが知っている人物の中にスパイ・・・情報を流しているやつがいる。アルト・・・信用する相手を間違えるなよ・・・まぁそれは俺自身にも言えることではあるがな・・・」
「・・・・・・そうか・・・アスティナ、助言感謝する。しかし・・・・・・王妃もジュニアもだが・・・そなたに一番懐いておったライユが悲しむであろうな」
「はは・・・まぁそれは俺も心残りではあるんだけどな・・・まぁそこは親であるアルトやソレイユに頑張ってもらうほかないな・・・悪いな」
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