第147話 俺、異世界でオークエンペラーのナタを取り出す
宰相にナタをみんなに見せてあげて欲しいと頼まれた俺はストレージからオークエンペラーの半分に折れたナタを取り出した。
折れたといっても全長が250センチあったため、半分になったとしても120センチ前後はある上に横幅も100センチ・・・。
そんなナタをほいほい簡単に実体化しても良いのだろうか・・・右手に持ったカードを見ながら悩んでいる俺の様子を見た宰相は国王にそのことで確認を取り始めてくれた。
「国王、アスティナ女史に別の証拠品としてナタを提出してもらおうと思うのじゃが・・・少しばかり大きいようなのじゃが問題ないかの?」
「先程そなたが申していたオークエンペラーのナタのことか・・・余も気になっておったところだ。提出することを許可するぞ!」
宰相からの提案を快諾した国王は今か今かと俺がナタを実体化するのをワクワクしながら待っている。
丸眼鏡のおじいさんはというと・・・親指を立て、満面の笑みでこっちを見ている。
アルトが許可したことにより、ナタを実体化することは決定したがさすがにこのまま立ったまま発動すると・・・王冠のようにまた空中で出現して絨毯に向かって一直線に落ちるのだろう。
前回はまだ王冠だったから、ちょっと金属の鈍い音がする程度ですんだが・・・今回はそうはいかないだろう。
俺は両膝を曲げ、中腰になるとそこから右手が絨毯に触れる程度に伸ばしナタを実体化させた。
すると今度は王冠のときのようにガコンッ!!と鈍い金属音を発することはなかったが・・・変わりに絨毯にいい感じに折れた刃の先端が絨毯に突き刺さっていた。
カードの向きとかが関係するのだろうか・・・俺の予定では縦ではなく横向きに出現させることによって、絨毯にキズがつかないようにしようと思っていたのだが・・・結果はこの通り一目で見てすぐに分かるほど綺麗に突き刺さっている。
俺はゆっくり膝を伸ばしたあと、目を左右に動かして周囲の状況を確認する。
他の臣下たちはナタがどうとかよりも謁見の間を象徴する赤い絨毯に隠しようもないキズができてしまったことに対して動揺しているようだ。
だが、宰相と大臣そして国王の三人は絨毯よりも俺が取り出したナタに関心を持ってくれたらしく、先ほどまで玉座に鎮座していたはずの国王は目をキラキラさせてこっちに近づいてくる、そして許可を取ってくれた宰相は折れた刃の部分をじっくりと観察している、最後にナタを取り出す要因となった大臣は左手で自分の顎を触りながら、ボソボソなにかを呟いていた。
そんな彼らにオークエンペラーとの戦闘でナタを折ってしまったことを伝える。
「戦闘時にやむを得ず折ってしまいました。いま現在お見せできるのはこれで全部です・・・本来のナタはこの二倍はあります」
「これがオークエンペラーのナタか・・・噂には聞いていたがこれほどのものだとは思いもしなかったぞ!しかもこれでまだ半分とはな!!」
「ふぉっふぉっふぉ・・・やつのナタを折ってしまうほどの一撃か・・・実に気になるのぉ」
国王と宰相のふたりは各自でナタを観察してはちょくちょく集合し、楽しそうに会話をしている。
その様子に先ほどまで絨毯のことばかり気にしていた臣下たちもぞろぞろと集まり、ナタを観察し始める。
とりあえず何とかなったかと安堵した直後・・・大臣のレクメングルがまた突っかかってきた。
「娘・・・これが宰相が仰ったオークエンペラーのナタか?」
「はい、さようでございます」
「そうか・・・確かにこのナタからは見ている者を不安にさせる威圧感はある・・・・・・がこれでお前たちがオークエンペラーを討伐した証拠にはならん」
「・・・・・・それはどういうことでしょうか?」
「ナタだけ盗んで逃げかえってきた可能性もあるだろう?肝心のやつの死体がどこにも見当たらないではないか」
「はぁ・・・さようですか・・・・・・」
また言いがかりをつけてきたレクメングルにイラっとしてきた俺はいますぐにでも言い返してやりたいところだが・・・ここで爆発してしまってはせっかくテイルが教えてくれたことが全て台無しになってしまう。
それに隣で表情だけは口角を上げて笑顔を装ってはいるが、内心では小太りのおっさんに殴りかかる気満々の相棒もそれを我慢し耐えている・・・なぜそう思ったのかというと、エリンがギュッと左右の手を握り締めているのを見てしまったからだ。
先ほどまでナタについて自分たちの意見を述べては楽しんでいた国王と宰相だったが・・・あまりにも大人げない大臣の言葉に対して、俺とエリンに頭を下げ謝罪し、自分の非を認めるように注意している。
「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら
是非ともブックマーク、評価よろしくお願いいたします。




