第139話 俺、異世界でアルトジュニアと約束を交わす
妹のライユちゃんとはかなり仲良くなれたが、兄であるアルトジュニアとは最初に軽く会話したときの方がまだマシだった気がする。
最初はあれほどカッコ良くこっちの目を見て、しっかりと自己紹介を決めた彼はどこにいったのかと思えるほどに大人しいというか、俺の方を一切見ようとしない。
俺が話しかけると彼は答えてくれるのだが、自分からは俺に対して一切話しかけてこようとしない・・・しかしエリンに対しては普通に話しかけている。
急激に対応が変化したことにより、いままでの会話の中で彼になにか嫌な思いをさせてしまったのだろうかと思った俺は直接彼に聞いてみることにした。
「なぁアルトジュニア・・・俺なんか・・・お前が嫌がるようなことをしたか?その、なんだ・・・さすがにその感じが続くと俺もちょっとくるものがあるんだが・・・なにか理由があるなら言ってくれないか?」
「・・・・・・・・・いや、特にはない。気にしないでくれ」
「そうは言ってもだな・・・それに俺の名前も自己紹介をしてくれた時に呼んでくれたあの一回だけで、それ以降一度も名前を呼ばないのにエリンのことは普通に名前で呼ぶし、ちょっと仲間外れにされてる気がしてあまりいい気分ではないのだが・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・アスティナ・・・これで良いか?」
「すっごい間があった気もするがまぁ良しとしよう。それで・・・本当に嫌な思いはしていないんだな?なにかあればすぐに言ってくれよな、言葉に出してもらわないと俺も分からないからさ」
「・・・・・・あぁ、分かった」
アルトジュニアから言質を取った俺はさらに彼との約束を強固なものにするため、子供の頃によくしていたあれを久々にしようと思ったのだが、現在ライユちゃんが座っているため俺は動けない・・・ならば、彼の方からこっちに来てもらうほかない。
俺はアルトジュニアに対して手招きをして、こっちに来るように促す。
意味も分からないままアルトジュニアはゆっくりとこっちに近づいてくるが、ある一定の距離まで来るとそこで急停止した。
手を伸ばしても、微妙に届かない絶妙な距離を維持している彼に俺は「もうちょいこっちに来いよ、じゃないと手が届かないだろ」とさらにこっちに来るように伝える。
それでもまだこっちに来ようとしない兄に対して妹のライユちゃんはなにかのスイッチが入ったのか、さっさとこっちに来いと俺以上に素早い動きで兄であるアルトジュニアを手招きしている。
妹にそこまでされたアルトジュニアは渋々こっちに向かってくる・・・そして射程距離に入った瞬間ガシっと彼の右腕を掴む。
急に掴まれたアルトジュニアはビクッと身体が一瞬震えたあと、次に俺がなにをするのかを様子見している。
そんな彼に俺はこれから約束を交わすためにある儀式を行うと宣言した。
「それじゃ~、さっきアルトジュニアが言ったことがその場しのぎで言ったことじゃないことを証明するために儀式を行います!!」
「・・・・・・儀式・・・それほどのことか?」
「あー、それと質問などには一切答えないのでそこのところご理解下さい」
「・・・あぁ・・・・・・・・・承知した」
俺がなにがあっても強行することを察した彼は拒否することもこれからなにが行われるのか質問することもせず、ただただ儀式が始まるのを大人しく待っている。
そんな彼にまずは右手で握り拳を作り、次に小指だけをピンと伸ばすように指示をする。
アルトジュニアができたことを確認した俺は彼の小指に交わるように自分の小指を当てると、その状態で小指を曲げるように指示をする。
ふたりの小指がフック状で引っかかり、外れないことを確認した俺はそれを上下に振りながら口ずさむ。
「ゆ~びきり、げんまん、ウソついたら、ハリせんぼん、の~ます、ゆびきった!!」
「・・・・・・これが儀式?」
「あー、そうだ。もし、約束を破ったら・・・・・・やめておこう・・・口に出すのも恐ろしい」
「ちょ、ちょっとアスティナ!えっ、約束破ったら余はどうなるんだ・・・教えてくれ!!」
思った以上にパニックになっているアルトジュニアを見た俺たちみんな爆笑してしまった。
当の本人であるアルトジュニアはそれどころではないようで、何度も俺に約束を破った場合どうなるのかを聞いてくるのであった。
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