第134話 俺、異世界でティーナの弟テイルに出会う
扉を開け、王城の中に入った俺とエリンが最初に見たものは俺たちを招待しているように見せかけて、俺たちが進め道を誘導するためだけに準備していたとしか思えないような従者・・・システィのような服装をした数十人の女性が2列になって通り道を作るように一定間隔で並んでいる。
俺たちはその異様な雰囲気に戦々恐々しながらもゆっくりと歩みを進める。
数々ある扉、通路、広場、階段・・・彼女たちがいなければ、一生たどり着くことができないと断言できるほどに迷路・・・いや迷宮とも呼べるような王城内部をただただ導かれるままに歩いていく。
毎回、国王に謁見するのにこんな謎ルートを通って行かないといけないのだろうか・・・それか二回目以降は簡易ルートが追加されるとか、あれば良いのだが・・・マジで謁見する度にこれはさすがにしんどくないか・・・これ臣下の人たちってどう思っているのだろうか。
道中、照明としては豪華すぎるシャンデリア、いまにも動きそうなプレートアーマー、写真じゃないかと思えるほどに精密に描かれた絵画、ヤマブキさんとこで見たことがある花瓶・・・これは別にいいか・・・などなど一つ一つが全て豪華絢爛であり、それはアルトグラム王国がそれほどまで強大な力を持った国であることを証明するかのようだった・・・こういうのを確か竜驤虎視とかいうんだったかな。
それからもずっと歩いていると、ある扉の前まで来ると俺たちが王城に入ったときからずっと案内してくれていた彼女たちは俺とエリンに会釈をすると、彼女たちは散り散りに移動を始め、それぞれの持ち場に帰っていった。
呆気に取られている俺たちに扉の方から男性らしき人物から声をかけられた。
「お待ちしておりました・・・アスティナ様、エリン様」
俺とエリンは声をかけられるまで全く彼に気づかなかった・・・それほどメイド部隊のインパクトが大きかったということか。
急に話しかけられたことにビクッとしながらも彼を視界にいれると鑑定ができるか試してみた。
アルトグラム王国の臣下~テイル~、アルトグラム王国の臣下です。いつもレクメングルに無理難題を押し付けられている可哀そうなお兄さんです。ただレクメングルは彼にしか頼まないので、そこそこの信頼は得ているようです、それとティーナの弟です。
テイルという名前の彼はどうやらこの王国の臣下であるらしい・・・そしてセンチネルやヤマブキさんが警戒していた人物であるレクメングル大臣に近しい人物のようだ・・・というか彼はいつも無理難題を押し付けられているのか、ちょっと可哀そうに思えてきた。
それよりも気になったのが彼を鑑定したことで分かった、外側の南門で出会ったティーナの弟だということ。
確かに彼の髪や眼の色も姉であるティーナと同じ、さらによくよく顔を見てみると雰囲気も彼女に似ているように感じた。
そのことでつい俺は彼にこの扉の先が謁見の間なのかを質問するついでに姉弟がいないか聞いてしまった。
「どうも、それでこの扉の前で待ってたと言う事はこの先が謁見の間ということか?」
「申し訳ございません・・・。本当でしたらこのまま謁見の間に来ていただく手はずになっていたのですが・・・どうしてもあるお方が直接会って、アスティナ様とお話をしたいと申しておりまして・・・」
「あんたがわざわざあるお方って言い方をする時点で、もうそれほぼ答え出ている気がするんだよな・・・はぁ、分かったよ。それにお話とやらをしないと謁見の間にも連れて行ってくれそうにないしな」
「ご理解いただきありがとうございます。それではお部屋に案内いたします・・・」
「はいよ、それじゃ案内頼む。・・・・・・あっ、そうだ一つだけあんたに聞きたいことがあったんだ!」
俺たちを部屋に案内するため扉の持ち手に触れ、いまにも開こうとしている彼は俺の声に反応し、持ち手から手を離すとこちらに振り返る。
「・・・はい、何でございましょうか?」
「しょうもない話なんだけどさ・・・あんた、お姉ちゃんとかいたりしない?」
「姉ですか・・・・・・5つほど年の離れた姉がいますが・・・それがなにか?」
「あんたに似た人を王都で見たから、ちょっと気になってな・・・確かティーナさんだったかな」
「あー、ティーナでしたら私の姉で間違いないですよ・・・」
「やっぱりそうか!どおりで顔や雰囲気が似ている気がしたんだよ。ティーナさんには結構世話になったからさ、俺が感謝していたって伝えておいてくれないか?」
「・・・・・・はい、承知いたしました」
俺の頼みを承諾してくれたのはいいが・・・なぜか姉であるティーナの話になると、浮かない顔をしている彼のことが少し気になってしまった。
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