第133話 俺、異世界でエリンとシスティのことで談笑する
さて・・・システィになんて言葉をかけようか、普通にここで待っていてくれというべきか・・・一旦帰ってもらうかだな・・・ただそうなった場合、彼女はどこに帰るのだろうか。
右足を出したまま停止している俺にエリンは王城に入らないのか聞いてきた。
「ねぇ・・・アスティナ足出たまま止まっているけど、王城に行かないの?」
「あー、ちょっとセンチネルに言われてたことを思い出してな・・・システィをどうするべきか考えていたんだ」
「システィを?普通にそのまま王城に入っちゃダメなの?」
「うーむ・・・たぶんというか・・・そのまま王城に入れば俺たち捕まるかもしれない・・・」
「・・・・・・それってどういうこと?」
エリンからなぜそのままシスティが王城に入るとダメなのか不思議そうに質問してくる。
俺はどう彼女に返答しようか悩んでいると、当の本人であるシスティが代わりに返答してくれた。
「エリン・・・それはですね。私めも犯罪歴があるからですよ」
「・・・システィが?いまそんな冗談を言っても面白くないわよ、システィ」
「いいえ、嘘でも冗談でもなく・・・真実です。お嬢様・・・お傍に居られないのが非常に心苦しいのですが・・・」
「はぁ・・・分かった。ごめんな、システィ・・・用事が済んだらすぐに呼び戻すから・・・それまで待っててくれよ」
「はい、お待ちしております・・・お嬢様。それでは私めがいない間ちゃんとお嬢様をお守りするのですよ、エリン」
「冗談じゃ・・・ないのね・・・分かったわ。アスティナのことはわたしに任せなさい。それとあなたにどんな過去があったとしてもシスティはシスティなんだから」
「ふふふ・・・貴女のそういうところ、好きですよ。それではお嬢様・・・暫しお暇をいただきます」
システィはそう言って俺たちに深々と頭を下げ、俺が【アスティナの従者~システィ~】を再度発動するのを目を閉じて待っている。
俺はそんな彼女を見ながら能力を発動した・・・するとシスティがこちらに来た時と同じように魔法陣が展開することもなく、一瞬で彼女の姿が完全に消失していた。
彼女が消えたことを確認した俺たちは無意識に呼吸を合わせ、同じタイミングで深呼吸をしていた。
そのことに気づいた俺たちは顔を合わせると、盛大に笑ってしまった・・・たかだが彼女に会ってまだ二日目だというのにそれほどに彼女のシスティの存在が大きいものだとは思いもしなかった。
「あはは、はははははは!!なぁエリン、俺たちってさ・・・知らないうちにシスティに頼ってたんだな・・・彼女がいないことがこれほど心細くなるとは思いもしなかったよな?」
「ふふふ、そうねぇ、わたし自身も驚いているわ。最初はアスティナが連れてきた従者だから・・・仕方なく同行を許してたけど、いまはシスティがいないとなんか楽しくないもの」
「エリン、お前・・・そんなこと思ってたのかよ。まぁ俺がエリンの立場だったとしたら、同じことを考えていたかもしれないけどさ」
「でしょ~?ずっとふたりで冒険するって約束したのにすぐに知らない人を連れてくるのよ・・・それはもう・・・はぁ?ってなるでしょ!」
「確かにそうだな・・・なんかそう聞いたら、俺ってかなり痛いやつじゃないか?いきなり見ず知らずの人を友達の家に連れて来るってことだもんな・・・」
「でしょ、でしょ!でも、それでも彼女がアスティナの記憶を取り戻すきっかけになるのであれば、同行するのも仕方ない・・・許すしかないと思ったの」
「・・・・・・はぁ・・・エリン、なんていうか・・・色々とありがとうな!!さて、んじゃさっさと終わらせて3人で帰ろうぜ!!」
俺はそこでシスティに対してエリンが内心思っていたことやそれでも彼女を受け入れてくれたこと、そしていまや友達として迎え入れてくれていることがすごく嬉しかった・・・だけど、もしこれが逆で俺がエリンの立場だったなら・・・嫉妬しているかもしれないな・・・いや、100パーセントしてるわ。
言葉に出さず心の中でそう思いながら、俺は先行すると王城の扉を両手で押し開けていく、このとき自分でも驚いたのだが、あのアスティナが剣すらロクに持ち上げることができないほどに非力なはずの俺の手によって、重厚な扉がゆっくりではあるが徐々に開いていくことが信じられなかった。
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