第132話 俺、異世界で王城前でセンチネルの忠告を思い出す
あれから俺もエリンも門番に話しかけるが彼らはやはり一切反応しようとしない。
もう正直なところ彼らの相手をするのが面倒くさくなった俺は貴族街に入るときに門番Aからもらった【通行許可証】を取り出して彼らに見せながら試しに通ってみることにした。
恐る恐る彼らの反応を見ながら、ゆっくりと歩く・・・そして門の真ん中あたりに差し掛かったときだった。
急に彼らが動き始め背中に担いでいたハルバードをそれぞれ取り出すと、取り出したハルバードが十字に重なるように腕を伸ばし俺を先に進ませないように妨害してきた。
どうやらこの通行許可証はあくまで貴族街に入るためだけにしか使用することができないようだ。
さて・・・どうするか、今度はあの招待状を彼らに見せてみよう・・・これでダメだったらもう次に打つ手がないかもしれない。
ポシェットから【アルト国王直々の招待状】を取り出すとハルバードで俺の動きを封じている彼らに封蝋印が見えるよう裏面にしてゆっくりと両手で持って右から左に動かしてみた。
すると・・・俺を先に進ませないように前方に繰り出されていたハルバードがスッと下がっていき、初期位置であった背中に戻った。
その様子を見た俺は門を通る前にもう一度彼らに確認を取ることにした、さすがにまたハルバードが目の前に急に振り下ろされたら、たまったもんじゃない。
「なぁ・・・今度こそ通っても大丈夫なんだよな?」
「・・・・・・・・・・・・お通り下さい・・・・・・」
「・・・やっと声が聞けたわ、ありがとうな!また帰る時に通るけど、次は見せなくても大丈夫だよな?」
「・・・・・・問題ない・・・こちらこそすまなかった」
「それがあんたらの仕事なんだから、謝る必要なんてねぇよ。それじゃ、またな~」
彼らから門を通る許可を得た俺たちは南門を通り抜け、その足で跳ね橋もそのまま通り抜ける。
門を通り抜ける時彼らに対して少し言い過ぎたことを気にしていたのかエリンは手を合わせて、彼らに「わたしもちょっと言い過ぎたわ・・・ごめん」と謝っていた。
王都で一番内側にあるこの防壁は跳ね橋の効果を上げるためか内堀が掘られており、そこに大量の水が張られていた。
ここからではどれほど水位があるかは分からないが、それでも1、2メートルではきかないほど深そうだ、軽く覗いてみても底が全く見えない。
というか・・・この水はどこから引いているだろうか、王都アルレインがある大陸は冒険者の町ミストよりさらに南に下ったところにある貿易港町オセロンというところしか海に面していない。
オセロンという町に行ったことはないが、師匠の本屋で見た五大陸のうちの人族が住んでいる大陸・・・つまりいま俺たちがいる大陸にどんな町があるのかを調べてみたことがあり、それで知ることができた。
この大陸にはたくさん村や町もあるが、人が多く住んでいる町は大体5都市となっているようだ。
まぁこれはいま別に考えなくてもいいか・・・そういや別に水源がなくても魔法で水を出すことができれば別に困らないか。
蛇口やシャワーで盛大に水を使っているのになにをいまさら俺はそんなことを気にしているのだろう。
最後の門の先には中心に王城があり、空いているスペースに林檎や葡萄などの果樹、また子供が遊べるように公園らしきものが用意されていた。
他にもなにかありそうではあったが跳ね橋を通り抜け、王城を正面に見据えている現在の位置からはそれぐらいしか確認できなかった。
王城に入る前に俺は頭を上げて、どれほど王城が巨大かを見ておくことにした。
王都に来た時からずっと中心に見えていたし、王城に近づくにつれてどんどんその巨大さも分かってはいたが、やはり目の前で見るとその巨大さやさすがは王城と言わしめる精密なデザイン、そして見ているだけでなにか畏怖の念を感じさせる不思議な印象を受けた。
そしていざ王城に入ろうと右足を前に出した時・・・俺はセンチネルにあることを注意するように言われていたのを思い出した。
それは・・・この城には水晶と同じような結界が張られているからシスティを王城に連れて行ってはいけないということだった。
もし・・・システィがそのまま王城に踏み込もうものなら、即アウトだろう・・・システィを倒せるような人物はこの城にもいないだろうが、俺やエリンはそうはいかないし、ここは慎重に行動しないとな・・・まぁここに来るまですっかり忘れていた俺が言うのもあれだが・・・。
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