第128話 俺、異世界でテレポートを覚える
レイヴンが手に持っている魔法書を鑑定すると確かにテレポートについて書かれているもので間違いなさそうではある。
だが、いつもなら値段が表示されているの箇所に金額が表示されていなかった。
このパターンの時を俺は知っている・・・それは俺のデッキケースや師匠が持っていたロッド、あとはレアリティEX・・・神級と呼ばれる種類のモノを鑑定した時に何度か見たことがあるからだ。
それはつまりあの魔法書も最低でも同等の価値があることを示している。
レイヴンは左手に持っている魔法書を無造作に俺の方に投げるとこう言った。
「はい・・・これでテレポートを覚えられる・・・・・・レイヴンはまた本を読む・・・さようなら」
「あー、ありがとう・・・って、待て待て待てそこスッと帰ろうとしない!」
レイヴンはまた例の扉を出現させると、そのまま帰ろう準備にはいっている。
俺に引き留められた理由が彼女には分からないらしく・・・困惑している様子だ。
「・・・・・・魔法書あげた・・・他に用はないと思う・・・けど?」
「いや・・・あれよ?本屋ってことはこの魔法書は商品なんだよな?ってことはこっちも対価でお金を支払わないとダメだろ・・・」
「ふむ・・・・・・なるほど一理ある・・・でもいらない・・・あれの知り合いだからタダであげる」
「何度か言ってる【あれ】って師匠、イクストリアのことか?」
「そぉ・・・あれはあれ・・・・・・昔も今もあれはあれ・・・」
レイヴンは師匠であるイクストリアと昔から交流があったようだが、なぜ師匠を【あれ】と呼んでいるのかは分からなかった。
それから何度かさすがに無料でもらうわけにはいかないと彼女と交渉をするが・・・毎回同じ返答が返って来る。
それは・・・・・・あれの知り合いだからタダであげる、という返答。
店主がそこまで言うのであれば、もらう側としてずっと断り続けるのも無作法だと思った俺はありがたく頂戴することにした。
早速、テレポートを覚えるため魔法書を開きページをめくった。
そこには小学生が夏休みの宿題として書く絵日記のように上半分には絵が描かれていて、下半分には文章が書かれていた。
この本は正確にいうと魔法書ではないことがすぐに理解できた、なぜなら魔法書の場合は最初の1ページを開き視界に入れただけで覚えることができる、それも書かれている文字が全く読めなくても問題なく・・・なぜか理解することができる。
だが、今回はもう一つのパターンの方らしい・・・それは俺が生活の知恵でウォッシュ、絵本でデスサイズを覚えた時のように本を読み進めていくことにより、覚えることができる。
俺は絵日記をただただ読み進めていく・・・どうやら、この話は本当にこの著者の実体験をもとに書かれているようだ。
著者である彼は物心がついた頃から無意識にテレポートが使えたらしい、ただ最初の方は精度がいまいちだったため思ったところに転移をすることができず、何度か危ない目にもあっていたようだ。
そして彼が二十歳を過ぎた頃にはテレポート完全に自分のものにできたと書かれている。
テレポートを使う上で一番大事なことは転移したい場所をいかに完璧に思い浮かべられるかということらしい。
自分が住んでいる家などは思い浮かべやすいが、一度行ったことがあるだけの場所や地図などで場所を聞いた見ただけだとテレポート自体は唱えることはできるが・・・キャパオーバーのウォッシュの時のように不発するとのことだった。
そして俺は最後まで読み終えて本を閉じた瞬間・・・何度も経験した新しい魔法を覚えたときに感じる頭の中にスッとなにかが入り込む妙な感覚を覚えた。
テレポートが商品リストに追加されているか確認するため、俺はショップを開くと同時にすぐに見つけられた。
なぜそんなに一瞬で見つけられたかというと・・・テレポートもデスサイズと同じく最上級魔法に分類されていたからだ。
テレポートのテキストにはこう書かれていただけだった、それは・・・行ったことがある場所に転移します。
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