第125話 俺、異世界で王都の南門にて門番に出会う
明らかに観光に来ましたという田舎者ムーブをしていると、ふたりいる門番のうちひとりがこっちに向かってゆっくり歩いてきた。
近づいてくる彼女に対してすぐに俺は鑑定を試してみたが、また鑑定不可で調べることができなかった・・・というか俺のランク50がこの世界ではそれほど高いものではないかと思えるほどに・・・毎回鑑定不可ばかりで少し悲しくなった。
人物以外ならいまのところ全て鑑定出来ていることを考えると決して悪くないどころか最高峰の能力ではあるが、やはり人物を鑑定できないといざという時に対策が一歩、二歩遅れかねない・・・。
北門で出会ったランクロットとかいう犯罪者がいたことを考えると、冒険者の町ミストよりも広大な王都アルレインにも人の多さに比例して、こっちの方がそういう悪さをするやつが増えていそうな気がする・・・というか確実に多いだろう。
そんなやつらを前もって知っておけるのはかなりのアドバンテージとなるのだが・・・残念ながらいまの俺ではこれが限界のようだ。
こっちに近づいてきた門番は先頭にいる俺を見ると、目線を合わせるためか軽く膝を曲げて挨拶をしてくれた。
「はじめまして、お嬢さん。あたしの名前はティーナっていうの、よろしくね!」
「あー、俺の名前はアスティナっていうんだ。よろしくな、ティーナさん!」
「よろしくね、アスティナちゃん。後ろの方を見るとひとりはあなたの付き人だと思うけど、もうひとりは冒険者っぽいし、護衛かな?」
「えっとな、こっちはシスティといって俺の世話をしてくれているメイドさんで、あっちの冒険者はエリンといって俺の相棒なんだ」
「・・・・・・あなたの相棒なの?それじゃ、アスティナちゃんあなたも冒険者なの?」
「あー、そうだぜ。というか俺もだけど、システィも冒険者なんだぜ!!」
挨拶をしてくれたティーナは短めに切った茶髪、碧眼の女性だ。
彼女は門番とは思えないほどに身軽な服装・・・それはもう一般市民なのではという布の服に革のパンツの組み合わせと、腰にミスリル製のレイピアを携えただけの本当に身軽な装備だった。
まぁ一点だけ服装で一般市民とは違う箇所は靴が冒険者御用達のバトルブーツだった、これも簡素にするためか職人が装飾したであろうチェーンなどを全部剥ぎ取ったのだろう・・・それらが取り付けられた跡だけが残っていた。
ただ彼女の雰囲気はセルーンとかと同じ気配を感じさせる・・・説明をするのが難しいのだが隙があるのにその隙を突くと負ける未来しか見えないというか・・・挑むことすら躊躇させるなにかを彼女から感じられた。
俺たちは自分が冒険者だということを証明するために首から下げている冒険者カードを彼女に見せることにした。
「・・・・・・あなたたち全員S級なの?しかも、S級の横に小さなSが続けてふたつ書いてあるってことは・・・あのセンチネルが認めたってこと?」
冒険者カードを見たティーナは信じられない様子でカードと俺たちの顔を交互に見ている・・・それが数回行られたあとで、もうひとりいる門番を手招きして、こっちに来るように誘っている。
ティーナがすぐにこっちに来たことにより、もう片方の門番のことを気にしていなかったが・・・あっちはあっちでまた奇抜なというか俺が時代劇でしか見たことがないような服装をしていた。
こっちに近づいてきた彼は日本刀を左腰に携え、服装は紺色主体の着物に足袋と草履というスタイル。
さらにエリンのような肩にかかる綺麗な金髪にアスティナの真紅の瞳を少し薄めたというか、赤というよりもピンクよりの瞳をしたエルフ族のイケメンであった。
エルフ族で日本刀に着物というのが奇抜ではあるのだが・・・なぜかとても彼に馴染んでいたことに驚いた。
そして彼が第一声を出す前にエリンが先に彼を見て声を上げた。
「ええぇぇぇ、ちょっとあなた、こんなとこで何やってるのよ!ウィリアム!!」
「・・・おや?その声とその顔はエリンではないか、貴殿の方こそ王都に来るなんてめずらしいのではないか?」
「確かにいまはミストを拠点にはしているけど、昔は王都にもいたし・・・というかあなたこそ、獣人族の国に行くって言って帰ってこないと思えばこんなとこで、門番をしているなんて思わなかったわ」
「拙者はかの国で修行を終えたあと・・・故郷に帰る前に王都に寄ったのだが、そこで拙者の腕を買われてな?報酬も良かったので・・・つい」
「ウィリアム・・・あなた、偉そうに言って旅に出たと思えば、わたしとあんまり変わらないじゃないの・・・まぁその気持ちは分からないでもないけど」
「そうであろう!そうであろう!おっと、それでティーナ、冒険者カードがどうしたのだ?」
ティーナは早速ウィリアムに俺たちの冒険者カードを見せると、彼もティーナと同じようにカードと俺たちの顔を交互に見始めた。
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