第117話 俺、異世界で二日酔いにリカバリーを使う
エリンは寝ている師匠を起こすために近づくと、師匠のほっぺをトントンと軽く叩きながら彼女の耳元で「イクストリア~、起きなさい」と囁いている。
だが・・・師匠は一向に目を覚ます様子がない、とりあえず師匠がいつ起きてもいいようにシスティお手製の紅茶が入った水筒を取り出してすぐに飲ませることが出来るように準備をしておくことにした。
うろ覚えではあるが・・・確か紅茶やコーヒーに含まれるカフェインには二日酔いに良いというのがあった気がする。
それでも頭がガンガンして目も開けられないほどに痛みが激しいのなら、エリンの筋肉痛を治した時のようにリカバリーを使用することを考慮しないといけないな、時間が経てば治まることには変わりはないが頭痛がある状態の師匠にこれからの事を話しても、痛みでちゃんと理解してもらえるか分からない。
エリンは起こすことに飽きはじめたのか、師匠のほっぺをプニプニと人差し指で押して遊び始めている。
俺を起こす時はすぐに掛け布団を剥がして、無理矢理起こすくせに師匠の時は自然に起きるのを待っているようだ・・・まぁ師匠が寝ていることをいいことに彼女で遊んでいる事には変わりはないのだが・・・というかこのあとの予定を考えるとこんな事で時間を潰している場合じゃない。
このままエリンに任せていても埒が明かないと思った俺はエリンの代わりに寝ている師匠を起こすために彼女に近づいた。
「エリン・・・師匠で遊ぶのもいいけどさ、俺たちのこの後の用事覚えてるか?」
「・・・もち・・・ろん、覚えてるわよ?」
「なら、なぜに疑問形になってるんだよ・・・はぁ・・・まぁそれよりも、俺が師匠を起こすから場所を代わってくれ」
「分かったわよ、アスティナ」
エリンはそう言うと立ち上がり寝ている師匠の枕元から離れ、空いた場所に座る。
俺は師匠の顔をぺしぺしと叩きながら「師匠~!あ~さ~で~す~よぉぉぉぉ!!」と叫ぶ。
それでも師匠はまだ起きる様子が無い・・・。
さすがにここで諦めるわけにはいかないので師匠が起きるまで何度も試すことにした。
繰り返すこと・・・5回目・・・やっと師匠が目を開けてくれた。
俺は起きたての師匠に紅茶を手渡すと喉がカラカラだったのか一気に飲み干した。
「ふあぁぁ~、弟子君ありがとう・・・それでどうしたんだい。来るにはまだちょっと早いんじゃないかい?」
「おはようございます、師匠。あの・・・非常に申し訳ないんですが今日の予定をキャンセル・・・えっと、予定取り消しでお願いします」
「ふむ・・・そうなのかい?君の方からそう言ってくるってことは何か訳ありかい?」
「はい、そうなんです・・・。さっき冒険者ギルドに行ったときにセンチネルからちょっと面倒くさいことを頼まれまして・・・」
師匠に今日の予定をキャンセルした理由を説明しはじめようとした時、師匠は俺の眼前に手を出し、言葉を制止した。
「君・・・すまないがちょっと酒が残っているからさ・・・少しゆっくり目で頼むよ」
「あー、そう言う事でしたらちょっと試してみたいことがあるので・・・」
師匠にそう言うとリカバリーを使用するためにドローをしたが手元に来ることはなかった。
そういや昨日使ったカードをデッキに補充するのをすっかり忘れていたことを思い出した。
とりあえずいますぐ師匠に使うためにショップからリカバリーを5枚ほど購入すると、試しにまずは1枚目を手に取り師匠のお腹に手を当て唱えた。
肝臓、腎臓にリカバリーを意識してまずは1枚目を使い、次は師匠の額に手を当てると2枚目を唱えた。
3枚目を手に持ち唱える準備をしていると師匠の方から「君、ありがとう。だいぶ楽になったよ。もう大丈夫だよ」と口に出した。
二日酔いが治ったのか師匠は敷布団に座ったまま伸びをしたり、首を動かしたりして体調を確認している。
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