第115話 俺、異世界でアダマンタイト硬貨を手にする
「アスティナはん、アスティナはん、ほいで、センチネルはんが頭を下げてきはった時は笑いを抑えるのに必死やったんよ」
「はぁ・・・そうだったんですね・・・・・・あのぉ、ヤマブキさん俺たちこの後王都に行かないといけないのですが・・・」
「あら・・・そやった、そやった、妾としたことが・・・ほな・・・・・・さて、手続きをはじめましょうか」
ヤマブキさんはプライベートでは京都弁っぽいしゃべり方・・・というかそもそも京都弁と呼んでいいものなのか分からないが、そのしゃべり方が仕事になった瞬間、雰囲気もピリッと引き締まった。
彼女に冒険者カードを提出するように言われた俺たちは各々取り出し、彼女の前にカードを置いた。
彼女はカードに手を当てると、目を閉じて数秒停止する、その動作を枚数分繰り返した。
「それでは用意いたしますので、そのままお待ちください・・・」
「あっ、はい。分かりました」
「ヤマブキ、わたし喉がカラカラなんだけど」
「はぁ・・・エリン、汝がそう言うと思ってもうすでに用意させている。それ以前に妾がお茶を出す前に言うでない・・・」
「はいはい・・・分かったわよ。それじゃ大人しく待ってますよぉ」
ヤマブキさんは俺たちにカード返すと俺たちにこの部屋で待つように言って部屋をあとにした。
彼女が部屋を出てから、数秒後・・・ガチャっとドアが開き、ヤマブキさんと入れ替わる様に男性が入ってきた、歳は20代半ばぐらい身長は180センチほどある中性的な見た目の綺麗な顔立ちの人だ。
ヤマブキさんと同じ色合いの髪、瞳・・・彼女と近縁の人だろうか。
正体を見るため鑑定をしてみた結果・・・見ることはかなわなかった。
彼はお盆で持って来てくれたお茶とお茶菓子をテーブルに並べると俺たちに「粗茶ですが・・・」と言うと会釈をし、すぐに反転し部屋を出て行った。
それから待つこと3分ほどが経った時だった・・・ゆっくりとドアが開くと「お待たせしました」とヤマブキさんが何か手に持って戻ってきた。
ただ彼女が持ってきたものには布が被せられていて、何を持ってきたのかが分からない。
ヤマブキさんはおもむろに被せられていた布を取る・・・そこには高価なアクセサリーでも入っているのかと、思わせるようなシックなデザインの箱が姿を現した。
箱を空けるとそこには今まで見たことが無い硬貨が十数枚あった。
俺が今までに見た硬貨は銅貨、銀貨、金貨しかなかったが、鑑定結果を見ると【ミスリル硬貨】と【アダマンタイト硬貨】と呼ばれるものだった。
ミスリル自体はエリンの胸当てで見たことはあったが・・・硬貨になっていることは知らなかった、次にアダマンタイトだが・・・これもファンタジーとかに出てくるから、名前は知ってはいるが・・・ゲームとかだと最後の方に手に入るやつとかじゃなかったっけ・・・。
ヤマブキさんはテーブルに少し小さめのクロスを引くとそこに硬貨を一枚一枚丁寧に俺たちの方に向けて置いていく。
数はアダマンタイト硬貨が1枚とミスリル硬貨が13枚の計14枚の硬貨が並べられた。
全額を下ろしたのならば、俺の知っている金貨などの硬貨も含まれるはずなのにそれが1枚もないことが少し気になった。
俺とエリンが硬貨をジッと見ていると、ヤマブキさんがそれぞれの硬貨についてと端数を切り上げたことを説明をしてくれた。
「では・・・ご説明させていただきます。まず、みなさまの残高の端数ですが切り上げさせていただきました。こちらは妾の供与なので・・・」
ヤマブキさんの説明を聞いた俺はただただ驚愕した・・・なぜなら彼女の言った切り上げが白金貨1枚単位だったからだ。
そもそも白金貨とは何かということになるのだが、白金貨1枚の価値は俺が一番高いと思っていた金貨の100枚分だという・・・それはつまり・・・円で言えば100万単位で切り上げていることになる。
その時点でもう俺やエリンは理解が追い付かず・・・頭がパンクしそうになっているのだが、彼女が持ってきた硬貨にはその白金貨がない、ということはミスリル硬貨とアダマンタイト硬貨はそれよりも価値が上だということになる。
ミスリル硬貨は白金貨10枚分の価値がある、この硬貨1枚で金貨1,000枚分・・・それが13枚あるということは金貨13,000枚分・・・てことはこれだけで1億3,000万円ってことだ。
ミスリル硬貨の内訳はエリンが8枚でシスティが5枚、オークエンペラーの討伐報酬の金貨5,000枚がミスリル硬貨5枚になったということか。
エリンの方が3枚多いのは冒険者として仕事をしてきた差なんだろう。
そして・・・最後に残ったアダマンタイト硬貨だが、これはミスリル硬貨10枚分の価値がある・・・つまりこれ1枚で1億円ということになる。
俺は手の震えを必死に抑えながらアダマンタイト硬貨を手に取ると即ストレージに収容した。
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