第113話 俺、異世界で国王から招待される
ここでやるべきことは全部終わったことだし、師匠にデスサイズの練習を見てもらうためにもこの辺りで今日はもう帰る準備をするため、腰を浮かせ上半身の重心を前に動かした時だった。
対面で座っているセンチネルから神妙な面持ちで「まだちょっと話があるんだ」と帰ることを止めるようにそう話しかけてきた。
俺はソファーにもう一度腰を下ろすと共にセンチネルの言い方が気になったこともあり、隣で現実逃避しているエリンの肩に手を置くと、前後に軽く揺らしエリンをこっちに世界に連れ戻すことにした。
「ちょ、ちょっとなになにアスティナ!?どうしたのよ・・・」
「あー、ごめんごめん。ちょっとセンチネルから話があるようなんだ」
「そうなのね、でもそれぐらいなら口で言ってよね」
エリンからそう言われた俺は「悪かったって・・・」と返すと、センチネルに話を続けるように伝えた。
センチネルはごほんと咳払いをすると話を続けてくれた。
「えーと・・・実に言いにくい事というか面倒くさい事をキミたちに言わなければいけないんだ・・・それはだね・・・オークエンペラーを討伐したキミたちにアルト国王直々の招待状が届いているんだよね・・・」
「ふむ・・・センチネル、俺の聞き間違いかな・・・なんか国王って言葉が聞こえたんだけど?」
「アスティナ君・・・聞き間違いじゃないよ。どうやらボクの報告だけじゃ信用されていないようでさ・・・討伐した冒険者に直接会いたいっぽいんだよね」
「あわわわわ・・・・・・やっとギルドマスターにも慣れてきたところだったのに・・・今度は王様・・・無理無理無理無理無理無理無理無理・・・・・・」
S級になってすぐに・・・今度は国王に会わないといけないのか、俺でもさすがに国王と呼ばれる人がどれほどすごい人なのかは理解しているつもりだ。
そんな人から来た招待状なんて・・・絶対に断ることが出来ない・・・不可能に等しいだろう。
俺たちの動揺を気にしつつもセンチネルは話を続けた。
「それで・・・だね、出来れば今すぐにで出発して欲しいんだ。理由としては色々あるんだけど・・・一番の理由はキミたちの好感度を上げるためなんだ」
センチネルが言うにはアルト国王は割と温厚な方で融通も利くのだが、大臣のレクメングルは冒険者というだけで下に見るような人だという。
プライドの塊のような人ではあるが大臣としてみるならば、かなり優秀な人材だとセンチネルは言っていた。
あと宰相のカークランドは身分よりもその人自身の能力を見て判断する方でカークランドは冒険者のことを毛嫌いはしていないとも言っていた。
「そういうことだから、大臣のレクメングルの好感度を少しでも上げるために早く行って欲しいってこと」
「・・・センチネルの言いたいことは分かったが王様も宰相も俺たち冒険者に対して融通が利くんだろ?なら、その大臣ひとり気にしなくてもいいような・・・」
「ボクも最初はアスティナ君と同じ考えだったんだけど・・・あの大臣すっごい粘着するんだよ・・・それはもう幻覚幻聴が起こるほどにね・・・」
「いや・・・そうだとしても国王とかがやめろって言えばそれで済む事ではないのか?」
「大臣の家系は代々国王に仕え、この国の基礎を築いた方々の子孫なんだよ。それに彼自身もこの国に莫大な利益を与えているしね・・・」
「なるほどな、その事があるからキツく言えないと言う訳か・・・だけど、国王ちょっと情けなくないか?」
俺の問いかけに対してセンチネルは軽く頷きながらも「でも、そのお金があるから国を守ることが出来るんだよ」と諭すように話してくれた。
そのセンチネルの言い方は自分も納得はしていないが、防衛費を確保するためには致し方ないと自身を納得させようとしている風にも聞こえた。
「はぁ・・・分かったよ、すぐに出発することにする。エリン、システィ、すまないがそう言うことだからさ。あ~あ、行く前に師匠に謝っておかないとな~」
俺はエリンとシスティにすぐ出発することを伝えるとシスティは頷き、エリンはちょっと駄々をこねたがすぐに無理だと理解し渋々頷いた。
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