第109話 俺、異世界でマクラに違和感を感じる
チュンチュンと鳥のさえずりによって、眠りから覚めた俺はいつもと何かが違うことに気づいた・・・まずマクラってこんなにふわふわと柔らかく、しかもいい匂いなんてしなかったはず、それに素材もシルクのように肌触りがとても良くて顔をずっと埋めたくなるほどだ。
そういや・・・昨日、晩飯を食べ終え、師匠が家に帰るのを見送ってからの記憶が完全にない・・・それ以前に俺はいつ布団に潜ったんだろう。
布団に潜っていると表現をしたのは理由がある、なぜなら目を開けているのに朝日が入ってこずに真っ暗だった。
俺はこの状況を確認するためにゴソゴソを身体を動かし、マクラから顔を離すとやっと朝日の光が目に入り、周囲を確認することが出来た。
だが、その状況を確認した瞬間俺は石のように固まってしまった・・・俺の目に映ったものはほぼゼロ距離でこっちに微笑みかけているシスティの姿だった。
ふむ・・・俺がマクラだと思っていた、それはシスティのふくよかな胸だったようだ・・・・・・。
ただ自分でも不思議だったのがそんな状況なのにエロイことよりも、年の離れた姉に甘えている妹のような・・・安心や幸福といった、とても懐かしい感じの方が強く、そんな不埒なことすら思いつかないほどに心が安らいだ。
「おはようございます、アスティ。良く眠れましたか?」
「・・・・・・あっ、うん。おは・・よう・・・システィ・・・」
「アスティ・・・昔はこうやってよく寝ていましたよね、いまのアスティは貴方は知らないかもしれませんがいつも一緒でした」
「・・・・・・やっぱりシスティは俺の・・・アスティナの状態について気づいていたんだな。君の大事なアスティナ・・・偽って騙して・・・すまなかった・・・」
「ふふふ・・・でも、貴方は貴方なりに頑張っています。そうじゃなかったら、私めがこの世界に呼ばれることもなかったでしょう・・・だから私めは貴方を許します」
その彼女の言葉を聞いた時、俺は涙が零れてきた・・・システィは泣いている俺をそっと抱きしめると俺が泣き止むのを黙って待っていてくれた。
それから数分経った時ダダダッ!と誰かがこっちに駆け寄って来る足音が聞こえた。
そしていつものように鍵穴に鍵を挿して、開錠すると勢いよくドアを開けるエリンの姿が見えた。
「おはよう、アスティナーーーー!!ってシスティ、なにやっているの・・・それまだわたしもやったことないのに・・・ずるい、ずるいわ、システィ!!」
「おはようございます、エリン。何か勘違いをなさっているようですが、私めとアスティは姉妹なのですから、これぐらい当たり前じゃないですか?」
「ぐぬぬ・・・そう言うなら、わたしだってアスティナの相棒なんだから!!・・・あれ、システィさっきアスティナのことアスティって呼ばなかった?いつものお嬢様ではなくて?」
「仕事の時はもちろんお嬢様と呼びますが、いまはこの子の姉としてアスティのそばいるのですから、愛称で呼ぶのは当たり前じゃないですか?」
「ぐぬぬぬぬ・・・システィ・・・昨日の可愛らしかったあなたはどこに行ったのかしら・・・」
「エリン、私めも貴女と同じでアスティが一番大切なだけです。ただこれだけは勘違いして欲しくはないのですがエリンのことも好きですよ」
「わたしもシスティのことは好きだけども・・・・・・よし決めた、明日はわたしがアスティナと一緒に寝るわ、いいわよね、システィ!!」
「仕方ないですね・・・それでは一日おきに交代することにしましょう」
泣いたことにより、頭がすっきりした俺は彼女たちの会話を整理した結果・・・どうやら俺の所有権は俺自身には無いようだ。
正直ずっとこのままシスティ姉さんに甘えていたいと思いつつも俺は渋々システィから離れ、ドア側にいるエリンの方に振り向くと朝の挨拶をした。
「あー、おはよう、エリン。今日もいい天気ですね・・・」
「おはよう、アスティナ・・・随分気持ちよさそうに寝ていたようね。それじゃ着替えさせてあげるから・・・」
エリンがすぐに着替えの準備すませると、こっちに座る様にタンスの前に置かれているイスを軽くトントンと叩いている。
俺はエリンに誘われるがままベッドから起きてイスに向かおうとした時、今度はイスに座らせないように妨害しているのかシスティが後ろから抱き着いてきた・・・先ほどまでマクラとして使っていたものが今度は俺の背中にピッタリとくっついている。
そこからまた俺の着替えをする権利をかけて、エリンとシスティふたりによる熾烈な戦いが始まるのであった・・・。
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