第10.5話 外伝エリン視点
あの子が目の前で血を流しながら、わたしに笑顔で語りかけようとしている。
「はは、俺はどんだけアスティナが好きなんだよ・・・」
「初級ポーションはあれで最後なの・・・、ごめん、ごめんねアスティナ」
「気にするなって、さっきも言っただろ・・・」
そういうと、アスティナは背伸びをして、わたしの頭を撫でてくれた。
「あっ、ごめん・・・エリン血がついてる方で撫でちまった・・・」
「ふふ、そんなこと気にしないで、洗えばすぐとれるわ・・・」
「それじゃーエリンちょっとあの豚さんを倒してくるわ」
「一緒にいるって、フォレストエルフに誓ったんだから、わたしも行くわ!」
「だから、それなんなんだよ・・・、だけど、ありがとうなエリン。でも、それはダメだ・・・」
あの子がアスティナがなんと言おうがわたしも一緒に行くと心に決めていた。。
「眷属の魔眼!!」
あの子の声が聞こえたと思ったら、目の前が真っ暗になった。
「エリン全力でオークから逃げろ!!」
わたしは言葉のままにオークが来る反対側に全力で走った。他にもなにか言っていたようだが意識がはっきりせず聞き取れなかった。どれほど走ったのだろう、急に意識がハッキリとしたとき、わたしはそこで泣き崩れた。
「あ・・・、あああ、わたしは、わたしはなんてことを・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「おーーーーーい!聞こえるかーーーー!おーーーーーい、どうしたんだ、なにがあった!!」
「お願い、あの子を助けて、アスティナを助けて!お願い、お願いします!あの子を・・・」
わたしは向かってくる冒険者に助けを求めると緊張の糸が切れたのかそこで意識がなくなった。次にわたしが目覚めたとき、冒険者におんぶされて町に向かっているところだった。
「あれ・・・わたし・・・気を失ってたの・・・」
「おっ、目が覚めたかい、君はあの子アスティナさんを助けてって言った途端に倒れたんだよ、覚えてないのかい?」
そう言われた瞬間、わたしはあの子がいないかおんぶされた状態で周囲を見渡した。すると、わたしの右後ろに同じようにおんぶされながらスヤスヤと寝ているあの子がいた。わたしはおんぶしてくれている彼の背中が涙で濡れるのを構うことなく泣きながら感謝し続けたのであった。
「良かった・・・間に合ったんだ、ありがとう、あの子を助けてくれて、本当にありがとうございました!」
「僕たちが向かうよりも先に誰かが彼女を助けていたんじゃないかな?傷口も治療されてたよ、まぁ完全ではなかったけどね。ただおかしなことにあの奥には”オーク集落”があったはずなんだ。だけど、そこの”オーク”が根こそぎいなくなっていたんだ」
彼はそういうと一旦話を中断するとわたしに水筒を薦めてくれた。それを受け取ると彼はさらに話を続けた。
「まぁ、定期的にオークは住む場所を変えることがあるから、不思議ではないんだけどさ。移動する時は必ずオークの石積みを崩していくんだけど、それが今回そのまま残ってたんだよね」
彼がせっかくわたしを気遣って会話をしてくれていたのかもしれないが・・・そのときのわたしはほとんど聞いていなかった。それよりもアスティナが生きていたことの方が大事だったからだ。
「さぁ、着いたよ、僕らの町ミストに。そこの宿屋で部屋が空いているか確認してくるよ、ちょっと待ってて、それじゃー、サリス!その間、彼女のこと頼んだよ!!」
「はいはい、任せとけって、お前はさっさと行ってこい!」
わたしはそんな彼らのやり取りを聞きながら、宿屋に確認に行ってくれた彼に会釈をした。20秒も経たないうちに彼は宿屋の入り口から顔を出しこっちに向かって手招きをし始めた。わたしたちは誘われるがままその宿屋に入っていった。
彼は彼女をベッドまで運ぼうかと親切に言ってくれたのだがそれは断ることにした。それぞれの鍵を渡され、そこで助けてもらった彼らに礼を言って別れた。
彼女をおんぶしながら案内された2階の部屋にはいった。わたしはドレスを脱がして、予備で持っていた服を彼女に着せたのだが思った以上にブカブカなのを見て思わず笑ってしまった。
わたしはアスティナをベッドに寝かしつけると彼女の銀色の髪を触りながら「靴を買いに行きましょう、プレゼントしてあげるから。だから、はやく起きなさいよ」とささやくのであった。
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